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ep.33 休眠資産の覚醒

「ガッ、……火炎弾が多すぎる……ッ!」


四方八方から飛来するデーモンの猛攻。

耐性15%のボロ布を纏う一郎にとって、この密度はもはや確率論で避けきれるものではない。

ゾンビが一体、また一体と斧で粉砕され、一郎の喉元までデーモンの鉤爪が迫る。


(クソ、再召喚(Raise Zombie)が間に合わん……! あの『男爵』を手に入れてから、召喚のセットアップばかりに気を取られて……待て)


火炎弾が一郎の肩を焼き、ライフが赤点滅したその瞬間。

一郎の脳裏に、自身の装備リストの「空白」が閃光のように浮かび上がった。


「……そうだ、籠手だ! 私は何をしていた……! 男爵のソケットを確保するために一度外して、そのまま『休眠』させていたじゃないか!」


一郎は死に物狂いで、籠手『アイアン・ガントレット』の連結スロットに予備のポケットに突っ込んでいたジェムを叩き込んだ。

PoEシステム覚醒時から一郎の窮地を救ってきた、あの「自動迎撃システム」の再構築だ。


【ポートフォリオ:籠手のカウンター・セットアップ】


【リンク発動:Cast when Damage Taken(被ダメージ時キャスト)】

【支援効果:Increased Area of Effect(効果範囲拡大)】

【発動スキル:Shockwave(衝撃波)】


 「——発動エントリーだ!」


直後、デーモンの爪が再び一郎のライフを削り取った瞬間、システムが強制的に作動した。

一郎のライフ減少をトリガーに、籠手のソケットが青白く爆発。

全方位に向けて、凄まじい物理衝撃波(Shockwave)が放射された。


 ドォォォォォン!!


一郎を取り囲んでいたデーモン共の肉体が、まるでシュレッダーにかけられたように一瞬で霧散する。

範囲拡大の支援を受けたその衝撃は、アトリウムの床を揺らし、密接していた敵のパックを文字通り「清算」した。


「……フゥ、これだ。私が忘れていたのは、この『リスクヘッジ』だ」


自分が傷つくたびに、周囲の敵が吹き飛ぶ。

このカウンター・ギミックが戻ったことで、一郎の周囲には空白の安全圏が生まれた。


「ゾンビの再召喚までの時間は、これで稼げる。……さあ、デセクレイト(死体生成)! 立て直すぞ!」


一郎は、自分のポカミスを棚に上げ、再び不敵な笑みを浮かべた。

相棒アセットが息を吹き返した今、このブリーチという名の暴風もようやく攻略の糸口が見えてきた。


だが、その安堵を切り裂くように、ブリーチの最深部から巨大な斧を担いだ影——『Xoph's Favoured(ゾフの寵児)』がゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。

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