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3話 ~言うだけの証拠がある~

 


「このおかしな状況は、異世界転移であると僕たちは考えています」


「はっ!」


 玉座が吹き出した。


「なろう小説の読み過ぎだな」


「それなら、あれをどう説明しますか?」


 少し顔を赤らめた横澤が、長い腕を伸ばして空を指さした。


「ん?」


 そこには、大きさのわずかに異なる二つの太陽が、並んで元気よく輝いていた。

 一つは見慣れた黄金色。もう一つはそれより少し小さく、淡い真珠色の光を放っている。


「この世界には太陽が二つあるんです。足元を見てください。影も二重に重なっている。こんな現象は、私たちの知る世界ではありえないはずです」


「……確かに、その通りだ」


「随分と、あっさり認めるのですね」


「俺は素直な心の持ち主なんだ」


「……他にも、もうひとつ。私たちがここを異世界だと考える理由があります」


「ほう……」


「私たちが所持していた地図。その裏に『神の使者』と名乗る者からのメッセージが書かれていました」


「俺は地図なんか持ってないぞ」


「ポケットからはみ出してるのが、それじゃね?」


 言われるがままに玉座が取り出したそれは、紙ではなく羊皮紙でできた地図だった。


「なんで、こんなのがポケットに……」


「裏を見てください」


 羊皮紙を裏返した瞬間、玉座の顔はみるみる赤く染まり、こめかみに血管が浮かび上がった。

 そこには、力強い筆跡で、たった二文字が記されていた。


『ばか』


「——っ!!」


 玉座は怒りの叫びとともに、地図を砂浜に叩きつけた。一方、三人はきょとんとしている。


「あれ……? どうしてだろう。僕たちの地図には、ちゃんと……」


「見せた方が早いな」


 横澤はため息まじりにそう言うと、自分の地図を差し出した。


 *


「……聞け。深き眠りより覚め、境界の海を越えし、選ばれし使徒たちよ。


 汝らが今、その足を汚している地は、俗世の理を捨て去った異世界の孤島である。嘆くことはない。汝らはこの世界に変革をもたらすべく、天の意志によって掬い上げられた神の子にして、真の英雄の器。すなわち、迷える民の上に立つべくして生まれた覇者なのだ。


 偉大なる神は、愛でるに値する魂にのみ、美しき試練を授ける。神は、乗り越えられる試練しか与えない。眼前に立ちはだかる困難は、汝らが人の上に立つ者へと進化するための尊き糧であり、それを克服し成長した強き姿こそが、我ら神の使いが渇望してやまぬ供物である。


 者どもよ。己の内に眠る神性を信じ、仲間と協力して数々の試練に立ち向かうがよい。孤島という名の揺りかごを抜け出し、海を渡り、選ばれし者のみが許される約束の地『ネザーランド島』へ上陸せよ。


 己を高め、成長せよ。汝らの魂が、いかほどの輝きを放つか。我らは高天より見定めている。脱出の門は、ただ強き意志を持つ使徒にのみ開かれるであろう——」


 *


「……反吐が出るな」


 地図を手放した玉座の低い一言に、三人ははっきりと表情をこわばらせた。






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