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フラグを立てろ  作者: 遊楽
4月 出会いイベント
15/18

※三晴バッドエンド『僕だけを見て』



本日二度目の更新です。

どうしても我慢できなかった。後悔はしていない。


ということで、三晴ルートのお姫様エンドです。シナリオ外『阻止』で瑛莉がぼんやり思い出していた、あのバッドエンドです。


ゲームの話は読みたくない!って方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。今後の展開とは一切関係ありません。



残酷表現注意。






 「ねえ、瑛莉チャン」



 そうかけられた声にわたしはすぐに振り返る。わたしを『瑛莉チャン』と呼ぶのは、愛しい彼しかいない。最近、なかなか会ってくれなかったけれど、やはり彼もわたしのことが好きなのだ。


 けれど、笑顔を浮かべ振り返ったわたしを、彼――三晴センパイはふんと鼻で笑った。



 「見て見て、この子可愛いでしょう?」



 三晴センパイの手にあるのは、何枚もの写真だ。掲げるようにわたしの目の前に突き出されたそれに写るのは全て同じ少女。



 「僕のこと好きなんだってさ。だから、僕この子と付き合ってみようかと思って」



 ひらひらと揺らされる写真の中には、恋する乙女そのものの甘い表情を浮かべた、我が学園のお姫様。きっといつもの軽い調子で向けられたのであろうカメラにはにかむような笑みを浮かべている。



 「ほら、キスするだけでこんなに赤くなるんだよ。可愛いでしょう?」



 アップで写された、顔を赤らめた写真。



 「これはね、この前デートに行ったときの写真」



 三晴センパイのものであろう手を引いて笑顔を見せる写真。



 「ねえ、瑛莉チャン。正反対のお姫様に僕を盗られて、どんな気分? ねえ、苦しい? それとも悲しい? ねえ、教えてよ。どんな気分?」



 そんな写真の数々をわたしの頭の上からばら撒いて、三晴センパイが楽しげに笑った。それはいつもの笑顔で。わたしだけに向けられる、笑顔のはずで。


 ……ああ、どうして気付かなかったのだろう。


 この人が、こんなにも歪んだ笑みを浮かべていたことに。



▽BADEND『僕だけを見て』


▽スチル『君の感情』が開きました。



――――――

――――



 別に誰でもよかったのだ。僕を楽しませてくれるなら。


 愛とか恋とかそんなものはどうだっていい。楽しいか楽しくないか。僕の世界は全てそれだけで回っている。


 そんな僕の心に入り込んできた唯一の女の子。それが千条瑛莉だった。


 あの名家、千条家のお嬢様。最初はただの興味本位。今まで付き合ったことのないタイプだったし、どれだけ僕を楽しませてくれるのかと一緒に行動してみることにした。ただそれだけだったのに。



 「君が悪いんだよ?」



 顔を青ざめさせた彼女にそっと囁く。いつもは女王様然とした彼女には珍しくその顔からは感情が抜け落ちている。


 ぼんやりとした赤い瞳が僕を映していて、とても嬉しくなった。そうだ、僕のことだけ見ていてくれればこんなことにならなかったのに。


 彼女は美人だ。頭もいい。僕みたいにたった1つの価値基準で動いているわけではないから、彼女の持つ世界はとても広い。僕はそれが許せなかった。


 だから、僕のことを好きだと言ってきた相原妃花を利用することにした。


 瑛莉チャンから距離をとり、相原妃花と恋人ごっこ。瑛莉と比べて面白味に欠けたけれど、純粋無垢な彼女も今までになかったタイプだからそれなりに楽しめた。そうして戯れのように写真を撮って、瑛莉に見せつける。


 瑛莉は僕のことが好きだと言ったのに。そのくせ、僕のことだけを見てくれなかったから、こうするのが一番だと思った。こうやって傷つけてやれば、彼女の心は僕のことだけ考える。プライドの高い彼女のことだから、それを傷つけてやれば僕のことを憎んでだってくれるかもしれない。


 向けられるものが悲しみだって、憎しみだってなんだっていい。その感情が強ければ強いほど、彼女は僕に捕らわれてくれる。その事実だけで僕は満たされるのだから。



 「ねえ、君は僕のことが好きなんでしょう?」



 赤い瞳がぼうと瞬く。その宝石みたいな瞳をもっと近くで見つめたくて、僕はずいと顔を寄せた。



 「それなら、僕のことだけ見ててくれなきゃ。僕のことが好きなのに、どうして他の男をその目に映したりできるの?」



 僕のことだけ愛してくれるなら、いつまでだって僕も愛してあげる。そう言ったはずなのに。どうして分かってくれないんだろう。どうすれば君は僕だけを見てくれるんだろう。



 「ああ、そっか」



 まるでルビーみたいな綺麗な瞳。覗き込めばまるで鏡みたいに、僕だけを映し出している。



 「何も見えなくなっちゃえばいいのか」



 どうしてそんな簡単なことに気付かなかったんだろう。


 名案に1人頷いて、赤い宝石に、ぐちゅりと指を突き立てた。



 ――ほら、これでようやく、君は僕のことしか見えなくなった。






この後、画面は赤く塗りつぶされてエンドです。このくらいの残酷表現なら、大丈夫、かな……。


好感度が低い状態なので、「どうして僕を見ないの?」となっても、自分を見てもらうためにとる行動が、もう1つのバッドエンドとは大きく異なります。


このエンドでは、瑛莉のためとはいえ「瑛莉以外の人間」にまだ関心が向いているので、それならお姫様を利用しようという考えに至ります。僕を見ないなら殺しちゃう、となるのは利用しようなんて考えないほど、瑛莉一筋で生きているから。でもまあ、根本は同じです。




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