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フラグを立てろ  作者: 遊楽
4月 出会いイベント
9/18

シナリオ外『副生徒会2』もしくはシナリオ外『会長補佐の彼2』



お気に入り登録ありがとうございます。



長くて前話に入りきらなかったので、分断。





 Cクラス、お姫様と同じ委員会の男子は休みらしい。1つ飛ばしてDクラスの自己紹介へと移っていくのをぼんやりと聞きながら考える。


 優孝がわたしから離れていったとき、わたしは何をするかわからない。女王様ルートには女王様がヤンデレ化するエンディングもあったくらいなのだから、わたしにだってその素質はあるのだろう。縛りつけ、閉じ込めて、わたししか愛せないように、厳重に厳重に、



 「よし、全員終わったね?」



 会長がぱちりと手を叩いたその音にはっと意識を戻す。視線を前に戻せば、額にかかる長い銀髪をうざったそうに払いながら顔だけは笑みを保って会長が立ち上がっている。



 「必要ないかもしれないけど、僕からも自己紹介しようか」



 ぐるりと教室を見渡して各クラス男女1名ずつ、総勢16名の委員たちに微笑みかけた。



 「僕は佐子島瑞月、今年度の生徒会長を務めている。この委員会は生徒会の下部組織として運営されているから、1年のうちで何度もお世話になると思うけど力を貸してもらえると嬉しい。僕自身が君たちと直接会えるのはほとんどないかもしれないけれど、仕事の上で分からないことがあった気軽に聞いてもらってかまわないよ」



 緑の瞳がこちらに微笑みかけた気がして、思わず顔をしかめる。あの男が意識して人に微笑むときはロクなことにならない。この段階の会長はとても不安定な精神状態にあるから、あまり刺激するような状況は作りたくない。



 「じゃあ、会長補佐からも自己紹介してもらおうか。どうやらここには妹さんもいるみたいだけど」



 会長の無駄な一言に視線が一斉にこちらを向くのがわかる。意識して口角を吊り上げてやれば、拒絶の意思を感じ取ったのかそろそろと視線が逸らされた。



 「……会長補佐の千条優孝です。まだ生徒会も発足したばかりで戸惑わせることも多いかと思いますが、1年間よろしくお願いします」



 表面上にこやかに、けれど明らかに怒気をもって向けられた会長への視線に、分かっているのかいないのか会長はただにこにこと笑みを浮かべている。


 ゲームでもこの2人はあまり仲が良くなかった。元々そりが合わないのだろう。イベントで2人の絡みもあったが微笑みながら嫌味の応酬をしていた記憶しかない。



 「それじゃあ、プリントを見てくれるかな。まず、この委員会の仕事内容から説明していくよ。――――」



――――――

――――



 「優孝先輩っ」



 会長の簡潔な説明が終わり、いくつかの質問を終え。表面上、何事もなく終わった顔合わせの後、憧れの先輩にどう声をかけようかとそわそわする女子をものともせず、お姫様が声を上げる。


 どうにか優孝と一緒に帰ろうとちんたらと帰り支度をしていたわたしはその声にびくりと動きを止めた。お姫様を注視したのはわたしだけではなかったようで、ぴんと教室内に嫌な緊張感が立ち込める。


 それに気付かないわけではないだろうに、資料を片づけていた優孝がお姫様に視線を向け――微笑んだ。



 「先輩、会長補佐だったんですね! まさかそんな偉い人だなんて思ってもみませんでした!」


 「そう? 今年の会長は優秀だからね、会長補佐の僕にはほとんど仕事なんてないだろうけど」


 「そんな! 優孝先輩だって十分優秀だと思います!」


 「ありがとう。期待に添えるように頑張るよ」



 笑い合うお姫様と王子様。紅茶色の瞳がお姫様を映して、そして微笑む。


 ……ああ、どうして。そこは、わたしの、わたしだけの、



 「あの優孝の妹さんに会えるなんて思ってなかったな」



 ぼそりと後ろから囁かれ、思わず肩を上げた。耳元にかかる息が背後の人物との距離を示す。戯れのように耳に息を吹きかけられてぞわりと鳥肌が立つ。



 「かい、ちょう、」



 振り返れば、いつのまに後ろに立っていたのか、崩れぬ笑みを浮かべた会長が首を傾ける。周りに他の生徒もいるからかいつもと同じような笑みではあるが……こちらを見据える視線はまるで獲物を見つけた肉食獣のように愉悦に浸っている。



 「優孝がそれはもう大切にしてるって一部では有名なんだよ、君」



 やけに赤い唇が知ってた? と歪む。緑のガラス玉に眉を顰めたわたしが映る。それを閉じ込めるように、瞳が細められた。



 「まあ、今は可愛らしい後輩に目を奪われてるみたいだけど」



 つい、と談笑する2人に細い指を向け、ハートを描くように指先を揺らす。



 「気になっているんでしょう?」


 「そんな、こと、」


 「瑛莉!」



 突然の大声にぱちりとガラス玉が瞬く。歪んだ口元は既にいつもの感情を読ませぬ笑みが貼り付いている。


 手を引かれ倒れ込んだ先にいたのは大声の主――優孝だ。ふわりと微笑んでよろめいたわたしを支える。



 「ゆた、か……」


 「瑛莉、支度はできた? 一緒に帰ろう」


 「…………ええ」



 ちらりと優孝の後ろを見れば、もう話は終わったのかお姫様の姿はない。



 「千条さん……ああ、そうかどちらも千条だったね。……瑛莉さん、今日は仕事もないしもう帰っても大丈夫だよ? お疲れ様」



 白々しく微笑んで教室を後にする会長の背を目で追う。去り際に向けられた感情を読ませぬガラス玉がこちらを睨んだ、気がした。






たぶん武藤くんは後日、優孝から牽制という名の忠告を浴びせられます。優孝はできるだけ親戚と瑛莉を関わらせないよう立ち回っているので、委員会が同じだなんて少し予定外。



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