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たとえばこんなディストピア  作者: おきをたしかに
*キスから始まる異世界転生*
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魔女か聖女かー3

「人間に……?」

 ルシフェルは流れる涙を拭いもせず告白した。

「美夕の空想の産物である私は、彼女とほぼ同じ考えを持っていたの。同じ物を綺麗だと感じ、同じ物を好きだと感じていた。今でも似ている部分がたくさんあるわ。だけど――――時間が経つうち、いろんな物を見るうちに、私は美夕から独立したひとつの“意思を持つもの“になった。そして……成長したあなたを見て、あなたに恋をしたの」

「恋……?俺に?」

 呆けている俺を見て、ルシフェルは切なそうに笑った。

「そう……困った所まで美夕に似ちゃって……あなたを好きになった。そして、あなたに愛されたいと願うようになったの」

「……」

 言葉がなかった。

 ルシフェルの正体を知ってからは疑心暗鬼になって、最初から俺を喰う目的で近付いたのかとばかり――――俺に恋をした?俺を救う為にこの世界を創った……?

「信じられないって顔してる」

 クスッと笑い、ルシフェルは俺に背を向けた。

「どうやったらナツキが私のこと好きになってくれるか知りたくて……いろいろ調べたの。美夕が持ってる本を全部読み漁って――――だけど結局わからなかった。眠ってるだけなのに一目惚れされたり、ダンスを踊っただけでプロポーズされたり……絵本の中の女の子は、だいたい皆最初から王子様に愛されているんだもの」

「それで……?」

 ルシフェルの背中は可哀相になるくらい震えていた。泣き顔を隠したいのか、彼女は背を向けたまま話し続けた。

「最後は美夕に相談した」

「美夕に……?」

「美夕は私よりもあなたのことをたくさん知っているし、人間だから私よりもきっとたくさんの知恵を持っていると思って。美夕はね、私を応援するって言ってくれたの」

 なんとなく、意外だった。

 俺のことを好きな美夕に、美夕の空想から生まれたルシフェルが俺との恋を実らせたいと相談……全てがおとぎ話のように聞こえた。

「美夕は……自分にはきっとナツキと恋人にはなれないからって――――自分の姿を私に重ねて、この恋を応援するって」

「それで、美夕はどうしろって?」

「美夕は――――」


◇◆◇


 ガシャン!!

 俺は飾ってあった天使の置物を放り投げた。

 それはルシフェルの真横をすり抜けてガラス窓に当たり、置物も窓も派手に砕け散った。

「ナツキ、待ってナツキ!行かないで……」

「失せろ、この悪魔!今から街の奴らに知らせてやる。お前は大嘘つきで人喰いの魔女だってな!!」

「ナツキーーー!」

 泣き叫ぶルシフェルを城に置き去りにして、俺は街へと走った。

 美夕が言った通り、あいつは二人の仲を引き裂く魔女なんだ。

 童話に出てくる悪役だ。最後は火あぶりにでもなればいい。

 あの女の言うことは全部嘘だ。嘘に決まってる。

 こんな世界、俺がこの手で破壊してやる……!

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