残酷な童話ー4
再び病院に戻ってきた俺は、ソールに貰った能力で誰からも姿を見られないよう不可視の状態にしてから自分の病室に入った。
中には人がいて、何やらもめている。
何なんだ?昏睡状態の患者を取り囲んで……。
「チクショウ、このガキが彼女を……俺の婚約者を!」
「やめてください、ウチの息子は事件の三日前に飛び降りてこの状態なんですよ!?テレビやネットでいろいろ言ってるけど、あんなことが出来るわけないでしょう!!」
婚約者……?高校生なのに婚約とかしてる奴がいたのか。
見れば三十代くらいの男がベッドに横たわる俺に飛び掛かろうとしており、それを病院内の警備員が二人がかりで取り押さえている。
俺の母は覆い被さるようにして昏睡状態にある俺の肉体を守っていた。
「じゃあ、どうしてあんなふうに人間が次々消えたんだよ!?動画見ただろう!?あんたの息子が映ってるじゃないか!」
「あんなもの、加工された物です!私は息子が入院してからずっとここでこの子についていました。あの動画はインチキです。それに……お宅の婚約者だった先生は、息子がイジメに遭っていたのに放置していたそうじゃありませんか!」
先生?ああ、担任の女教師か。そうそう。イジメを見て見ぬ振りして、俺と目が合うと視線を逸らしてたご立派な先生だ。プライベートでは婚約とかしてたのか。ふうん……。
「それこそこのガキが逆恨みで書き込んだでっち上げなんだよ!名前だけじゃなく顔写真までネットに晒して、大迷惑だ!彼女の実家にまで嫌がらせの電話や手紙が届いてるんだぞ!!」
「逆恨み!?ウチの子は誰にも相談出来ずに苦しんで自殺を図ったんですよ。それをよくも……!」
プツ。突然、病室のテレビの電源がオンになり、午後のバラエティー番組が流れ出した。
「え……」
ガチャン。誰も触れていない花瓶が床に落ちて割れた。
「な、何……」
出ていけ。そう怒鳴る代わりに俺がやったことだ。
「うわあああ!やっぱりこのガキ……」
喚き散らす男の口に何か詰め込んでやろうかと思った時、また人が入ってきた。
「失礼します。警察です」
「この人がウチの息子に危害を加えようとしてるんです。早く逮捕してください!!」
「いや、ちょっと待て。あんた達も見ただろう?今の……」
「話は署で聞こう。奥さんも、調書作成にご協力願います」
警察が男を連行し、警備員達もそそくさと病室を出ていった。
俺の母はつけっぱなしのテレビや割れた花瓶はそのままに、俺の肉体に掛けた布団を整えてから出ていった。
◇◆◇
自分の肉体を見下ろしながら思う。
俺は、このまま美夕のように眠り続けるんだろうか。
それとも死んでフェアビューランドか、どこか違う所に転生するんだろうか。
それとも――――。
何も考えたくなくて、俺は目を閉じた。




