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6話 ~魔人は大きなハムスター~

 


 直径十メートルほどの正円を描く泉。その周囲だけは木々が綺麗に途切れ、まるで手入れされた庭園のように、青々とした芝生が円形に広がっている。


 頭上には遮るもののない青空。鳥たちが楽しげにさえずり、草むらではリスが追いかけっこをしていた。まるで楽園のような空間だった。


「わぁ……」


 愛くるしい顔をした北方美月が泉に駆け寄り、透き通った水面を覗き込む。


「飲めそうなくらい綺麗な水ですよ」


「いかんいかん! これだから素人は困る!」


 芦屋玉座が待ってましたと言わんばかりに人差し指を立て、声を張り上げた。


「いいか。こういう水は、どれだけ透き通って見えても、そのまま飲めば最後だ。寄生虫にお前の内臓をワンルームマンション代わりにされるぞ」


「ワンルームマンションって!」


「そんなに危険なんですね……」


「お前ら、水の残量は十分か?」


「いえ。ペットボトルのミネラルウォーターは、先ほど全てリーダーが飲んでしまいましたので、ありません」


 横澤が淡々と、しかし確実に皮肉を込めて言った。


「それなら、さっさと火を起こして水を沸騰させる準備をしろ。何故かお前達だけに渡された初期装備のリュックに入っているライターを使え。ほら、分かったら動け!」


 パンダTシャツの胸を張り、リーダー風を吹かせる玉座。三人のイケメンがそれぞれの表情を浮かべつつ動き出そうとした、その時だった。


 湖の中心に、明らかな異変が起きた。


 ボコッ、ボコボコッ!


「な、なんだ!? 水洗トイレの故障みたいな音がするぞ!?」


 芦屋の背後で、湖面から巨大な気泡が次々と湧き上がり、それは瞬く間に激しい渦へと変わっていく。


「ふふぁふぁふぁふぁふぁふぁ……!」


 地響きのようでありながら、どこか甲高さを含んだ不気味な笑い声が、静かな空間に響き渡った。


「お前ら、落ち着け! 落ち着いてリーダーの安全面だけを最優先に考えるんだ! 分かったか!」


 そして次の瞬間。


 ドォォォォォン!


 轟音と共に水面が大きく盛り上がり、大量の水飛沫が四人を容赦なく襲った。


 美しい湖から姿を現したのは、圧倒的な巨躯を誇る白とグレーの――巨大なジャンガリアンハムスターだった。


「私の名は、魔神シンケンマン。神より遣わされた試練の番人だ。お前たち、我の与える試練を乗り越えることができるかな? ふふぁふぁふぁふぁふぁふぁ!」


 巨大な鼻をひくつかせ、湿った毛をぷるぷると震わせる魔神。そのあまりにも異様な光景に、二階が我に返って叫ぶ。


「お前、何者だ!」


「聞いていなかったのなら、もう一度教えてやろう。私の名は、魔神シンケンマン。神より遣わされた試練の番人だ。お前たち、我の与える試練を乗り越えることができるかな? ふふぁふぁふぁふぁふぁふぁ!」


 巨大ハムスターは、先ほどとまったく同じテンションで言い切った。


「試練ってなんだよ! 戦うのか!?」


 シンケンマンは丸太のような指を一本立て、尊大に言い放った。


「――なぞなぞだ!」





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