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第2話:新たな嵐の兆し

ローゼンタール公爵邸に響く足音。

ルシア・クロフォードは、重く沈んだ屋敷の雰囲気を感じながら廊下を歩いていた。婚約破棄の知らせが王宮から届けられ、公爵家の使用人たちの間でも、動揺と不安が広がっている。


「お嬢様のところに?」


召使いの一人がルシアに声をかける。ルシアは静かに頷いた。


「ええ。こんな時だからこそ、私は彼女のそばにいるべきです」


扉の前に立つと、一呼吸置いてから軽くノックする。


「セシリア様、失礼いたします」


中に入ると、そこには変わらず窓辺に立つセシリアの姿があった。昨日からほとんど動いていないのではないかとさえ思える。


「……ルーシー?」


「お身体は大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。もう泣いている暇もないわ」


セシリアは微笑むが、その瞳は冷たい炎を宿していた。怒り、悔しさ、そして決して折れない誇り——。


「公爵家に対する圧力が、既に始まっているようです」


ルシアの言葉に、セシリアは静かにワイングラスを置く。


「早いわね。まるで、すべてが計画されたかのよう」


「実際、その可能性はあります。王宮の派閥の動きが加速しています。おそらく、アレクシス殿下の背後で誰かが糸を引いている」


「ルーシー、あなたの見解は?」


「第一王子派が単独で動いたとは考えにくいです。貴族派の一部、もしくは商人派も関与している可能性があります」


「商人派……」


セシリアはわずかに目を細める。


「ヴィンセント・ベルトラムが関与していると?」


「彼の動きはまだはっきりしませんが、静かすぎます。これは、何かを仕掛けている前触れかもしれません」


セシリアは沈思しながら、軽く首を振った。


「私はこのまま終わるつもりはない。王宮に再び関与する方法を探らなければ」


「ですが、王宮内は今や敵だらけです。少しでも誤った動きをすれば……」


「ええ、わかっている。でも私は、ただの“敗北者”にはならないわ」


ルシアは深く息をつき、静かに膝をついた。


「では、どのように動きましょうか?」


「まずは情報を集めることが先決ね。王宮の状況、派閥の動き、そして……ユリウス殿下の立場」


ルシアはわずかに眉をひそめた。


「第二王子殿下は、依然として中立の立場を維持されていますが……」


「彼が“真の中立”とは限らないわ」


セシリアの唇に、冷たい微笑が浮かぶ。


「ええ。彼は“どちらにもつかない”のではなく、“どちらにもつける”のかもしれません」


王宮では、新たな嵐の兆しが漂い始めていた。

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