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大目付

掲載日:2011/08/27

出井勝押でいかつおし・参議院議員、条例違反により逮捕する」


 有力な首相候補と言われてきた出井は、その瞬間、驚いたように目を見開いた。



 日本国憲法第50条に基づき、国会議員はこれまで汚職等があった場合でも、会期中は逮捕する事が出来なかった。


 だが大震災後の混乱で、各党の足の引っ張り合いが常態化したことにより、事態は一変した。


 国民の怒りが頂点に達し、それまで政治の主導権を握った事のない新・政党が衆院選で過半数を握ったのだ。



「我々は完全なる政治浄化を目指し、国会議員に与えられている特権を全て廃止します」


 それが、この政党が国民に約束した唯一のマニフェストだった。



 こうして創設されたのが、我々大目付おおめつけだった。

 むろんこれは江戸時代の制度を現代に適用したものだ。



「国民の為に誰をも恐れず、徹底的にやってくれたまえ」という、首相の言葉に従い、

我々はがむしゃらに政治家達の裏を暴きだしてきた。


 政治資金法違反、収賄、脱税、挙句の果ては恐喝にいたるまで、出るわ出るわ枚挙に暇がなかった


 もちろん、我々は野党だけでなく、与党にも手を抜かなかった。


「閣僚といえども特権は認めない」とする大目付法の原則に従い、罰すべき者は公平に処分を下して行ったのだ。


 すみやかな逮捕には、ツイッターやウィキリークスからの情報が役に立った。


 しかし、それでも逮捕に至る為に大いに苦労した者もいる。

 この出井勝押もそうだった。

 出井は自身が『鉄壁の高潔漢』と名乗るように、その裏がなかなか見えなかったのだ。



「君達は上司である、この私を逮捕しようと言うのか!」


 初代大目付長官・出井勝押はなおも食い下がったが、


「法令に違反した者は、親でも逮捕しろと言ったのは貴方ではありませんか。大丈夫、後は我々役人にお任せ下さい」


 そう言うと、出井は「なるほど・・・」と言って、観念したように両手を差し出した。


「では、出井勝押・参議院議員、『野良猫に餌を与えてはいけない』という、条例違反で逮捕する!」

 俺はあらためて逮捕状を読み上げ、その身柄を警察官に引き渡した。

 


「やりましたね! これで衆議院480人、参議院242人、全員逮捕で、コンプリート達成です!」

 部下の若林が、うれしそうに俺の手を握った。


 今夜はうまい酒が飲めそうだ。




     ( おしまい )


    ※・・・この物語はすべてフィクションです。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすいSSで、時間に余裕がないときでも楽しめますね。 [気になる点] もう少し大目付制度を活かした描写があった方が物語に深みが増していたように思います。 [一言]  逮捕された容疑に思…
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