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ep.17 新宿デパ地下の最終決戦

大百足の群れを「処理」し終えた一郎は、返り血を拭うこともなくさらに奥へと足を進めた。

辿り着いたのは、かつてこのデパートの目玉であった「高級精肉・特設競り会場」だ。

そこには、贈答用の木箱やショーケースを押し潰すようにして、巨大な「肉の山」が鎮座していた。


「……ギィ、ォ、ォ、ォ……」


肉山が震え、立ち上がる。

それは、廃棄された数千キロの肉が変異し、一つの意志を持ったかのような巨大な異形。

右腕には錆びついた巨大な肉切り包丁を、左腕には競り用の鉤爪を融合させている。


『ネームドモンスター:The Butcher of Shinjuku(新宿の屠殺者)』


「ひっ、おっさん……! デカすぎんだろ、逃げよう、これマジで死ぬって!」

「……静かにしろ。逃走ルートの確保とこの巨体を無視して背後を取られるリスクを考えれば、ここで『逃げる』選択肢はない。むしろ、この規模ならドロップも期待できる……絶好のファーム日和だ」


 一郎は淡々とアイアン・ガントレットのジェムが正しくリンクされていることを網膜上で確認した。


「やれ。まずは外周からだ」


一郎の合図と共に、三体のゾンビが地を蹴った。

ボスの周囲には、腐肉から剥がれ落ちた小規模な肉塊――スクラップたちが群がっている。

以前の一郎なら、これら一匹ずつを処理するのに多大な時間を要したはずだ。


だが、今のゾンビは違う。


ドゴォッ!


パッシブで強化された『攻撃速度』で繰り出されるゾンビの拳。

それが一体に命中した瞬間、新たにリンクされた『Melee Splash Support(近接範囲攻撃補助)』による衝撃波が扇状に広がり、周囲のスクラップごと一気にミンチへと変えていく。


(……ほう。単体への打撃が、そのまま周囲の減衰に繋がっているな。これこそがファームの効率化だ。余計な雑魚を無視して、メインのボスにリソースを集中できる)


一郎は、ゾンビがボスを「解体」していく様を、工事現場の進捗を確認する監督のような目で見つめていた。

ボスの巨大な包丁がゾンビを襲うが、ゾンビたちは一郎自身のパッシブスキルによる『ミニオンダメージ増加』の恩恵を受け、強引に肉を削り取っていく。


削り、叩き、衝撃波で取り巻きを吹き飛ばす。

その光景は、戦いというよりは、巨大な重機による「解体工事」そのものだった。


「ギ、ァ、ア、ア、ア!」


最後の一撃。

ゾンビがボスの核である巨大な牛の頭蓋骨を粉砕した瞬間、肉の山は光の粒子へと崩壊し、暗い地下に贅沢な「報酬」をぶちまけた。


「……よし、決算だ」


一郎が歩み寄った先には、今までの雑魚とは比較にならない輝きを放つカレンシーが転がっていた。

数枚の『Orb of Transmutation(変成のオーブ)』。

そしてその中心には、さらに上位の価値を持つ『Orb of Augmentation(拡張のオーブ)』が鈍い銀色の光を放っている。


(……ほう、拡張のオーブか。これなら闇市のレートでも相当な G になるはずだ。隣のガキの維持費を差し引いても、今月は『黒字』で着地できるな)


一郎は事務的な手つきでそれらを回収すると、背後で口をあんぐりと開けているクソガキに短く告げた。


「撤収だ。これ以上長居しても意味がないからな」

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