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無事、商業ギルドに口座を作れた私は、
お金を得る方法を考える。
ま、一番早いのはいらない物を売る事ね。
なんと、私の部屋には、
衣裳部屋なる物があって、ずらりとドレスが並んでいる。
それらの衣装に合わせて宝石もあるので、
相当な量だ。
ふふふ、これだけ売れば、だいぶお金になりそうね。
そう思って、衣裳部屋を物色する。
しばらくして・・・
無理。
私は白旗を上げた。
まあ、サイズが小さいのはいい、まず着ない。
それは別とはして、公爵令嬢となれば、
様々なパーティに呼ばれたりする、
その際に同じ服ばかり着ていけない。
流行もクリスティーナの知識があるとは言え、
デザイナーに任せていた部分が多く、分からない。
衣裳部屋でドレスとにらめっこしていると、
専属メイドのメリーが話しかけてきた。
「お嬢様、どうなされたのですか?」
「新しくドレスを買いたいの、
その為に入れるスペースを作りたいのだけど、
どれを売ったらいいのか分からないのよ」
「そんな事、私めにお任せ下さい」
そうね、任せた方が早そう。
私は丸投げを決意する。
「できるだけ沢山売りたいの、
もう着ないと思う物は全部出して頂戴、
あと、宝石もね」
「かしこまりました」
そうして、メリーが衣裳部屋から、
私が指定したペースに衣装を持ってきてくれると、
かなりの量だった。
衣裳部屋のドレスの3分の2は出ているだろうか。
宝石もずらりと並び、満足する。
「これらを売ったらいくらになりそう?」
「そうですね4000万リラぐらいでしょうか」
おお!軍資金としてはかなりの金額。
では、さっそく。
「商人を呼んで頂戴」
「かしこまりました」
その2時間後、商人がやってきた。
商業ギルドのランスが引き締まった体だったのに対し、
肉食べてま~す、って感じのお腹が出っ張ったオジサンだ。
当然、メリーが控えている。
「今日は、商品を売って頂けると」
「ええ、お願い」
商人が売りたい商品を見ているのを、
紅茶を飲んで、じっくりと待つ。
「では、5000万リラでいかがでしょう」
あら、メリーの見立てより多いわ、
さすが公爵家御用達の商人、
見た目に反してあくどい事はしないのね。
しかし、私は更にたたみかける。
「あら、そんなに安いの?
私安物を買わされていたのかしら?
この次のドレスは他の商店を頼もうかしら」
あえて、悪女丸出しで、言ってみる。
いかにも高そうな宝石を弄ぶという、リアクション付きだ。
すると、あせって。
「い・・・いえ、6000万リラに致します!」
と手もみして答えるので、
まだ不満そうな演技を続けながら了承する。
「仕方ないわね、それで売るわ、お金はこの口座へ」
「へ?いつもの口座ではなくてですか?」
「ええ、この口座よ、よろしくね」
「かしこまりました」
そう言って、契約書に私の口座番号を書いていく。
ふふふ・・・これで私の口座に振り込まれるのは確実。
6000万リラか。
前世、働いた事もない私からすると途方もないお金だし、
平民の1年の年収が200万だと聞いているので、
ひとまずはなんとかなると思っていいのかな。
契約書を受け取り、
表情は硬いままで、内心感謝して、
「今度のパーティのドレスの生地お任せするわ、
公爵家に相応しい、最高の物を持って来てちょうだい」
「もちろん、最上級の物をご用意します」
私のセリフに満足したようで、
商人は笑顔で足取り軽く帰っていった。
とりあえず、家を追い出されても、
数十年何とかなりそうなお金は手にしたけど、
できる事なら、もっとお金を得てみたい。
というか、働いてみたい。
前世、ろくに学校もいけず、
仕事なんて、夢のまた夢。
自分で働いてお金を手にして、
雑誌に載っている、ちょっといいお店でランチして、
キャリアウーマンを気取ってみたかった。
ここ数日考えていた事だ、
今私ができる事で、周りが違和感を抱かない事。
それは!つまり!!!
マナー教室!
王妃教育で、一流のマナーを身に付けいている、
それを活かして、講師をするのだ。
上手くいけば、取り巻き以外の令嬢とも交流できるしね。
さっそく、プランを書いていく。
学園があるので、授業は土曜だけ、
期間もあんまり長いと続かない生徒もいるかもしれないので、
半年間だけ。
あんまり人数が多いと、フォローしきれないので、
最初は10人ぐらいがいいかな。
費用は200万とお高く。
これが、逆に価値を高めてくれるはず。
ターゲットはマナーを高め、良縁を得たい令嬢。
恋のキューピットもしてみたかったのよ~
恋バナしてみたい!
「楽しそうだね」
ディが話しかけてくる。
だらんと寝そべって、だらしのない恰好だ。
「楽しいわ」
「断罪されるって聞いたのに、
楽しいって変わっているね」
「そうかもしれないわね」
私はふふふと微笑む。
体のどこも痛くない、
点滴も注射もない、
それだけで、どれだけ恵まれているか、
多分経験した者でないと分からないのだろう。
「私、生きているの」
「そうだね」
「自由なの」
「そうなの?」
「ええ、心がね」
「ふううん、ま、クリスティーナが幸せなら、
僕も幸せだよ。
能力を解放して、めいっぱい暴れられれば、
もっと幸せだけど」
「駄目です」
そういうと、わざとらしく耳と尻尾をだらんと下げて、
ふてくされた格好をする。
それを見て、優しくディをなでてあげて、
ご機嫌を取る。
精霊は食事をしない、
私の魔力で動いているからだ。
私はあえて、少し多い目に魔力を流す。
「ほら、ふさふさよ」
ちょっとご機嫌が直ったディは、
尻尾をめんどうくさそうに振るのだった。