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10.宇宙軍に連行されました

 ブレット達を乗せたファム・ブレィドゥー号は、何度目かのDSS・ドライブで太陽系に到着した。


 助かったと思ったのも束の間。とても面倒くさい出来事と手続きが彼らを待っていた。


 救難信号を出した船の乗組員が、地球まで七日かかるところを数時間で帰還すれば、騒ぎも大きくなろうというもの。


 それも異星人の船で。しかも巨大な女の子フィギュァで。

 騒いでください、と拡声器で触れ回っているようなもの。


 軍情報部にしょっ引かれてしまった。


 現在ファム号は、軍の閉鎖型ドックに収容されている。

 ドッグを管理するのは年老いた准将である。彼は軍部内でも堅物で通っている。現在、彼は何とも気まずい雰囲気に陥っていた。


 一般的に地球を発祥源とする人類による宇宙船の基礎デザインは、軍民を問わず推進軸に対し前後に長くて上下左右に短い葉巻型。その方が推力を効率よく活用できるからだ。


 ところが、ファム号は前後に短くて縦に長い。 

 ファム号は軍施設の内部ドッグで女の子座りをしていたのだ。

 あまつさえ、時々髪の毛を手で掻き上げている。

 悩ましい……


 うつ伏せになられては、まるで雑誌を飾る水着のグラビア・モデルだ。まして仰向けでは、もっとアダルトな雑誌を飾らねばならない。


 風紀上問題だ。なんとか縦で、地球規格のままドッグに収容したい。

 そうなると当然、股関節・膝関節を折り曲げなければならない。

 老准将苦肉の策であるが、センスが光る結果となってしまった。


「整備してみたい♪」 

 ファム・ブレィドゥー号を見つめている若いスタッフ達は、皆一様にボーっとしている。

 彼らをどーしてくれようか、准将は暗澹たる気持ちで見つめていた。




さて、ブレット達はというと……。

 個々に因る様々な抵抗があり、個別の審査は省略された。異例ではあるが、ほぼ全員まとめての取り調べとなった。


 ブレット、オイスター、ポロネーズ、そしてネコ耳三匹(代表)とロゼ、みんな一室で椅子に座らされている。アーシュラ様はこの場にいない。


 対して壁際には、いかにも堅物タイプの軍人が三名座っている。

 尋問員が二人。残り一人は書記といったところか。

 書記はノートブックタイプの音声文章化機を開いている。


 代表格の大佐が主に質問していた。ブレット達は、彼らにまとめて尋問されているのだ。

 ファム号内部を検閲させろ! と強引な詰めよりかただ。ロゼ達の持つ先端技術の一端でも手に入れたいのだ。


 何せ、人類の他空間航行技術で数日かかる距離をたった数時間で移動してのけたのだ。その秘密を地球政府が手に入れたがるのも無理はない。


 勿論、ロゼ達は拒否した。

 ハスクバナード王国のトップ技術が詰め込んである船だ。情報公開などするはずがない。

 両者の話し合いは平行線をたどっていた。


「仕方ない。一旦、休憩にしよう」

 クールダウンを謀る大佐。リズムを変えて攻略するつもりだ。

 ティーカップに入った紅茶が配られた。豊かな香りが部屋に溢れる。


「変な薬が入ってるんじゃないでしょうね?」

 ロゼが疑う。精神に作用する薬を入れて交渉を有利に運ぶ。充分あり得る話だ。


「芳醇な香りにして、それでいて濃すぎずマッタリとしていて口当たりが良い。なかなかいけますよ。このお茶」

 訳の分からぬ事を言いながら、一片の疑問を挟むことなく飲み干すブレット。


「薬を使って得た証言は証拠として採用されないんですよ。安心して飲んで下さい」

 同じポットから注がれたお茶を美味しそうに飲む大佐。


「これを入れたウチの大尉はお茶に凝ってましてね。相当な腕前なんですよ。軍部内でも有名なんですから」

 用心してチョビチョビと飲むロゼ。

「あ、おいしい」

 アーシュラ様に付き合わされて本格的なお茶をよく飲む彼女である。その、ロゼの味覚に照らされても確かに美味しいお茶であった。


「おかわりはありませんか?」

 すっかり喫茶店のマスター気取りで注文を取る、当の大尉。

 ネコ耳達が口を付けない事に気がついた。クリクリとした目でカップを見つめている。


「ネコ……の皆さんはお口に合いませんでしたか?」

 ネコ耳達は見た目に子供っぽかったので、苦味のするお茶はまだ早かったかな? と思った大尉。 

「彼女たちは猫舌なんで……」

 ロゼはバツが悪そうに後頭部を掻いた。


 お茶会が終わり、話し合いも新たなる展開が期待されると思いきや。

 前にも増して全くの平行線だった。


 さらにノートブックのキーボード部分で、一匹のネコ耳が寝ころぶという暴挙に出、余計に軍部の神経を逆なでしていた。


「軍に対しあまりにも非協力的だと、……どうなるか教えてやろうか?」

 軍情報部大佐はしびれを切らした。


 強権を発動し、有無を言わさない方法論へと展開する。

「地球軍の名において、ファム・ブレィドゥー号を接収する!」

「とんでもない話だわ!」

 ドアが勢いよく大きな音を立て開き、三十才前後の女性が飛び込んできた。


 大きくウエーブのかかった黒いロングヘアーは乱れ、尖った黒縁眼鏡の片方を覆っていた。グレーのスーツに、タイトスカートと黒ストッキングを履いた化粧の濃い女性だ。


「マープル経理部長!」

 ㈱ロイヤル宙運経理部長こと、マープル・キッドマン女史である。

 熟れ頃の美人なんだが、血走ったブラウンの目が美貌を台無しにしている。


 数人の、武装した兵士を押し倒して入ってきた。兵士の一人は鼻血を垂れ流している。

 ……この部屋に到達するまでの手法は割愛させていただく。


「ファム・ブレィドゥー号はウチで働く手筈になっているのよっ! ロイヤル薬師丸を沈めた責任を取ってもらうわっ!」

「軍の施設に無許可で進入した上に、何を身勝手なことをほざいているのか!」

「私たちの税金で食ってるくせに偉そうね?」

 大佐のDSSクに長いピンヒールを打ち付け、啖呵を切るマープル。

「あんた何様!」

「言わせておけば、この女!」

「ちょっと待ちなさい!」

 息巻くロゼ。椅子を蹴って立ち上がる。

 そして一息大きく息を吸い込んで、おもむろに切り出した。


「今何時でしょうか?」

「……午後四時になったばかりですが?」

 部屋の壁とテーブルに時計が設置されているのにかかわらず、わざわざ腕時計を見て答える大佐。


「あらあら、もう一時間半も経ってしまったのね。……後三〇分ですか……」


 一種独特の、そう、水を打った静けさが、取調室を支配したのだった。

今回より、2日おきで掲載します。


ちなみにファム号の昇降口はどこにあるのでしょうか?

皆様よりのアイデア募集!(設定忘れ)


次回11話「宇宙軍相手に喧嘩売りました」

ロゼの考え休むに似たり!

お楽しみに!

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