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悪役令嬢ですが(ヒロインが王太子以外のルートに行ったので)王妃候補のまま溺愛ルートに入りました  作者: あいら


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「やっぱり来ましたわね」


私の手元にはキャサリンからの手紙がある。


中を開けて見ると、今夜の夜中、

学園の裏手にある小屋に来るようにとの事だった。


1人で来ないと、毒を川に流すと書かれていた。


う~ん。


このゲーム、恋愛甘アマゲームで、

こんな事件みたいな事は起きないのだけれど・・・


ゲームとは無関係で起こっているという事ね、

つまり先は全然読めない。


「うわ~明らかな脅迫、で行くの?」


ディが手紙を覗き込んで言ってくる。


「私が囮になるのが一番手っ取り早いかな~」


私は余裕で答える。


「1人で来いとは言われているけど、

 誰にも言うなとは書いてないので、

 とりあえずヴィルジールには連絡してと」


「うわあ~いいのかなぁ」


「どちらにしても、王宮の護衛はつくわよ、

 まあ、キャサリンに見つからないように、

 隠れていてはもらうけど」


「どっちが悪なんだか」


「元々悪役令嬢だからね」


私はメリーを呼んで、両親の耳には入らないよう、

準備をする。


夜中、指定された小屋へ向かう。


木組みの物置だ。


よくこんな場所を見つけたなと思う。


「キャサリン!来たわよ!」


私は大きな声で叫ぶ。


一応ロウソクで手元は明るいが、

全体的には照らせず、少し不気味が悪い。


しばらく中に入った頃、ガチャン!と音がする。


「あ、入口塞がれたみたいだね」


ディがのんびりと言う。


「閉じ込めらたって事ね、想定内だわ」


そうして、周りを見渡していると、

パチパチと音がして、煙が充満してきた。


「え?これって火がついてない?」


「火みたいだね、早く出た方が良さそうだ」


私は姿勢を低くして、煙を吸わないようにする。


殿下には連絡してある、

護衛もいる。


火が付いたのは、明らかだろう、

なんだかの対策がなされると思う。


しかし、しばらく経っても、火は消えない。


「おかしいわね」


さすがに私も焦りの気持ちが出て来た。


王宮の護衛には精霊使いもいるはず、

火なんてすぐに消し止められそうだけど・・・


バチバチと音が大きくなってくる。


「ディこれってヤバイいんじゃ」


ディは私の傍によって、丸い球体を作ってくれる。


私はその球体にすっぽり覆われ、

煙の苦しさから解放された。


「ここまで火が回っているという事は、

 キャサリンだけでなく、手を貸した者がいると

 考えた方がよさそうだね。

 護衛がいる事は向こうも分かっていた事だし、

 対策してたんだろう」


ディが冷静に分析する。


もし、戦闘が行われているなら、

何かしら大きな音がするはずだ、

それもないとなると、動けなくなる毒を使うとか、

何かあったと考えた方がいいかもしれない。


「自力で逃げる事を考えた方が良さそうね」


「そうだね、入口は鍵をかけたみたいだけど、

 右の奥、もろくなっている所がある、

 あそこなら、水で穴が開けれそう」


「では、そこから出ましょうか」


「うーん、でももろい所に力を加えると、

 建物自体が崩れるかも・・・」


「分かったわ、私が能力を調整するわ」


「うん、よろしく」


ディの丸い球体の中にいても、熱さを感じるようになってきた、

この球体の中にいなければ、

もう息も苦しいぐらいだったろう。


「あまり迷っている時間はなさそうね」


煙だけだった建物に、明らかに火が見えるようになってきた。


このままだと、崩れるのも時間の問題だ。


轟轟と大きな音がする。


「やるわよ!ディ!!!」


私はディの能力を調整する、


ディの口から水が吐き出され。


ドン!と大きな音がする。


そして、周りが崩れそうになるのを見て、

あわててできた穴に飛び込む。


ズサーッ!!!


建物の外に出ると、一気に涼しい風を感じた。


そして、その数秒後、


ゴオオオオオオ!ズドン!!!!


