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たとえばこんなディストピア  作者: おきをたしかに
*キスから始まる異世界転生*
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狂気ー2

「……っ、あぁ……!」

 自由を奪い、後ろを向かせたルシフェルを乱暴に揺さぶりながら俺は苛立ちの全てを彼女にぶつけていた。

「痛いか?じゃあ何か言えよ!」

 寝室の床に散らばるのは引き裂かれたルシフェルの服。

 天蓋付きの豪華なベッドの上で、破かれた自分の服で両手首を縛られたルシフェルは服を剥ぎ取られ、髪もぐちゃぐちゃに乱されて俺の言いなりになっていた。

 可哀相な女だ。

 こんな男を自分の王国を創る助っ人として選んだのが運の尽き。

 お前はここで俺にいいように弄ばれて、王国を奪われるんだ。

「お前が悪い」

 ルシフェルは俯いたまま泣いていた。ベッドのシーツに涙がポタリポタリと跡を残す。

「あいつらは俺の友達なんかじゃない。最初にここに連れて来た時のキスで俺の記憶はお前に共有されている筈だ。俺があいつらに何をされたか知ってるだろ?俺には元から友達なんていなかったんだ」

 わかるか?と髪を掴んで顔を上げさせると、ルシフェルはコクコクと頷いた。

「これからも、俺には友達なんか必要ない。俺はこのフェアビューランドの――――新世界の神になるんだからな」

「……」

「安心しろよ、殺したりしないから。お前にはまず、フェアビューランドを完璧なものにする手伝いをしてもらう。立場逆転だな。これからは俺が主人でお前が奴隷だ」

「……」

「ま、元々奴隷みたいなもんだったよな、お前。会ったその日にヤラせてくれたし」

 本気でそんなこと思っていないのに、ルシフェルが何も言わないからどんどん最低な言葉を吐いてしまう。

 止めてくれ。早く止めてくれよ、ルシフェル。大声で馬鹿と怒鳴って罵ってくれ。

「これからも公私ともによろしくな。お前とは、性格はともかくカラダの相性は最高だし」

 下衆(ゲス)なことを言って高笑いする俺に、ルシフェルはやっと口を開いた。

「ナツキが……ナツキがそうしたいなら、それでいいわ」

 弱々しい声でそう言うと、彼女は再び俯き、顔を隠してしまった。

「……何だよ、もっと責めろよ。軽蔑すればいいじゃないか。卑劣で惨めなこの俺を!」

 仰向けに転がして思い切り平手打ちを浴びせても、ルシフェルは瞳を閉じて痛みに耐えるだけで何も言わなかった。

「何か言えよ、ルシフェル……ルシフェル!!」

「っ……、あ……!」

 乱暴に扱われルシフェルは苦しそうに喘いだが、俺は構わず動き続けた。

 いつもそうだ。俺は一度だって彼女が何を考えているか、どう感じているのかを気遣ったことはない。

 俺は最初から最低だった。

 たぶんそれは、誰に対してでも。

「うっ……」

 押さえつけるように触れていた身体を放すと、ルシフェルは力なくベッドに沈んだ。

 俺に背を向け横たわる彼女の肩は大きく上下している。呼吸を整えてから、俺はその細い肩に手を置いた。

「ごめん……」

 俺が言うべき言葉は、彼女の口から出た。

「ルシフェル……?」

「ごめん、なっちゃん……ごめん」

 そのまま動かなくなったルシフェルを覗き込むと、青白い顔で意識を失っていた。

「な……なっちゃんって……なんでお前が、その呼び方を……?ルシフェル、おいっ……ルシフェル!!」

 いくら揺さぶっても、彼女は目を開けてくれなかった。

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