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それからというもの、甘々スイッチが入った王太子は

止まらない。


皆の前では、あまり表情を変えず、

他の令嬢とは、一定以上距離を取っている。

ツンは健在だ。


しかし、私への態度は、一気に糖度を増した。


「君の瞳は美しいね」


「君と一緒にいられるなんて、

 この国の男の中で一番幸せな男だ」


「早く結婚して、ずっと一緒にいたいな」


ゲームで一度聞いた事のあるセリフだが、

実際に面と向かって、自分に呟かれると、

腰が砕けそうになる。


顔が良く、声優さんのいい声。

もう最高~!


前は2週間に1度お茶をしていたのが、

今は週に2回と頻度も上がった。


その度に、腰に手を当て、抱き寄せられる。


あああ~いい匂い。


私もこの甘々モードにすっかり馴染んでしまい、

すっかり甘えてしまっている。


前世、病院で1人で過ごして、

寂しい思いを何度もしてきた、

その分が、どんどん埋められていくのを感じる。


「悪役令嬢なのに、よろしいのかしら?」


思わず呟いてしまう、


「悪役?誰が?」


「私がですわ」


王太子は首を傾げている。


あれ?今まで結構ひどい性格していたと思うけど?

特に転生前・・・


「例えば?」


「急には思いつきませんが・・・

 そうですわね、リボンが解けていた女子生徒を

 注意した事がありましたわ」


「それで」


「リボンを直して差し上げました」


「ふん」


「悪役でしょう?」


真顔でいう私に、王太子が噴き出す。


「私の婚約者は、可愛い悪役のようだね、

 堅物より、少し悪い所があった方が魅力的だよ」


そう言って、くすくす笑っている。


なぜか控えている、侍従やメイド達もにこにこしている。


「それでは、悪役でも気になさらないの?」


「全然気にならないよ、むしろ、魅力的だよ」


そう言って、手の甲にちゅっとキスをしてくれる。


悪役でもいいなんて、王太子なんて心が広いの?

いちゃいちゃを楽しむゲームだから?


なら、もっといちゃいちゃしていいよね!


いつも、王太子から腰に手を回されたり、

王太子から接触があるばかりなので、


えい!


と王太子にもたれてみる。


王太子は最初は驚いていたようだが、

段々嬉しそうな顔になった。


「甘えてくれているのかい、可愛い猫ちゃん」


そう言って、私の髪を弄ぶ。


慣れない事をして、心臓がうるさい、

でも王太子が嬉しそうなので、まあ良かったと思う。


「大好きですわ」


「私も、君が一番だよ」


そうして、ちゅっと軽く触れるだけのキスをしたのだった。





王太子との関係は良好、

むしろ良すぎて怖いぐらいだ。


今日は土曜日、マナー教室の日だ。


定員は10名、エリザベスも参加したがったが断った、


「どうしてですの?」


と詰め寄られたが、


「中には平民の方も教室に来られますわ、

 そのご令嬢と仲良くできて?」


と言うと。


「平民?そんな者、相手にしたくありませんわ!」


「なので、参加を認めなかったのよ」


「クリスティーナ様は変わられました、

 もうお友達ではいられませんわ」


私はやった!と思い、あえて大きな声で言う。


「エリザベスいえテイラー嬢から、

 絶交宣言をされました、もうテイラー嬢は友人ではありません!」


そう言うと、


顔をしかめて。


「知りませんわよ」


と私から離れて行った、

それから、一緒に行動はしていない。


その代わり、クラスメイトと普通に交流を持つようになって、

公爵令嬢として、遠巻きにされていたのが、

少しづつ打ち解けてきた気がする。


もちろん、次期王妃として、かなり気を使われてはいるが、

それは仕方がない事だろう。





そんな事がありつつ、

最近1人の令嬢が気になり始めた。


リアーナ嬢という、商人の家のご令嬢だ、

平民だが、実家が貴族にも商品を売りたくて、

リアーナ嬢も家の為に、貴族との結婚を希望している。


200万と平民の年収分の授業料を払って、

私の講習を受けているのだ、その姿は真剣そのもので、

上達ぶりは凄かった。


講習が終わった後、リアーナ嬢と2人で話す時間を持つ。


「お時間ありがとう」


「とんでもございません」


リアーナ嬢は緊張しているようだ、

本来、平民が公爵令嬢に話かける事自体不敬に当たる。

(もちろん今は許可をしているけど)


