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非天  作者: 山中一郎
8/42

3-2

 夜、間隔を空けて揺らめく松明の灯りが、暗い街並みをぼんやり照らす。

 そんな地上を離れて、とある民家の地下、鉄の壁に囲まれた革命軍の基地にて。

 ダストレイは仲間を一室に集め、その中心で高らかに語る。


「諸君、先日の作戦の成功のお蔭で、遂に我々に勝機が巡ってきた」


 男も女も、ビジョウと本気で闘おうと言う彼に惹かれ、集まった者たちだ。


「ビジョウは明日、装甲車に乗せた“奴にとって大切な物”を、ランスヘルム自治区へ輸送するつもりだ」


 グアラザ自治領やその他方々の街から集まった若者たちだ。

 バンボがビジョウと戦っていた裏で、グアラザ自治領中央塔に忍び込み、盗み出した一通の書類を掲げるダストレイは誇らかに。


「これは正に先日の粛清の際、我々がビジョウの根城から探し当てた書類から判明した事実である!」


 人々のざわめきに部屋を照らす火が揺れる。部屋の中に、期待と緊張が張りつめる。


「奴が必死に隠し続けているこの“大切な何か”を、明日、我々が奪い取る!」


「ビジョウはその装甲車に乗るでしょうか」


 仲間の不安にダストレイは答えた。


「装甲車に乗るのは護衛五十人と“大切な何か”だけだ。十分な戦力に加え、ビジョウの弱みを我々が握る。明日の作戦を成功させた時、我々はビジョウに決戦を挑む!勝利は目前だ!必ず成し遂げるぞ!!」


 ダストレイの言葉を機に、ざわめきは歓声に変わった。

 皆が希望に満ちて、祝杯を上げていた。

 興奮冷めやらぬ中をダストレイは歩いて行く。組織を束ねる彼には、明日に向けて用意しておかなくてはならないことはいくらでもあった。


「ダストレイ様!これからお時間ありません?」


 人の合間を縫って、女が三人ダストレイに駆け寄った。腕に絡みつき、腰をくねらせてダストレイに纏わりつく女たちは、惚けた顔で彼の顔を見上げている。


「いやぁ、まだまだ気が抜けなくてね。大丈夫。帰ってから、いくらでも相手をしてあげるよ」


 女たちを柔らかな手つきでどかし、ダストレイはその場を離れた。

 木の扉を開け、金属に覆われていた部屋から出ると、そこは地中に掘られた洞窟が続いていて。松明の灯りの下、同じく部屋から出てきた仲間の一人である男がダストレイの横に並び、彼に尋ねた。


「装甲車は何処に隠してあるのでしょう。十両編成の大きさの車なんて見たこともありませんが」


「ここにはないさ。ランスヘルムから要人を乗せて来る装甲車は、西口で客を降ろした後に中央塔の地下で“例の物”を載せる」


「ランスヘルムから……。しかも中央塔の地下にそんな規模の施設があったなんて……。なんだと思います?“ビジョウの大切な物”って」


「さあな。兵器か、人か。どんな物にせよ、奪った後に運べなくては意味がない。資料によれば、大きさはそれ程ないようだが」


「一番馬力の強い車を用意しています。心配はいらないでしょう」


「そうか。頼もしいな」


 ダストレイが男の背中を叩き、洞窟の分かれ道の先にある部屋に送り出した。武器を保管してある、地中に埋まったもう一つの鋼鉄の部屋へ入っていく男を見送って、ダストレイは地上の建物の中に出る階段を上がり、さらに建物の外に出て、空を見上げた。

 ダストレイは星の輝きに目を凝らし、天に手が届きそうな感覚に酔いしれて。


「さあ、ビジョウ。刻々と、着実に迫っているぞ」


 雨はとうに止み、晴れ渡った空は満天に。


「お前の、死ぬ時が」


 夜は更けて、朝が来る。








 バンボ・ソラキが目を覚ますと、そこは見知らぬ家の中であった。

 朝日が差し込む、壁をくり抜いて作られた窓からは、鳥の鳴く声が聞こえてくる。

 バンボが藁を敷いた上に寝かされていた自身の体を起こし、空き家であろう家の中を見渡しても、誰の姿もない。

 ビジョウとの戦いの後、瀕死の状態で力尽き、火葬場で眠ってしまったことは覚えているが、こんな家の中に入った覚えはバンボにはなかった。

 しんと静まり返った空気に、バンボは何が起こっているのか分からずにいた。

 バンボは立ち上がると、藁の布団の脇に置かれた、自分の武装一式と仮面を見つけた。そこには何故か、ビジョウに弾き飛ばされたまま置いてきてしまった筈の銃までもが置かれていて。

