2話 ~モスバーガーで頼むもの~
「人が寝ているのをいいことに、無許可で唇を奪おうなどと……極悪非道にもほどがある。可愛い顔をしているからといって、何でも許されると思ったら大間違いだぞ!」
「違うんですよ!」
少年の眉が、きゅっとハの字に下がった。
「見つけた時、ピクリとも動いていなかったので……もしかしたら亡くなっているのかもしれないと思って。だから、呼吸の音を確認したかっただけなんです」
「本当か?」
玉座は、まだ疑わしそうな表情を崩さない。
「本当です」
三人の中で最も小柄で、アイドルグループにいても違和感のない中性的な顔立ちの少年が、玉座の目を真っ直ぐに見つめ、そのまま自己紹介を始めた。
「僕の名前は北方美月。七月十九日生まれの蟹座、O型です。好きな女性のタイプは……比嘉愛未さん。モスバーガーでは大体、海老カツバーガーを頼みます。使っている香水はSHIROです」
「ふむ……どうやら悪い奴ではなさそうだ。無邪気で正直者に見えるな」
「ありがとうございます」
北方は、ほっとしたように笑い、ぺこりと頭を下げた。
「……で、二人の間で今、何があったんだ?」
玉座はそう言いながら、次の少年へ視線を移す。
「お前は何者だ?」
一八〇センチを優に超える長身。外国の血を感じさせる彫りの深い、大人びた顔立ち。肩にかかる髪と青みがかった瞳が、どこか神秘的な雰囲気をまとっている。
「僕は横澤健斗。六月十五日生まれの双子座、AB型です。好きな女性のタイプは椎名林檎さん。あの圧倒的な才能は、同年代の女性からは感じたことがありません。モスバーガーでは、いつもスパイシーチリドッグを注文します。香水はカルバン・クラインのck oneです」
じっくりと横澤を眺めた後、玉座が口を開いた。
「どうやら、こいつも悪い奴ではなさそうだな。俺より身長が高いのは腹立つし、落ち着きすぎているところは鼻につくが……賢そうなところは嫌いじゃない」
「何だこのシステム。自己紹介すると、分かり合えるのか?」
玉座は首をひねりつつ、最後の少年に向き直る。
「お前は何者だ?」
短く逆立てた髪に、吊り上がった鋭い瞳。若々しい活力と、不敵な野性がそのまま外に溢れ出しているようだ。Tシャツから覗くしなやかな筋肉は、豹のような運動能力を予感させる。
「俺は二階裕司。六月八日生まれの双子座、A型だ。モスバーガーに行ったら、期間限定を頼む。見つけた時に喰っとかねえと、すぐ無くなるからな。香水は、ライジングウェーブのフリー・ライトブルー」
「……好きな女性のタイプは?」
「あ? 言うわけねえだろ」
そう言って、二階は睨みつけるように玉座を見返した。
「正直言って、嫌いなタイプだ」
「なんでだよ!」
「俺は、お前みたいなヤンキーが嫌いなんだ。調子に乗ってうるさいし、周りに迷惑をかけることを何とも思わないからな」
「誰がヤンキーだ! 周りに迷惑かける奴は、俺だって嫌いだ。見た目で判断すんなよ!」
「初対面なんだから、見た目で判断するしかないだろう?」
「それは……そうかもしんねえけどさ!」
二階は、野良犬のように低く唸った。
「お前たちのことは、なんとなく分かった。だが……それ以外のことが、さっぱり分からない。誰か説明してくれ」
三人は一度、顔を見合わせる。
やがて、横澤が静かに口を開いた。
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