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第32話 王妃様とのお茶会

「ア、アンジェラ様。わ、私おかしいところはないでしょうか」

 最近やっと滑らかに喋れるようになったのに、今日は緊張のせいか会った頃に戻ってしまっている。


 しかも、流行遅れの派手な飾りのついたドレスを着ておりとてもじゃないが最高クラスのお茶会には出席させられない。


 今までの作法の授業では奉仕着か祭服だった。

 聖女だからかと思ってたけれど、これは衣装部屋をチェックする必要がありそうだ。


 とにかく今のこの格好で第1王妃ライラ様のお茶会に行くわけにはいかない。

 笑い者どころか、出入り禁止になるほどに野暮ったいし、それを注意しなかった私も付き添い失格になってしまう。


 本当に、迂闊だった。

 仮にもヒロインなんだから見た目だけは誰よりも綺麗だって思うでしょ。


「す、すみません。じ、実家は王都のような仕立て屋さんがなくて」

 私が頭を抱えているのが自分のせいだと思ったのか、コートニーはオドオドと頭を下げた。


「違うの、あなたに怒っているんじゃないわ。自分自身の迂闊さを反省しているの」


 そうだわ、これってイベントじゃない。

 ボロボロの奉仕着しか持ってない、コートニーを見かねてアスライがドレスをプレゼントする。

 でもすでに、コートニーが王宮に来て2ヶ月近いのに、いったい何してるのよアスライは。

 いくらイベント待ちでも、この服で行かせるわけにはいかないので、王宮の自室に何か着れそうなものがないか物色しに行くことにする。



「コートニー、私のドレスを持って来るからちょっと待っていて……いや、やっぱり一緒に行きましょう」

 本当は身体にあったものを一緒に仕立てに行った方がいいのだけれど、やっぱりアスライのイベントなので横取りするのはまずい。イベントまで私の着れそうなものを譲るくらいなら大丈夫だろう。





「すごい……私の部屋も素敵だと思ったけど、アンジェラ様のお部屋は桁違いですね。さすが公爵家です」

 国王が私のために用意してくれた部屋は貴賓室のすぐそばだった。

 調度品も一流のもので揃えられている。

 本当なら、聖女もこれくらいのお部屋をもらってもいいと思うけど、なぜか待遇が一向に良くならない。

 私の呪いを解呪したら、早急にこっちも何とかしなきゃね。


「さあ、こっちよ」

 衣装部屋に並んだドレスは壮観だった。

 ずらりと、100着はかかっている。


「やっぱり可愛い系がいいわよね」

 あれこれ選んで着てもらったが、微妙にお胸が小さい。

 ヒロイン胸デカ過ぎ。


「す、すいません」

「謝ることないわ。お胸が大きいのは悪いことじゃないもの」

「で、でも、や、やっぱり自分のドレスを着るしかないですね」

「あら、大丈夫よ。私を誰だと思っているの?」

 コスプレオタクよ。

 ドレスのコスプレだって何着も自分で作っているんだから。バストアップくらいたいしたことじゃない。


「ほら、このキャミソールドレスの後ろ。リボンを絞るための当て布をそのまま生かして広げましょう。アレンジすればすぐよ」

 前もダーツをほどいて、ほどいた箇所が見えないように上に裾のレースを移植しましょう。


「せ、せっかくのドレスを、わ、私のために無駄にしちゃうのでは……」

「任せてちょうだい。あなたは私がお直ししてる間にメイドに髪とコルセットをしてもらって」

 ふふふ、こんなところで、コス衣装の技が生きるとは思わなかった。





 さすがヒロイン、ピンクのヒラヒラシフォンのドレスがよく似合う。

 まるで桜の妖精みたいよ。


 姿見の前で固まっているヒロインに、小粒だが可愛らいしルビーのネックレスをつけてあげる。

「こ、こんな高価なもの借りられません」

「いいのよ。私には可愛すぎるから」

 何たって、悪役令嬢だもの。


「で、でも……」

「さあ、ライラ様のお茶会に遅れたらまずいわ。行きましょう」




 ✳︎


 ライラ様のお茶会は一際贅沢な作りのミロワール宮殿で開かれる。歴代王が一番寵愛する妃を住まわせることでも有名で、ライラ様も嫁いできて3年で移り住んでいる。

 それが本当に王の寵愛からなのかは疑わしいが。


 とにかくそんな特別の宮殿では少しの粗相も許されない。

 私は内心ヒヤヒヤしながらコートニーを見守った。


 大丈夫よね。

 何たってヒロインだもの。

 多少の失敗や吃音だって問題ないはず……よね。




 ミノワール宮殿は前庭に大理石を引き詰め、その上に薄く水を張り、ステンドグラスで飾られた宮殿が水面に映し出される演出がされた美しいし佇まいだった。

 水鏡を囲む回廊を侍女に案内され歩いていくと、水面に競り出たステージにテーブルにが用意されている。

 私たちに気づくとライラ様がにこやかに出迎えてくれた。


「まあ、噂以上にお美しいお二人ね」

 ボンキュボンの艶かしい肉体のライラ様からしたら、私たちなど赤子同然に思える。


 なんだかヘビの巣に放り込まれたうさぎの気分だ。


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