ep.23 装備再構築への痛感
主制御盤室の鉄扉を蹴破った一郎を待っていたのは、空間全体を飽和させる青白い放電だった。
中央に鎮座するのは、巨大な変圧器と肉塊が癒着したようなレア・モンスター。
その周囲を、帯電したゾンビのパックが守備固めしている。
「……雷属性か。耐性は積んでいるが、この電圧は計算外だな」
一郎は四体のゾンビを突入させる。
増員された生産ラインは力強く、Splash効果を伴う拳が帯電パックを次々と粉砕していく。
だが、中心に座すレア個体が放った高圧電流が前線を支えるゾンビたちを直撃した。
――ガガッ、と嫌な衝撃が一郎の脳内システムを揺らす。
(……チッ、一体消失か。雷耐性を上限まで固めていても、これほどの損耗を強いられるとは)
敵が放つ「感電」のデバフ。
被ダメージを割合で増大させるその状態異常は、防御ポートフォリオを内側から食い破っていく。
それだけではない。
漏電した火花が一郎の『アイアン・ガントレット』を掠めた瞬間、焼けるような激痛が走り、視界の隅のライフゲージが跳ねた。
同時に、青いマナゲージが身代わりとなって大きく削れる。
(……『Mind Over Matter』で分散してもこれか。雷耐性という保険とマナの受け皿、その両方のキャパシティが今の電圧に追いついていない)
強烈な一撃に対しては、単に仕組みを導入するだけでは足りない。
受け皿そのものの「容量」を拡張しなければ、ショックでマナが枯渇し、そのまま防衛線が崩壊するリスクがある。
「……損害が拡大する前に、一気に戦闘を終わらせるぞ!」
一郎は後退しながら『Desecrate』で死体を補充し、間髪入れずにゾンビを再起動する。
四体による波状攻撃。
Splash効果が重なり合い、レア個体のヘルスが急速に削り取られていく。
最後は、過負荷に耐えきれなくなったトランスが爆発し、巨大な肉塊が絶縁破壊を起こして崩れ落ちた。
静寂が戻った変電室。
一郎は、焼け焦げたガントレットを苦々しく見つめながらドロップ品を検品する。
転がっていたのは、数枚の『Orb of Alteration(変化のオーブ)』と鈍い青光りを放つマジックのブーツだけだ。
「……これだけのリスキーな戦闘を強いて、リターンはこの程度か。割に合わないにも程がある」
一郎は拾い上げたブーツを無造作に収納袋へ突っ込んだ。
良くて移動速度か、申し訳程度のステータス補正がついている程度だろう。
だが、今の彼にとって重要なのはドロップの額面ではない。
(雷耐性75%の上に、MOMの余力をどこまで積み増せるか。……投資先を間違えるな。次はマナプールの拡大による『防衛線の増強』だ)
一郎は焼け焦げたゾンビたちを従え、変電所を後にした。
勝利の美酒に酔う余裕はない。
彼はすでに、手元の低級カレンシーをどう使って生存マージンをさらに強固にするか、その再投資計画を練り始めていた。




