表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/58

ep.2 平穏を邪魔する者は神でも殺す

「な、なんだ!? 何をした!」

「……おい、おっさん。聞いてんのか?」


残りの二人が腰を抜かして後ずさる。

一郎は自分の手を見つめる。

視界の端で、無数のノードが複雑に絡み合うパッシブツリーが静かに脈動していた。

……いや、彼の視界には、それ以上の「情報」が流れ込んでいた。


(被ダメージ時キャスト……衝撃波リンク……。なるほど、そういうことか)


一郎は一瞬で理解した。

これは彼がかつて廃人一歩手前までやり込んだ、あの「不親切で残酷なハクスラ」のシステムそのものだ。

ならば、今すべきことは「効率化」と「リスク管理」のみ。


「……何をした、だと?」


一郎は、腰を抜かした男たちを冷たく見下ろした。

その瞳には、社畜時代に無茶なノルマを突きつけてきた上司を見る時のような、どす黒く冷え切った感情が宿っている。


「私は『静かに暮らしたい』と言ったはずだ。……君たちは、私の警告という『コスト』を無視して、最悪の『損失』を選んだ。ただそれだけのことだよ」


「ひ、ひぃっ……!」


「失せろ。これ以上私の時間を奪うなら、次はもっと高い利息ダメージを払ってもらう」


一郎の低い声に、男たちは脱兎のごとく逃げ出した。

静寂が戻った廃墟の街。

一郎は深く、深く溜息をつき、崩れかけた壁に背を預けた。


「……やれやれ。まさかリタイア後の第二の人生が、放置ビルドのテスト(実戦)から始まるとはな」


眼鏡を押し上げ、彼は空中に浮かぶ広大なスキルツリーを凝視した。

投資で培った「最適化」の知識が、最強のビルドを構築せよと彼の背中を押している。



数分後。 路地裏には、廃人のように白目を剥いて転がるリーダー格の男と、以前と変わらずくたびれたスーツを着た一郎だけが残っていた。


「……ふう。やはり暴力は良くないな。カロリーの無駄だ」


一郎は手元の端末を確認する。

奪い取った低級カレンシーは、今の彼の生活を数週間支えるには十分な額だった。

そして、掌に転がる一郎が死ぬ思いでダンジョンから手に入れた『Divine Orb(神のオーブ)』。

本来なら一般人が手に入れることはできない至宝だが、一郎にとっては「早期リタイア生活を再建するための、単なる原資」に過ぎない。


(これは……『神のオーブ』か。今のレートなら私の装備をさらに最適化できるが……今は保管しておくのが得策か)


「さて、今日の夕食は少し贅沢をして……合成肉ではなく、本物の鶏肉を探してみようか」


返り血を拭うこともなく、一郎は猫背のまま、夜の闇へと消えていった。


だが、彼はまだ気づいていない。

彼が発動した「規格外の魔力」を、この国を支配する「新日本民主主義国家」の監視衛星が、しっかりと捉えていたことを。


「解析完了。……高額カレンシー所持の登録市民IDとも一致しません」

「……直ちに徴税執行官を派遣せよ。未登録の『資産』は、国家が没収する」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