7話
「なぞなぞは全部で五問。一問正解するごとに豪華賞品をプレゼントだ。ただし! もしも不正解だった場合には……」
魔神シンケンマンが、巨大な前足を組んで重々しく告げる。八メートルを超えるハムスターの威圧感に、イケメン三人は固唾を呑み、次の言葉を待った。
シンケンマンはつぶらな瞳をきらりと光らせ、言い放つ。
「豪華プレゼントを、もらえない!」
「…………え?」
「聞いていなかったのか。仕方のない奴らだ、もう一度全く同じことを教えてやろう。もしも不正解だった場合には、豪華プレゼントをもらえない!」
二階が拍子抜けしたように、口を半開きにした。
「なんかこう……恐ろしい魔物に襲われるとか、呪われるとか、そういうやつかと思ったんだけど?」
「そのようなルールはない」
シンケンマンは、事務的な口調で即答する。
「私は神から『クイズを出し、正解者に物資を渡せ』という命令を受けている。ただそれだけだ。極めてクリーンな仕事だ」
「ちなみに、その豪華プレゼントって何? 金銀財宝とか?」
二階が食い気味に尋ねるが、魔神は首を横に振った。
「ルールにより、中身を事前に教えることは許可されていない」
「ヒントとかもダメですか……?」
「ヒントを出すことも許可されていない。私は規則と命令を愛しているのだ。例外を認めれば、それは組織の崩壊を意味する」
ハムスターのくせに、やたらとお役所的なことを言う魔神を見上げながら、三人は顔を見合わせた。
「まあ、でも何にしろ、やって損はないってことだよな。豪華プレゼントが何かも気になるし。もしかしたら、この世界を無双できるような強力な武器をもらえるかもしれないぜ」
「魔法だったら凄くないですか!? 僕、魔法が使ってみたいです!」
「確かに異世界ってわりに、魔法の『ま』の字もないからな……。ここで手に入るのかもしれない」
希望を膨らませる若者たちの背後で、腕を組んでいた横澤が、リーダーに視線を送った。
「……どうですか、リーダー?」
芦屋はゆっくりと頷く。
「リスクゼロでリターンがある話を断る理由はない。この俺の知能指数をもってすれば、なぞなぞなど幼稚園の遊戯も同然だ」
芦屋は一歩前に出ると、巨大なハムスターを見上げ、高らかに宣言した。
「やるぞ!おいハムスター、その『豪華プレゼント』とやらをすべて俺たちに献上させてやる。問題を出せ!」
「手続きの開始を確認した。では……第一問だ。……あぁ、私の人生もこれほど明快な選択の連続であればなぁ……いや、これはただの独り言だ」
「さっきから独り言が多いな」
「なぞなぞを出す前に、これだけは言わせてくれ」
二階のツッコミを無視したハムスターは、いかにも大事なことを言いそうな顔をした。
「我の故郷――これはつまり、私が人間だった頃の話だ。故郷のドイツ、ゾーリンゲンは刃物で有名だが、我自身は家業の会社で真空管を売っていた。その後、ワインのセールスマンもやった。……あぁ、アルゼンチンで飲んだ赤ワインの味は、今でも忘れられん」
「それって、問題と何か関係が……?」
「また独り言だよ」
「第一問! 『行きは荷物をいっぱい載せているのに、帰りはいつも空っぽになって戻ってくるもの』なーんだ?」
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