 いよいよ現状への不信感が募り、バンボは急ぎ装備を整え、家を出ようとした。


「おはよう。ようやくお目覚めか」


 そして、背後から突如聞こえた声にバンボは振り向き、銃を構えた。


「……!」


 この家の中には、誰もいなかった筈なのに。

 家の入口は一つだけ、窓も死角になるような物もない、空き家であったのに。

 目の前に立つ男はまるで、初めからそこにいたかのように壁にもたれ掛かって、バンボを見下ろしていた。

 黄金のような黄色の目をした男。

 壮年のその男は、りんごを片手に一つ、軽く投げて弄び、構えられた銃に怯む様子もない。


「誰だ、お前は」


「俺はコッパー。コッパー・ジョウ。初めまして、非天の男。丸一日ぶりのお目覚めだ」


 コッパーと名乗った男はりんごを投げるのを止め、空き家に唯一残されていた家具である、倒れた椅子を起こしてそこに座る。

 全身に黒ずんだぼろ布を巻き付けたコッパーは、当惑するバンボの顔を見ると馬鹿にした笑いを溢す。


「……」


「ああ。その怪我、手当しておいてあげたよ。いやなに、感謝することはない」


 コッパーに言われてようやく、バンボは自分の体に巻かれた布に気が付いた。全身の怪我に処置が施され、バンボの体はすっかり回復していた。


「……」


「ああ、警戒してるのか。そんなに怯えなくてもいい。俺は元医者でね。善意でお前を助けたまでだ。だから感謝もしなくていいし、そう。名乗る必要もない」


「善意……?」


「ああそうだ。純百パーセントの善意だ。面白い見世物のお礼だよ」


 見世物という言葉に、バンボは深く苛立った。

 この男から感じる人柄に、ビジョウに感じるような腹立たしさを見た。人を見下す者の物言い。相手が怒ることを分かっていながらも、平然とそれを口に出す精神だ。


「ここは何処だ」


「ここはただの空き家だ。火葬場で倒れていたお前を運んでやったのさ。俺がね」


 苛立たしげに質問した結果、コッパーの答えにバンボは彼が信用してはいけない人間であると理解した。


「そうか。助けてくれてありがとう。じゃあな」


 椅子に座ったコッパーの横を通り過ぎ、出口へと向かった。

 これ以上ここにいる必要はないだろう。少なくとも、良いことはない筈だ。


「ああー、ああ、ちょっと待ってくれないか?」


 バンボがコッパーを通り過ぎ、バンボの視界からコッパーの姿が消えたと思った瞬間。

 椅子に座ったままのコッパーが、バンボの前に現れた。


「!?」


 バンボは驚き、後ずさる。

 バンボは何が起きたのか理解することができないまま、姿勢一つ変えずに、椅子ごと目の前に瞬時に移動してきたコッパーを睨んだ。


「ちょっとお前に聞きたいことがあるんだがね」


「……。純百パーセントの善意じゃなかったのか?」


 何かに化かされているかのような心地で、バンボは口を動かしていた。

 この、何もかも見透かされているような気持ち悪さ。己の無力さを思わせる感覚は、まるでビジョウと対峙した時のそれだった。


「へえ、パーセントの概念くらいは知ってるのか。意外だなぁ」


 椅子から腰を上げないコッパーは、小馬鹿にした笑いを隠しもしない。バンボは彼の横をもう一度通り過ぎた。

 早くこの場を離れたい。この気持ち悪さから逃れたい。

 それに、急いでこの街を出る必要がある。コッパーが誰かに、バンボが非天の男であることを教えていても、何ら不思議ではないのだから。

 出口へ向かうバンボに、コッパーは尋ねた。


「何故、ビジョウの前に出てきた?」


「知らないね」


 立ち止まって、バンボは答えた。何故か、立ち止まらずにはいられなかった。


「あの偽物の非天の男を助けるためか、捕らわれた市民を助けるためか。それとも、本気でビジョウに勝てると思って出てきたのか」


「……」


「まあ、答えなくとも構わない。あとさぁ、俺がお前の正体を誰かにばらすことはないから、安心しなよ」


「はぁ……?」


 まるで意味が分からず、バンボは振り返った。コッパーは笑って続けた。


「ははっ。誰に教えたところでどうともならない。意味がない。ただお前が死ぬだけだ」


 いちいち腹立たしい物言いに、バンボは舌打ちしてコッパーを睨む。苛立ちに沸き立つ体温と、心の中から追いやれない恐怖を胸に。


「何者だ、お前は」


「人間さ。正真正銘の、人間様だ」


「……」


 沈黙の後、バンボは出口へ向かい、扉に手を掛けた。


「これからお前がどうしようと自由だが、一つだけ言っておこう」


 コッパーの目つきが変わり、声色も暗い感情を含んだ、低い物に変わって。バンボの背中に向けて、コッパーは言った。


「ビジョウを殺すのは、この俺だ」


 身が強張るのをバンボは感じた。間違いなく、バンボは恐怖していた。


