田舎に引っ越して転入した
僕は田舎から都会に引っ越した。
両親がどうしても都会で仕事することになってしまったので、仕方ないけど友達には別れの挨拶をした。
「来週にはここを引っ越すんだ」
「え……」
「伝えるのが遅くなってごめん。両親の転勤も急に決まって、僕も急いで準備を進めているところなんだ」
僕が対面しているのは仲の良かった女の子のうちの一人。永石麻名ちゃん。
「…引っ越しちゃうの?」
「うん、そうなんだ。ごめんね、急にこんなこと言って」
「…仕方ないよ。理くんの所為じゃないし」
「本当にごめん。でも夏休みになったら絶対にまた会おうね」
「帰って来てくれるの?」
「もちろん、絶対に帰って来るよ」
「…待ってるからね。絶対に帰って来てね」
「うん!約束だよ」
そして僕は田舎から都会へと向かったのだった。
都会に行って一番最初に驚いたのは男女があんまり話さないことだった。田舎だともちろん全員ではないものの、男女の交流は普通に持たれていた。でも、都会では全くと言っていいほど話さない。
なんでなんだろうと思いつつも、僕はいつも通りに過ごすことにした。
席が隣になった人には仲良くなろうと声を掛けた。
「改めて田中理です、よろしくお願いします」
「え…こ、こっちこそ…よろしく…」
「急に声を掛けちゃってごめんね、これからしばらくは隣の席だと思うし、色々と迷惑を掛けることがあるかもしれないので、その時は余裕があったら助けてくれたら嬉しいです」
田舎とは違う、都会のルールとかがあるかもしれない。それに教材とかがまだ渡されてないので、授業の時は一緒に見せてもらわなくちゃいけないかもだし。
そこで僕はまだ彼女の名前を知らない事に気付いた。
「キミの名前を教えてくれますか?」
「…あ、あたしは…永地美環…です…」
「美環って良い名前ですね」
「そ、そうかな…?」
「うん、とっても良い名前だと思うよ」
人の名前にはそれぞれ両親からの想いが詰まっているもの。だからどんな名前も等しく、素晴らしいと思う。
全然違うけど、僕が永地さんと話している時に周りの視線が僕と永地さんのところに集中していた。
理由は分からないけど、僕が転校生だからかな。
そう言えばあの時も注目されていた。
初日にお弁当を持って来るのを忘れて、食堂で列に並んでいる時に目の前の生徒に声を掛けた。
「あの…今日から転校してきたので、どれが美味しいとか分からないんです。何かオススメとかあったら教えて欲しいです」
前の人も急に話し掛けられたことに驚いていて、しばらく無言だった。なので僕と目の前の金髪の子としばらく見つめ合った。
「…え~っと…最初に頼むんだったら日替わり定食がいいんじゃない。それに今日はウチも好きなアジフライだしさ」
「そうなんですね。教えてくれてありがとうございます」
「…お、おれいなんていいよ…」
そこで僕はちょっとだけ勇気を出して誘ってみることにした。
「これは別に嫌だったら断ってもらってもいいんですけど、食べる相手がいなかったら僕と一緒に食事をしませんか?」
「え…?」
「急にこんなこと言ってごめんなさい。転校したばかりで友達がいなくて、少しでもこの学校に馴染めたらいいなって思いまして」
早くここに馴染むために声を掛けることが大事だと思っていたけど、さすがに見ず知らずの人間と一緒に食事をしたいとは思わないか。
「…いや、さっきのことは忘れてください、色々とごめんなさい」
すると、金髪の女子生徒はすごくか細い声ではあったものの、「え…うちは…いいよ」と言ってくれた。僕は地獄耳なので聞き流すことをしない。
「本当にいいんですか?」
その問いに対しても彼女は首を縦に振ってくれた。
「ありがとうございます、じゃあ一緒に食べましょう」
結果的に僕は彼女と食事をした。
彼女の名前は坪井利乃さんで二年生なので僕の一学年上の先輩だ。
坪井さんとはこの高校の話やそれぞれの話など色んな話をした。最初は坪井さんの方がすごく遠慮している感じだった。でも、少しずつ緊張が解けていくように話も膨らんで行った。
その時もなぜか周りの視線は僕と坪井さんに集まっていた。
こんな感じで僕は注目を集めている気がする。そしてその理由が本当に転校生だからなのか。
もしかして、都会の人たちは、田舎出身の僕のことが珍しいのかな。
僕も田舎に住んでいる時に都会からこっちに引っ越してきた子がいた。その子も最初は僕たちのことを少し遠くから見ているだけで、話し掛けてもあんまり反応してくれなかった。
でも結局、その子も最終的には僕たちと仲良くなったけど。
だから少しすれば注目されるのも終わると思う。
まあ、注目よりも僕は早くこの高校に慣れて友達を作りたい。
そのためにも積極的に話し掛けに行こうと決意した。