「マナー、ダンス、どれをとっても上達が凄いわ、

 お目当ての男性はいらっしゃるの?」


「いえ・・・」


「どんな方がお好み?」


「とにかく貴族の方!男爵でさえあれば、

 太っていようと、剥げていようと、

 変な性癖があろうと気にしません!」


「?セイヘキって何かしら?」


リアーナ嬢は慌てて、訂正する。


「忘れて下さい!とにかく、貴族の男性なら、

 どんな方でも文句はいいません」


かなりの覚悟のようね。


どんな相手でもいいと言うが、

私としてはやはり幸せにしてくれる人と、

結ばれて欲しい・・・


「リアーナ、特技はあって?」


「特技かどうかは分かりませんが・・・

 家が商人ですので、帳簿づけぐらいならできます、

 後、お客様の受けはいいですし、

 変な客も大抵あしらえます」


うん、対人スキルは高そうね、

それに帳簿付け、ぐらいと言っていたけど、

これはかなりの強みだわ。


「もしよろしければ、私がご紹介しましょうか?」


「よろしいのですか?」


平民が貴族と接点を持つ事はほとんどない、

また、貴族が相手にする事もない、


しかし、間に公爵家が入るとなると話は別だ。


「上手くいくかは貴女の努力次第よ、

 いくらマナーを身につけても、

 貴女自身が魅力がなければ、相手にされないわ、

 まず、平民だからという意識を捨てる事、

 貴族になりたいなら、貴族の意識を持つ事よ」


「はい!」


「ならセッティングするわね」


「よろしくお願い致します!」




こうして、私はお見合いのセッティングをする事になった。


ずっとやってみたかった恋のキューピッド、

セイヘキ?とやらは分からないけど、

私が紹介する以上は、最高の男を当てがってみせるわ!





そうしてお見合いの日、


「こちら、伯爵家のリュカ・ガルクディーロ様、

 リュカ様、こちらがリアーナ嬢です」


男爵でも凄いと思っていたのに、

まさかの伯爵家、

しかも騎士候補で、体も引き締まったイケメン。


リアーナ嬢は完全に固まってしまっている。


私はお互いの趣味や好きな事、

嫌いな事や物など、簡単なプロフィールを紹介した後、

お互いの共通点を上げ、

お互いの結婚に対する利点を上げる。


ガルクディーロ家は歴史ある家だが、

堅実、堅物すぎて、民が困っているとあっては、

借金をしてでも民を助け、財政はカツカツだ。


今は借金こそないものの、マナー教室に参加できる、

リアーナ嬢より貧しいだろう。


リアーナ嬢は、お金こそあるが、身分が欲しい。


お互い利害が一致すると考えたのだ。


しかも、美男美女。


これで惹かれないはずはない。


まだ固まったままのリアーナに耳打ちする。


「貴族の意識よ」


すると、はっとした表情をして、

すらすらと話しはじめた。


ふふふ、上手くいきそうね。


「では、後は二人で、

 庭は好きに散策してもらってかまわないわ、

 公爵家の庭には珍しい花もあるの、ぜひどうぞ」


そう言い残して去っていく。


後は、キューピッドの矢が刺さりますように。






それからというもの、話は早かった。


あっと言う間に両親への紹介、

結婚、妊娠までしてしまった。


「これも全てクリスティーナ様のおかげですわ」


伯爵家の後ろ盾を得て、

ますます商店は大きくなり。


伯爵家も商人の知識を得て、財政の運営の方法が、

一気に上昇し、民の人気が上がった。


「リアーナの努力の成果よ、

 貴女が真剣でなければ、手を貸さなかったわ」


「それでも、こんな幸運は普通ありえません、

 次期王妃となられる方ならのこと、

 本当に感謝しております」


そして、この事は社交界で大きな話題となり、

社交界でクリスティーナを悪くいう者は

ほとんどいなくなった。

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