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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

技のありか

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 へ~、これがAIにお願いした文章ってやつですか。ふむふむ、ある程度学習を積むと、それらしい文章ができちゃうものなんですねえ。

 確かになまじっか、正確さとかで勝負をしたらAIに勝つのは難しいと思います。人間がこれまで時間かけてきた計算を、早く正確に行うために生み出されたもの。それを作った人間に上回られたら、面目丸つぶれなわけでして。

 おそらく文法その他、公式やこうすべきと決まっているような、100%正しい文章を書いて競えといわれたら、さすがの先輩もAI相手には厳しいと思いますよ。いかにAIが表現しきれないでいる部分を突くことができるか……そこがクリエイティブの生き残る道かもしれませんね。


 現代にある機械たちがこうなんです。もし、これらのスペックのままひと昔前に現れたとしたら、それはもう人を超えた神か何かのように表されそうです。

 現代で語り継がれる神業の数々。本当に卓越した技術や才能によるものなのか、あるいはよそからの借りものだったのか……。

 ひとつ、昔話を聞いてみませんか、先輩?



 むかしむかし。

 江戸に幕府が開かれて、数十年後あたりのこと。

 とある川の中州で、ほぼ毎日、釣りに興じている男がいたそうです。魚の釣れる釣れないは関係なく、ただ釣り糸を垂らして、糸や水面がかもす魚の気配を感じ取り、刹那の攻防を味わう……それだけが楽しみだったとか。

 朝早くから始めていましたが、昼近くになっても今日は一匹たりとも、釣り糸へ触れる気配がありません。そんな日もあるかと、中洲の石へ腰かけ続けていた男ですが。


 すぐ背後から、重たい何かが落ちる音がして、男は思わず飛び上がりそうになった。

 振り返ると、そこには大小さまざまな川魚の山ができていたんだ。とっさに空を見上げてみたけれど、晴れ渡る青がそこにあるだけ。

 魚たちはすでにほとんどが動きを止めている。おそらく水からあげられて久しい時間が経っているのだろう、と思われました。

 しかし、男が魚へ気を配っていたのは最初のわずかな間だけ。その魚の山の中から、明らかに魚のものでない一部が飛び出していたんです。


 人の腕、のように思えました。

 しかし、肩口からもがれたと思しきその腕は血を流してはおらず、かわりに鼻をつくほどの臭いをまき散らせる油を、傷口からこぼれさせていたといいます。


 見慣れないシロモノに、男は怖さを覚えますが、それよりも好奇心のほうが勝りました。

 そっと、油を垂らし続ける腕のようなものへ手を伸ばしたそうです。軽く「へ」の字に曲がるその腕らしきものは、男の腕より一回りは太いたくましいものでした。

 が、その屈強そうな太さとは裏腹に、ところどころに太い毛を生やした男の細腕に対し、つるっとしたもので白さも圧倒的に勝っています。


 ――まるで作り物のような……。


 そう男が思ったところで、ふと腕はひとりでに跳ね上がりました。

 ぶつかり、はじかれた男の腕に飛び上がりたくなるような激痛が走ります。これはのちに静電気と思しき現象に出くわしたと解釈されますが、男にそれは分かりません。

 痛がりながら、飛び上がった腕のゆくえを見ると、すでに腕はおのずから川の中へ突っ込んでいたらしいんです。


 そこから、次々とつかみあげてくるのは魚、魚、魚……。

 これまで、こそりとも男の釣り糸を揺らすことなかった水中の魚たちが、あの肩口からしか先がない腕に捕まれると、ぎゅっとわしづかみにされたのち、中洲にある魚たちの山へ重ねられているんです。

 そのわしづかみにされている間、魚たちがその身体から垂れ流し、川の水へとこぼしていくもの。それはあの腕の漏らしているものとよく似た香りが漂ってくるものだったというんです。

 あっけに取られて、釣り人はその流れるような作業を見守るよりありません。魚たちは一匹残らず油をしぼられ、陸に放り投げられたときはもはや虫の息。すでにこと切れてしまったか、動かないものもたくさん。


 川の魚を取りつくすまで、止まらないんじゃないかと釣り人が思い出したところで。

 ふと一匹を投げ捨てた腕が、はたと動きを止めました。川の流れに半分沈みかけたその周囲からあぶくが立ったかと思うと、ザバリと流れをかき分けて立ち上がる者があったのです。

 全裸の男のように思えました。しかし、あるべきもののところに男や女を象徴するものはなく、ただのっぺりとした平面のみがあったといいます。

 釣り人より、二回りは超える巨躯。その左腕は、あの魚をつかみ上げていた腕をにぎり、右腕側へと持っていきます。その男? の右腕は肩から先がありませんでしたが、例の腕がその傷口にぴたりと合います。

 縫合も一切することなく、傷跡も皆無のままつながる右腕。例の男は釣り人を一瞥すらせず、そのまますとんと落ちるように水面へ沈んでいったのです。

 釣り人は焦りました。ここは大人ならば、せいぜい胸がつかる程度で済むほどの深さしかないのです。しかし、例の大男は泳いだ様子も、潜った痕跡も見せずに、そのまま消失してしまったとのことでした。

 それが幻であったわけでないのは、中洲へ放り投げられた魚たちの姿が証であったとか。

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