「ああ、そうかい。勝手にやってくれ」


 バンボは絞り出した返答と共に扉を開けて、外に出た。

 目の前に階段が見えて、ここが空き家の二階であったことに気が付いた。

 そして、綺麗に晴れた青空が広がって、すっかり乾いた空気に朝の喧騒が響き渡り。

 バンボの背後で、笑い声が聞こえた。

 次に、バンボは自分に何かが投げつけられたのを、背中の痛みに気が付いて。

 バンボが振り返ると、食べかけのりんごが一つ、床に転がっていて。

 コッパーの姿は、もう部屋の中から消えていた。










 街を歩き、バンボはフジナミ鉄工房へとやって来た。

 かつて、工房があった場所でバンボが見たのは、中にあった物を全て押収されてがらんどうになった、変わり果てた彼のかつての居場所であった。

 分かってはいたことだったが、バンボは暫しその場で呆然と立ち尽くしていた。

 バンボは、自分がいつも店番を任された時に座っていた、カウンター席に手を置いて、在りし日の光景に想いを馳せた。

 そのカウンターは床と壁に釘で止められていたから、持って行かれなかったのだろう。

 けれど、使い倒した金庫も、フジナミから譲ってもらった羽ペンも、カウンターの上にいつも置いてあった物が、何一つ残っていなくて。

 バンボは虚ろな気持ちで外に出て、フジナミに貸してもらっていた小屋へ向かった。

 やはり、そこも既に変わり果ててしまっていた。

 バンボの自宅であったその小屋は、見るも無残に壊されてしまっていた。

 壁は叩き壊され、屋根の重みに耐えられず、片側に傾いて崩れていた。

 家の中にあった物は、殆ど持ち去られている。地面に穴を掘って作った、武器を隠すための秘密の倉庫は見つからずに済んだようだったが、そこに入っているのは、フジナミに貰った給料の入った袋と六発の銃弾だけ。

 給料と銃弾を服のポケットにしまい、バンボは小屋を出た。

 するとバンボは、壊れて地面に散らばった、小屋の壁だった木材に、何度も何度も繰り返し刻まれた十字傷を見つけた。

 バンボが毎日、リアライズシステムを動かす練習をしているのに使っていた傷だった。

 バンボはあの頃の暮らしで感じていた想いやら、努力とか、自分が積み上げてきた心の機微とか、そういったものが急に下らなく思えてきて。自分が何をやってきたのか、分からなくなって。

 バンボは呆然と立っていた。

 本当に、なにもかも失くしてしまったのだと理解した。

 何がいけなかったのか。どうすればよかったのか。何も分からなくて、考えられなくなって。

 おもむろに、ローブの下のポケットに隠していた携帯端末を取り出した。

 画面を起動して、バンボの目が驚きに見開いた。

 何時の間にか、ケアンからメールが届いていたのだ。

 そして、その内容に目を通して、バンボは更に途方に暮れることとなる。


“どうか、この手紙があなたに届いていますよう、願いを込めて送ります。御迷惑なら、この手紙は見なかったことにしてもらっても構いません。実は、私からあなたにお願いがあって連絡させて頂きました。”


 別れのメールを送ったというのに、何故ケアンはまたメールを送って来たのか。その理由は、バンボにとって眩暈がするようなものだった。


“私を、ビジョウ・グアラザの下から連れ出して欲しいんです。”


「……」


“明日の正午近く、私はグアラザ自治領西口から出ていく車に乗って、ランスヘルムという街へ向かい出発します。護衛の兵士はたくさん一緒に乗るようですし、危険に違いありません。だから、これは私の勝手なお願いです。どうしても外の世界が知りたくなってしまった、私のわがままです。お父様の決めた人と以外は誰とも会うことのできない私にとって、こうしてお話しできるのはとても嬉しいことでした。あなたと交わした手紙の数々は、どれも大切なものです。こちらこそ、ありがとうございました。あなたの優しい手紙、ずっと大事にしますね。”


 バンボはその場に座り込んだ。そして、空虚な瞳で小屋の残骸を見つめていた。


“私を、ビジョウ・グアラザの下から連れ出してください”。


 そんなこと、出来る訳がない。

 上手く連れ出せたとしても、必ずビジョウの追っ手が、バンボとケアンを捕えるだろう。

 何処に逃げようと、無駄なことだ。

 ビジョウが後生大事に、その存在ごと隠し続けている愛娘のケアンを放って置く筈がない。

 ビジョウの怒りを買うのが関の山。

 あのビジョウを本気にさせるのだ。バンボは殺され、そしてケアンはビジョウの下へと連れ戻されて、全て元通り。

 待っているのはそんな未来だけ。

 これまで知らされてきたケアンの境遇に、バンボもケアンに同情してきた。しかし、今回のケアンの頼みは無茶が過ぎる。


 ――――みすみす死ににいくようなものだ。出来る訳がない。

 

