死と再生を司る者ー3
“死と再生を司る者“が俺を見ている。
見方によっては慈悲深くも、冷徹にも見えるその表情……俺は均衡とやらを破った罪で殺されるんだろうか。
そしてフェアビューランドへの転生は許されず、今の俺の意識は消え失せ、どこかの世界でまた生を受けるんだろうか。それとも、永遠に消滅するのか……。
横ではルシフェルが泣きながらやめてと懇願している。
まあいいさ。別に死んでも。だって俺、死にたかったわけだし。
ルシフェルに出会って、美夕の生存を知って……俺自身生きていることを実感して、もっともっと生きたいと願うようになったけれど。
俺の人生なんて、こんなもんかも。
「さあ早くしろよ!煮るなり焼くなり好きにしろ!」
「……煮ても焼いてもお前など私は食わない」
命を差し出す覚悟を見せた俺を見下ろしながら神なのか死に神なのかわからないそいつは言った。
「……まあいい。いつでも元に戻せる。“入れ物“さえ残っていればな」
まあいい?大量殺人をあっさり許すのか?しかも、いつでも戻せるだと。
寛大過ぎて涙が出そうだ。しかし……。
「入れ物って?」
「お前達がフェアビューランドへ送った者達が元居た世界で持っていた魂の入れ物――――つまり肉体のことだ」
「え……肉体は、転生させた時に消えてなくなったよな、ルシフェル」
「……」
ルシフェルは答えなかった。凍りついたような顔で小刻みに震えている。
「ルシフェル?」
「お前達がやっていたのは“転生“ではない。あれは“転移“だ。肉体もそのままフェアビューランドへ送った筈だ。しかし送った直後にその肉体から魂を引き剥がし、別の入れ物に移した者がいる」
「はあ……?誰がそんな……何の意味があるんだ?」
「ルシフェル、お前は知っているな?彼らの肉体は、今どこにある?」
その問いにもルシフェルは答えなかった。
頭のどこかで警鐘が鳴る。
「どうしたんだよルシフェル……何か知ってるなら……」
彼女の肩に触れようとした俺の手は、すうっと彼女の身体を通り抜けた。
「え」
そして――――彼女は透けて闇に溶けていった。
「お、おい、ルシフェル……っ」
暗闇の中に俺を置き去りにして、ルシフェルはいなくなったのだ。