という激しい音がして、

建物の3分の1が崩壊した。


「かなり危なかったわね」


恋愛ゆるゆるゲームだと思って、

油断しすぎたかもしれない。


建物から離れ、本来いるはずの護衛などを探す。


1人の倒れている男性を見つけ、

あわてて駆け寄る。


服装からしても護衛だろう。


様子を見ると、怪我などはなく、眠っているだけのようだ。


毒ではないが、何か薬を使ったのだろう、

命に別状がない事を知って安心する。


「どうして生きているのよ!」


キャサリンと思われる女性を見つけ、

ぎょっとする。


髪は短くなり、修道女の服を着ているものの、

汚れて、くたびれ果てている。


「貴女のせいで、私は全部失った!

 貴女も全て失ったらいい!!!」


「うわ~凄い逆恨み」


ディが冷静に言う。


確かに、精霊の力のテストの時の実力なら、

確実に死んでいただろう。

ディの力を隠していて、本当に良かったと思う。


さて、仲間がいるかと思ったが、

それらしき人は見えない、キャサリン1人だ。


また、キャサリンがどんな毒を持っているのか、

護衛をどうやって眠らせたのか分からないうちは、

下手には動けない。


そう考えていると、ディが後ろに水で攻撃した。


「前に視線を集め、裏から攻撃する、

 まあまあ上手い方法だね」


それが合図だったかのように、

数人の男が現れた。


う~ん、結構ピンチ?


追い詰められている感じを感じつつも、

冷静でいられるのはディの存在のおかげだ。


「一気にやっちゃっていい?」


ディが言う。


私はもう迷っている場合ではないと、

全リミットを外す。


「あんなにやりたがっていた全力よ、

 思う存分にやって、

 ただし、殺さないでね」


「分かったよ」


ディが疾走する。


あっと言う間に、男達をばたばたと倒してしまった。


あら、ディって思っていたより、

かなり凄かったのね。


さて、後はキャサリン。


そう思って彼女を見ると、

風がぶわっと彼女を襲う。


ヴィルジール様!


ヴィルジールの精霊は風を操る。

キャサリンは自分で眠り薬を嗅いでしまったらしく、

その場にバタンと倒れた。


「一件落着かな」


「何て無茶を!」


ヴィルジールは私に駆け寄り、ぎゅっと抱きしめてくれる。


「殿下!大変です!

 火が消せません!何か細工がされているようです!