 ――――そう、出来る訳がないんだ。


「バンボさん!」


 聞こえてきた大声に、バンボは飛び跳ね、急いで携帯端末を胸元に隠した。

 通りの遠くの方から、バンボの方へ駆けてくる少年が一人。

 ラスター少年だった。


「ああ、お前か……。無事に逃げられたのか」


 出てきたのは力の無い声だったが、バンボは嬉しかった。なんとなく、ラスターの存在に救われた気がして。


「はい!あなたのお蔭です。あの……」


「もうちょっと小さい声で喋れよ。お前、顔割れてんだから……」


 そうでした、と言わんばかりにラスターは口をつぐみ、辺りを見渡した。

 幸い、通りには誰の姿もなく、ほっとしてラスターは再び話し始めた。


「ありがとうございました。バンボさん。あなたが来てくれなければ、僕はあの時死んでいました」


 まだまだ大声の範疇ではあったが、若干音を抑えた声で、ラスターは礼を言う。

 深々と頭を下げるラスターの姿に、バンボは少し可笑しくなった。


「いいんだ。気にするな。お前を見てたらなんとなく…、気まぐれで手伝ってやろうと思っただけだ」


 頭を上げたラスターの顔は、何処となく居心地悪そうであった。

 ラスターは自分の心に圧し掛かる物を感じていた。

 ラスターがビジョウに挑んだがための、あの結末。

 捕らわれた人を救えなかったことにも、バンボに恥をかかせてしまったことにも、ラスターは自分に責任を感じていた。


「あの……、バンボさんはこれからどうするつもりですか?」


「……、どうするかな……。特に決めてないよ」


「僕はこれから交易車に乗せてもらってこの街を発とうと思っています。今のままではビジョウに対抗できないと分かったんです。それに、もう革命軍にもいるつもりはありませんから……」


「そうか……。何処に行くんだ?」


 どうやら、ラスター自身も気が付いたようだった。彼が革命軍に騙されて、囮として使われて無謀な戦いを挑まされていたということに。


「とりあえず東の商業都市に行こうかと。ここ程ではなくても、人の集まる所ですから。西のランスヘルムに行こうとも思いましたが、あっちは最近ビジョウの影響が強まっているようなので」


 ランスヘルム。

 弟が暮らしているであろう街の名前に、バンボは不安に駆られる。

 星に点在する数ある街の中で、最も平和な所であると有名だった街。

 弟のアンリが平和に暮らしていけると思っていたのに、八年前にビジョウが政治介入したことで、その平和は崩壊した。皆貧しい生活に陥れられ、街はビジョウの兵に見張られている。

 連絡を取ることもできず、会いに行くこともできず。バンボにできるのは弟の幸せを願うことだけであった。


「……」


 考え込んでしまったバンボを、心配そうに見つめるラスター少年は、バンボに一つ提案をした。

 ラスターはそのために、粛清の日の後からずっと、バンボを探していたのだ。


「バンボさんも、一緒に行きませんか?」


 バンボはその提案に意表を突かれて、小さく口を開いてしまう。

 バンボにとってこれまで、この街から出ていくという考えが、そもそも存在しない物だった。


「俺も……?」


「このままここにいても仕様がないですし、一旦、休むことも必要じゃないでしょうか」


 ラスターはできるだけ、バンボを刺激しないように言葉を選んだ。

 ラスターはバンボが傷心していることが分かっていたし、何か環境の変化が必要だとも思っていた。


「そうだな……。それも……、ありかな……」


 だから、バンボがそう返事をした時、ラスターはほっと胸を撫で下ろした。


「正午に出発する車なので、それまでには東口に来てください。席を取っておきますから」


 バンボは悩んでいる。

 自分自身が何を成すべきなのか。自分はどうなりたいのか。

 そして、これからどうすれば良いのか。

 そんなバンボが、ラスターには壊れてしまいそうに危うく思えてしまう。

 とにかく、グアラザ自治領にいるのはバンボにとって良いことではないに違いない。ビジョウの存在を意識し続けるよりは、一旦、静かにバンボを休ませてあげたいと、ラスターは考える。

 もしかすれば、その間にビジョウに対抗できる手段を探し出すこともできるかもしれない。


「それじゃあ、僕は先に行っています。バンボさんも、準備が出来たら来てください」


「ああ。ありがとう」


 ラスターはその場を離れた後、少しだけ振り向いて、バンボを見た。

 潰されてしまった鉄工房と、小屋を見つめるバンボの後姿が見えて、ラスターはふと、思った。

 そういえば、あの人は昔サントリデロにいた頃も、よくあんな風にぼぅっと何かを見つめている人だったな、と。


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