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たとえばこんなディストピア  作者: おきをたしかに
*キスから始まる異世界転生*
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夢の世界-1

 照りつける太陽が眩し過ぎて、全てが白に見える。

 キイキイとブランコの音がする。

 それから、蝉の鳴き声。

 蝉ってなんでこんなにうるさいんだろう。

 もうじき死ぬってのに元気なもんだ。

 ……もうじき死ぬから、泣いているのか。

「なっちゃん、見てこれ!」

 呼ばれて振り向くと、幼なじみの美夕がいた。

 麦わら帽子に白いワンピースを着た痩せっぽちの女の子。

 ああ……美夕とよく夏の公園で遊んだっけ。

 美夕の体調を気遣って彼女のお母さんが三十分だけよと言うから、ぶっ通しで三十分遊びまくった。

 満面の笑みを浮かべた美夕が差し出したものは、楕円形の泥団子。

「……何これ、ウンコ?」

 正直に思ったままを口にした俺に、美夕はかんかんに怒った。

「な、何でウンコなのよ~!これのどこがウンコ?どう見てもあれでしょ、あれ!」

「えっ……ウ、ウンコにしか見えないんだけど」

「もおーっ。なっちゃんなんか知らない!だいたいウンコとか口に出して言わないよ、普通」

 口を尖らせて砂場と反対方向に走り出した美夕を俺は必死で追いかけた。

「そんなあ……美夕だってさっきから何回ウンコって言った?待ってよ~。結局何なの、それ」

 くるりと振り向いた美夕はもう怒ってはいなかった。

 ワンピースの裾がひらりと(ひるがえ)って、細い足が目に入る。

 ニッコリ笑って彼女は言った。

「ハンバーグに決まってるじゃない!なっちゃんの好きなハンバーグ」


 ……全てが遠い昔の思い出だ。

 美夕が死んだなんて、俺はまだ受け入れられなかった。

 病弱なのは知っていたけれど、一緒に遊んだ子供時代、彼女はいつも生き生きと元気に、眩しいくらい輝いていた。

 だけど……俺が美夕のことを忘れて青春を謳歌してる時、彼女は死んだ。

 彼女には俺の他に友達はいたんだろうか。親以外に彼女の為に泣いてくれた人はいたんだろうか。


「ハンバーグ好きでしょ、ナツキ」


 え?


「ハンバーグ好きだもんね~、ナツキ」


 ……あれ……?


 ルシフェル……?


◇◆◇


「!?」

 目を覚ますと俺は見慣れない場所に横たわっていた。

 寝心地の良いベッドは天蓋付きの豪奢な物だった。

 どこだ、ここ……。

 頭を掻き(むし)りながら上体を起こし周囲を見渡してみると、全てがルシフェルの服のようなフリフリの可愛らしい部屋だった。

 壁紙はベビーピンクに白い花柄模様、フリルとリボンをふんだんに使ったカーテンやテーブルクロス、置いてある家具は全て猫足で、あちらこちらに花が飾ってある。夢見る乙女の世界をそのまま現実にしたような空間だ。

 出窓から差し込む光に引き寄せられるように歩き、窓の外に目をやると、そこは見渡す限り青々とした草原だった。

 まばらに木造の小屋がいくつかあって、たぶん羊みたいなふわふわした白い動物が草を()んでいるのが見えた。

 視界に入った人間は草原で遊ぶ幼い少女と少年の二人だけ。

 あいつら、前にも見たな。じゃあここは……。

「目が覚めた?」

 その声に振り返ると、ルシフェルが立っていた。

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