 このままだと、学園全体が焼け落ちます」


ヴィルジールに付いて来た、水の精霊を操る護衛が、

大きな声で叫ぶ。


「私が何とか致しますわ」


「クリスティーナ?」


「ディ、本当に本気よ」


この火を消すのは、一気に消してしまう必要がある。


「皆さん、1、2の3で水をかけて下さい!」


水の精霊を持つ護衛に声をかける。


「1、2のサン!!!」


ディが小屋の上に飛び上がり、

土砂降りの雨かと思わせる水を出す。


「え?」と護衛の人達からも驚きの声が上がる。


ディの名前の由来はウンディーネから、

あまり知られてないけど、

水の大精霊であるウンディーネの子供で、

桁外れの力をもっているのだ。


それが、転生後2倍になっている。


王宮の護衛の人も優秀だろうが、

それを遥に超える力なのだ。


「クリスティーナ様っていったい・・・」


護衛の1人がポツンと言う。


その言葉に苦笑して、何事もなかったかのように言う。


「小屋は完全に焼けて、崩れてしまったわね、

 あまり騒ぎにはしたくないわ、

 テイラー家との取引もあると思うし、

 上手く収めて頂戴」


ヴィルジール付きの護衛は丁寧に頭を下げる。







結局、キャサリンと、

キャサリンを利用して、私を殺そうとした、

他国のスパイとの行動だと分かった。


私があまりにも民に人気が出て、

吟遊詩人が他国にも私の凄さを伝え、

他国の王族が、自国の民が不満を持たないよう、

押さえつけようとしたらしかった。


それらは、すべて王様に処分を任せる。


ヴィルジールから聞いた所、

火がなかなか消せなかった理由が分かった。

他国のスパイが使う、特殊なロウが使われていたのだ。


「他国も必死ですね」


「自国では、もうクリスティーナを認めてない者はいない、

 なので油断してしまった。

 これは私の落ち度だ、すまない」


「もう謝らないで下さい、

 罠だと分かって、囮になったのは私なのですから」


「王宮で報告を受けた時は、心臓が止まるかと思った、

 その後、さらに驚きの事があった訳だが・・・

 私の寿命を縮めるような事はもうしないでくれ」


「さすがに、もうこんな事はないと思いまわ」


自信がある訳ではないか、

ここははっきりと断言しておく。


「もう王宮で暮らさないか?」


「まだ学生ですわよ?」


「一瞬たりとも、目を離したくない」


「王と、お父さまと話して下さい、

 了承が取れれば、どこへでも行きます」


「王太子としての、交渉能力の見せ場だな」


「しかし・・・父ですが・・・・」


「ん?」


「あまり良くない事を考えているかもしれないのです、

 あまり権力は持たせて欲しくないですわ」


ごにょごにょと言う。


「ああ、君の父上の事は良く知っている、

 他にも貴族と名ばかりで官吏になって

 困っている人もいてね、

 君の父上の下にそうゆう人ばかりを集めようと思う、

 公爵に不要と言われれば、簡単に辞めさせられるだろうし、

 公爵も仕事ができない部下を上手く使えず、

 評価を下げれる。適材適所ってね」


「それを聞いて安心しました」


さすが、ヴィルジール、

全てお見通しで対策も万全のようだ。


もう悩む事は何もない。


「不束者ですが、よろしくお願い致します」


「フツツカモノ?」


「一生、一緒にいさせて下さいって事です」


「ああ、一生一緒だ」


ヴィルジールと共に微笑んだ。







「大丈夫でしたか!クリスティーナ様!」


今日はレオナを自宅に招いて、アフタヌーンティーを

している。


「それにしても、公爵家のお菓子はさすがですね!

 カフェで食べるより美味しいです!」


もぐもぐとお菓子をほおばるレオナ。


机の上では、レオナの精霊であるリスのルノアも、

一緒にお菓子をほおばっている。


契約者と精霊。


同じような食べっぷりに、見ていて思わず笑みが出る。


胸元にはピンクの花のネックレスが輝いている。


「リアン・ロッシーニ男爵とは好調のようね」


「はい!学園を卒業したら結婚します!」


ゲーム通り、無事に攻略できそうで、ほっとする。


「リアンさん、紅茶の研究をしていて、

 いろんな土地の土で、同じ紅茶の葉でも効能が

 違う事が分かってきたのですが、


 ルノアの力で、血圧を下げれたり、

 妊婦に良かったり、冷えを直したり、

 かなり効能を特定できるようになったんです!」


「そう、それは凄いわね」


「薬程の強い効果はありませんが、

 毎日飲む物ですから、

 体質改善にはかなり効果があると思われます」


「研究が役立っているのね、嬉しいわ」


「はい!私も嬉しいです、

 ルノアのおかげで、私も力になれて、

 胸をはって結婚できます」


「その前にお揃いの指輪を買わないとね」


「それは、クリスティーナ様も同じです、

 そろそろ殿下から贈られるのでは?」


「どうかしらね」


そういいながら、もぐもぐお菓子を食べるレオナを見ていた。





王太子の交渉能力の高さを示すかのように、

事件からしばらくして、王宮で暮らす事になった。


父はご機嫌だが、しばらく激怒の時が過ぎ、

撃沈するハメになるのはもう少し後の事となる。


「これからよろしくお願いいたします」


「来てくれてありがとう」


額にちゅっとキスをされる。


「それでこれを」


侍従が小さな箱を持ってきた。


「もう、結婚は確定だが、

 ちゃんとした証を渡しておきたくてね」


開けられた小さな箱には、

赤い大きな石の指輪が入っていた。


ヴィルジールは真剣な顔でいう。


「私と結婚して下さい」


「はい」


そして、私の左の薬指に指輪はすっぽりと収まった。


頬に涙が伝う。


「愛しているよ」


「私の方が愛してます」


「ふふふ、また言い合いになるね」


そう言って、ヴィルジールはそっと私の唇にキスをした。

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おうえんXなう
ハッピーエンドありがとうございます!
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