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第45話 レイモンド視点 腹黒の兄

「はあ、何寝ぼけたこと言ってるんだ! 魔獣討伐には何週間もかかるんだぞ、今アンジェラの側を離れるわけにいかない」

 今回の討伐では暗殺者も多く送り込まれるだろうから、それなりに味方を連れていく予定だし、そうなれば城でのアンジェラの警備も手薄になる。


「魔獣討伐はドラゴンに任せれば3日で十分だろ、レイモンドが暗殺ギルドを炙り出して一網打尽にしてくれればやっとあの人の尻尾が掴めるし」

「本気か?」

「うん、色々根回しも済んできたしドラゴンまで手駒にできる今、一気に方をつけるチャンスだ」

 アスライはとびきりの王子様スマイルで笑った。

 こいつがこの笑顔をしているときは腹黒いことを考えているときだとイアンが教えてくれた。

 アカデミー時代は秀才と呼ばれていた人物で、小さいときは優しいお兄さん的存在だったが、アスライの補佐官をやっているだけありこちらもかなりの腹黒い男である。

 腹黒コンビなんてある意味最強だよな。


「レイモンドが婚約したせいで私にも真実の愛を探せって煩く言う様になって、そろそろ潮時かなと思っていたんだ」


 とても実の母親を失脚させようとしてる会話には思えないほど軽い口調でアスライは頬杖をつきながら呟く。


 アスライにとってライラはもうずっと昔から家族の括りには入っていなかった。

 まあ、暗殺ギルドを牛耳っている王妃なんて前代未聞だからな。


「もしも、ドラゴンが裏切ったら?」

 半分諦めて聞いてみる。

 ドラゴンが人間のために何かしたなんてことは聞いたことがないし、俺たちの許可を得なくてもここに居座る実力は持っているはずである。

 ララが同意するかも疑問だし。


「彼は裏切らないよ。私はララが欲しかったものを知っているからね。提案を飲んでくれたらそれを教えてあげよう」

「アスライ! 裏切るつもりニャ!」

 ララが口いっぱいにマカロンを頬張りながら尻尾でアスライの背中を叩く。


「裏切りではないよ。自分の利益を優先させただけだ。君だって君の利益を優先させただけだろ」

「ララは最終的にはアンジェラの味方ニャ」

「そうか。私も最後はレイモンドの味方だ」

 恥ずかしげもなくサラリと口にしたアスライに俺はため息をついた。

 なぜ、アスライが俺の味方になってくれるのかわからない。

 イアンは気まぐれだから警戒しろと言うが、気まぐれじゃないことはわかっている。


「わかった、魔獣討伐でもなんでも行ってくるが、アンジェラは本当にあと1ヶ月も目覚めないのか?」

 コートニーの魔力はかなり上がったはずだ、それなのに浄化に時間がかかりすぎる。


「今のペースなら仕方ないニャ。そもそもレイモンドのせいニャ」

「は? なんでコートニーの魔力が足りないのが俺のせいなんだ?」

「本当はレイモンドの持っている本はコートニーのものになる筈だったニャ」

「何だと! 何でそれをもっと早く言わない。じゃあ返せばコートニーはすぐ浄化ができるのか?」

「もう遅いニャ。本の魔力はレイモンドが受けとってしまったニャ」

 なんてことだ!

 アンジェラを助けるつもりが……。


「早く、ハッピーエンドになってくれたら。本はララの所に戻ってくるニャ」

 簡単に言ってくれるが、俺だって努力している。

 このところ邪魔がいっぱい入ってなかなかアンジェラにキュンをあげられていない。

 そもそも、アンジェラはあの約束を思い出してもいないのに。




「あの本がこんなに面白いことになるとは思わなかったな」

 ため息をつく俺の横で、アスライが思い出したように呟いた。

 そういえばことの発端はこいつだった気がする。


 まさか、初めからこうなることを知っていたのか?


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