ルシフェル
俺の部屋でルシフェルと二人になると、やることは一つしかなかった。
俺達の関係を彼女は主従関係だと言うけれど、出会ったその日の夜からそれだけでは言い表せない関係になっていた。
「ん……ああ……っ」
吐息や喘ぎが部屋に満ちていく。
たまには他愛のないことを語り合いながら夜を過ごすのもいいと思うんだけどな。
ルシフェルの前世について尋ねると、絶対ナイショ!の一点張りで何一つ教えてくれなかった。
自分のことは話したくないらしい。
俺のことは知り尽くしてるのに、ズルくないか?……と思ったものの、それ以上追及出来なかった。
誰でも人に触れられたくない傷がある。
だから。
「……っあああ……ダメそれ、ナツキ……」
イジワルは、ベッドにて実行することにした。
「ここ?」
「……っ」
「嫌?」
彼女の答えは知っているけれど、わざと言わせる。それが楽しくて。
「嫌じゃ、ない……」
「だったら“イイ“って言えよ」
「え……」
頬を赤らめて俺を見上げるその顔を見るのが、今の俺の生きがいになっている。
馬鹿みたいってわかってるけど、ルシフェルと繋がっている時が一番、生きていることを実感出来る。 「言え」
高圧的な物言いをして揺らすと、ルシフェルが震えながら甘美な声を上げた。
「んあ……イ……っ」
「言えよ。俺にこうされてイイんだって」
「……イイ。イイ、ナツキ……」
恥ずかしさのあまり涙を浮かべながらも俺の要求に応えるルシフェルを見ると、ああ、もしかして愛されてるのかなって思う。
恋人の真似事をして、両手で顔を包んで額や瞼、頬や耳にキスを落とすと、彼女は驚いたように目を丸くし、そして微笑んだ。
「好き……」
一瞬妙な間が出来た。
俺でいいのか、お前。王子様を待ってるんじゃなかったのか?
望めば俺も王子様になれるとは言ってたが。
いろんな考えが浮かんだがそれは言葉にせず、彼女が聞きたいであろう台詞を言う。
これが奴隷のお仕事だと割り切って。
「ああ、俺も好きだよ」
「ナツキ……嬉しい。大好き……」
こんな会話出来るのに、こんなことまでしてるのに……なんでお前、自分のこと話せないんだ。
苛立ちに身を任せ、肩に噛み付くと二人でかいた汗の塩辛さが口に広がった。
「はっ、あ……ん、ああああっ……!!」
苦痛なのか快感なのか、どちらともつかないルシフェルの表情を見ながら、俺は生臭い欲望を吐き出した。
「う……はぁ」
ああ、生きてるって実感しながら。