プロローグ
流血・解剖など少し残酷なシーンがあります。あまり、明確には記載していませんが、R-15程度の性的シーンも多少ありますので、これらが苦手な方は了承した上で閲覧をお願いいたします。
街が静けさに包まれ、輝いていた太陽は姿を暗まし、月があざ笑うかのように顔を出す。街は偽りの輝きを放ち、人達を見下ろす。その瞬間から暗く哀しい残酷な闇が動き出す。
平和そうなこの街の闇を、いったいどのくらいの人が知っているのだろうか?恐怖を知らず興味本位に闇に触れたなら、闇に囚われ後戻りなど出来やしない。夜の闇に生きる人間は、何時消えてしまうのか解らない。それは何時でも狙われているということ。しかし、この闇に一度でも触れてしまえば生きるためになんだってするだろう。それが、殺人だとしても。
七歳になる春と夏の間、雨の音はうるさくむしむしとしていて気持ちが悪いそんな中、誕生日という一年でたった一度のとても大切で幸せな日に、何も知らず幸せに普通の暮らしをしていた少年があまりに汚く残酷な闇に脚を踏み入れることになった。
憎しみ、恨み、汚いドロドロとした感情の混ざるこの街の裏側の処理、それはこの街が幸せであるための代償。政治家も警察も黙認してきた闇の存在。それは表の人間が幸せでいれるために作られた残酷な社会だった。
ネオンは眩しく夜の街に相応しくないほどの騒音、そんな街の中、通りより少し入った場所にあるビルの一室では、火薬の臭いと血液の臭いが漂っていた。部屋の中では幾人もの死体がゴロリと床や机、椅子などの上で無惨な形で転がっている。胸に空いた穴からは赤黒い血液が噴き出し服や床、壁など異臭の漂うこの部屋のあらゆる物に付着した。
目の前には今回の標的、最後の一人として残った本日の彼の獲物。逃げ回りボロボロになった男は両手で銃を構え、震える手で銃口を少年に向けて叫んでいる。
「そんなのは知らない。俺は何も知らねぇ。ただ、ただ依頼を受けただけだ。だから、やめてくれ…」
必死に生きたいと、死にたくないと、声を放つ男は滑稽だ。
無表情に銃口を男に向け一歩一歩ゆっくりとした足取りで追い詰める少年は、悪業を働く奴らを消しに来ただけの心の無いただの人形だ。ロボットというわけではなく、人を殺すために感情というものを全て捨ててしまっただけで、普段はどこにでもいるヤンチャな少年とそんなに変わりはない。ただ、仕事中は何も感じ無いのか、いくら命乞いをしようと結果は変わらないのだ。
「おい、依頼を持ってきた奴の名は?」
「く、黒田。黒田 玄っていっていた。」
「そうか。」
男は少年の静かな問いに恐怖心からか、なんのためらいもなく答えた。
直後、空を切り裂く銃声が部屋中に響いく。
男は奇妙なうめき声をあげ、後ろへ崩れ落ちた。
うす暗く異臭の漂っていた部屋に新たな生臭い血液の匂いが混じる。少年は男が絶命したことを確認して死体が多く転がるこの部屋を後にした。
まだ銃口の熱い愛用のハンドガンを片手に黒いカードを入り口に残して。