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寮友

「えーっと、ここかな……」


地図を頼りに、ようやく寮へたどり着いた。 学院の外れにある寮は、どこか物寂しい雰囲気が漂っている。 遠くからは、残酷なほど楽しげな生徒たちの笑い声が聞こえてきた。


割り当てられた部屋の前。 かつて戦場で感じたものとは違う、正体不明の緊張が走る。 私は意を決して、扉を開けた。


「失礼しまーす……」


中に入ると、何かが動く音がした。 午後の光が差し込む部屋には、分解された魔道具のパーツや工具が散乱している。


「わわッ」


机に向かっていた少女が、弾かれたようにこちらを向き、警戒を露わにした。 私は慌てて挨拶をする。


「今日から同室になる、フィア・アステリオスです。よろしくお願いします」


その勢いに驚いたのか、彼女が椅子から立ち上がった拍子に、机の上の物体が床へ滑り落ちた。


「あっ」


彼女が悲鳴を上げる。 私は短く息を吐き、魔法で小さな風の渦を作った。 物体は床に激突する寸前、ふわりと宙に浮き、彼女の手元へと送り届けられる。


「あっ……ありがとう、ございます」


救われたような、情けないような笑みを浮かべる彼女。


「私は、セレナ・アークフェルです。……その、これから、よろしくお願いしますっ」


深々とお辞儀をする彼女に、私は聞き返した。


「アークフェル家というと、あの軍武卿の?」


三大名家の一つ、国防のトップ。 しかし、彼女はどんどん声を小さくした。


「はい。私みたいな中途半端な者が娘だなんて、驚きますよね……」


今度は彼女が私に問いかける。


「フィアさんは、政務卿とどのような関係が?」


「あの人とは、義理の兄弟……といったところでしょうか」


その言葉で、セレナは私の境遇――**『不義の子』**であることを察したようだ。 彼女は同情の目を向けたが、私はくすりと笑って彼女を見つめた。



「不遇だと言われることには慣れています。でも、誰かに『あなたは不幸であるはずだ』と勝手に決めつけられるのは、ひどく退屈です。あなたもそう思いませんか」



「……そう、ですね。本当に……」


気まずかった空気が、静かな共鳴へと変わる。 私は話題を変えるため、彼女が持つ物体に視線を移した。


「それは、自作の魔道具ですか?」


見せてもらった円筒形の装置には、緻密な術式が刻まれていた。


「なるほど……『花』を作り出すためのものですね?」


「わかるんですか……!?」


驚く彼女から魔道具を借り、静かに魔力を流し込む。 術式が起動し、先端から一本の細い光が伸びた。 光は実を結び、一輪の薄紅色の薔薇が咲き誇る。


「綺麗ですね。でも、とげがありますから気をつけないと」


「はい。でも、色がうまく出なくて……魔力消費も激しいし、課題だらけなんです」


自信なさげに肩を落とすセレナ。 私は術式を観察し、銀の線を指し示した。


「ここの術式を修正して、余計な抵抗を減らせば、色はもっと鮮やかに出るはずですよ」


その指摘に、彼女の瞳が弾かれたように輝いた。 「なるほど……! だったら、ここも削れば……」


気づけば、部屋を支配していた気まずさは消えていた。 私たちは時間を忘れて、魔道具の改良に没頭していった。

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