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第1話:婚約破棄とルシアの誓い

ガルヴァーノ王国の宮廷に響く噂話の中心には、あるひとつの事件があった。


「セシリア・ローゼンタール公爵令嬢の婚約破棄」


王宮で「冷徹な悪役令嬢」と呼ばれながらも、第一王子アレクシスの婚約者としての責務を果たしてきた彼女。しかし、その努力は報われず、王子は“聖女”エリザベスを選び、彼女を捨てた。


ルシア・クロフォードは静かに息を吐きながら、ローゼンタール公爵邸の廊下を進んでいた。彼女は公爵家に仕える近侍であり、幼少期からセシリアに仕えている。今日の婚約破棄の場に彼女は同行しなかったが、王宮に広がる噂と、公爵邸の沈黙がすべてを物語っていた。


応接間の扉を叩く。


「セシリア様、入ってもよろしいでしょうか?」


「……ルーシー?」


中から聞こえた声は、普段の冷静なものではなく、どこか空虚な響きを持っていた。ルシアは静かに扉を開き、部屋に足を踏み入れた。


そこには、ワイングラスを傾けながら窓辺に佇むセシリアの姿があった。燃えるような金髪と青い瞳、整った顔立ちは変わらないが、普段の自信に満ちた雰囲気はどこか翳っていた。


「セシー……」


ルシアがそっと名を呼ぶと、セシリアは肩を揺らし、微笑む。


「“悪役令嬢”に相応しい結末だと思わない?」


「そんなことは……!」


「いいのよ、ルーシー。私の立場がどう変わろうと、私は私。……ただ、一つだけ言えるのは、私はこのままでは終わらないということよ」


その言葉には、冷たくも鋭い決意が込められていた。ルシアは彼女を見つめ、静かに膝をつく。


「セシリア様、私はこれからもあなたに仕えます。どんな状況になろうとも、私はあなたのそばにいます」


「ルーシー……あなたまで私を見捨てたらどうしようかと思っていたわ」


セシリアは少しだけ口元を緩めると、ルシアの手を取った。


「ありがとう。……あなたがいれば、私はまだ戦える」


ルシアは彼女の手をしっかりと握り返し、心に誓った。


(この方の未来を、私が守る。)


彼女の忠誠と誓いが、ここから始まる。



---


その頃、王宮の奥深くでは──。


「……事は順調に進んでいるようですね」


薄暗い書斎で、第二王子ユリウス・フォン・ガルヴァーノは静かに呟いた。


机上に広げられた貴族社会の勢力図を眺めながら、彼は淡々とした口調で続ける。


「セシリア・ローゼンタール……君がどのように動くか、興味深いね」


彼の声には、何かを見定めるような冷静さが滲んでいた。そして、手元のペンを軽く回しながら、書斎の奥へと視線を向ける。


「さあ、ここからが本番だ」


そして、静かに闇へと溶け込んでいった──。

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