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セックス学園

作者: 田島圭司

「さあ、今大会注目の右腕、望月擁する強豪、伝説学園と、セックス学園の試合を甲子園からお届けします。何といっても、百五十キロ越えのストレートが魅力の伝説学園の投手です。そして、セックス学園は創部から一度も甲子園を逃したことがないことで知られており、強豪校に迫る勢いを見せています……」

 ゲームが始まった。真夏の炎天下の中、選手たちがフィールドに散らばっていく。投球練習を行い、そして試合開始。サイレンが鳴り響いている間に、打球が飛び、快音が聞かれた。

「大きい、大きい、入るか、入るか、入ったホームラン。いきなりの先制弾はセックス学園の一番、円城寺大我です」

 ゲームは一方的だった。セックス学園は打ちまくり、満塁からホームラン、満塁そしてホームランの繰り返しだった。

「セックス学園の九番が登場です」

 セックス学園の九番、綾小路太郎はフルスイングを敢行する。打球は大きく、はるか虚空を舞って、バックスクリーンに突き刺さった。伝説学園のエース、望月は火の車で、ライトの守備に一旦は付くも、二番手投手が打たれ、再登板を余儀なくされた後、七回までに十九安打を浴び、十七失点する。

「セックス学園の選手はみんな美男子ですね。これはすごいですねえ」解説者がそう話すと、アナウンサーは「そうですね。土地柄でしょうか」と言った。

 尚も試合は一方的だった。

「大きい、大きい、入るか、五打席連続ホームランか」

 セックス学園は二十五対〇で勝利し、一回戦を突破した。

 セックス学園の選手たちが校歌を歌う。女子生徒が、笑って一緒に歌っている。そして、選手たちがアルプススタンドに向かい、礼をする。盛り上がりは最高潮だった。

 次の試合の相手は、最強学園だった。前の試合で大勝したチームであった。超攻撃野球を実践し、県内では十年以上的な死で知られる強豪校である。打撃音が聞かれる中、試合が進んでいく。歓声が響き、誰もが展開に驚かされた。

「十四打数十一安打をここまで売っている、今宮」

 今宮がフルスイングする。打球が飛ぶ、飛ぶ。そして、五回が終わった。

「三塁側、セックス学園のアルプスは、沸きに沸いています。というのも、セックス学園の一番のモテ男、今日も好投を続けるエースの田上沢保君のお父さんである、元大学野球のスターが登場したからです。と言いますのも、この方は何と、大学ナンバーワンプレーヤーだったんですね。以上、セックス学園の三塁側でした」

 セックス学園のエース、田上沢は今大会二度目のノーヒットノーランを達成した。打線は十八安四ホーマー十五得点と打ちまくり、十五対〇で快勝した。

 三回戦の相手は、今大会躍進を遂げた絶対的能力高校だった。エース岸和田は今大会のナンバーワン左腕の一人とされるだけでなく、四番バッターの森田は高校通算八十五本の本塁打を放っていた。誰しも、セックス学園がここで敗退するものと予想した。

 翌日の新聞では、セックス学園の猛打が爆発した記事が掲載されていた。セックス学園は二十四本のヒットを放ち、二十二打点を挙げていた。試合は二十三対〇だった。記事の見出しは「セックス学園の先発全員打点」というものだった。

 準々決勝の相手は、前年度四強の大優勝義務高校。セックス学園は苦戦が予想された。

 しかし、大方の予想は外れた。均衡を破ったのは、セックス学園の四番、大田原浩三だった。スタンドに詰めかけた観衆が見たものは、立ち尽くす大優勝義務学園のキャッチャーである、富樫の姿だった。試合は、四本のホームランが飛び出した、セックス学園の打線が決めた。十七安打十四得点の猛攻で、相手の攻撃を無失点に抑えた。普段はライトの守備につく軽井沢夏樹は、初回にややボールが上ずったものの、二回以降立ち直って、相手打線を完封した。

 準決勝の相手は、スペシャル大学附属高校だった。大海ナンバーワンの呼び声が高い、超高校級スラッガーがいることで知られていた。前の試合も、打ち合いを制している。高校通算百本に、この夏にも届こうというバッターだった。しかしここでも、本来はセンターの守備に付く、木村沢狩野が相手を〇点に抑える。初回の猛攻が効いて、十三対〇の圧勝だった。

 決勝の相手は、ワールドワイド学園。

「いよいよ決勝ですが、手元の資料によると、ワールドワイド学園のスタメン九人のうち、三人が童貞ではないそうですよ」アナウンサーが声高に言った。

 その一人、エースのマイケルは先頭打者の円城寺に十二球粘られるも、センターへの大飛球に留める。

「おや、手元の資料によると、セックス学園はスタメン全員が童貞ではないそうですよ」

 試合は膠着するかに思われた。体格からしたら、ワールドワイド学園が勝つ。誰もがそう思ったとき。

「大きい、大きい、入るか、入るか、入ったホームラン」

 セックス学園が均衡を破り、そこからマイケルは崩れていった。試合は結果的に十四対〇でセックス学園の勝利。打率、打点、ホームラン、防御率で過去最高成績を叩き出した。奪三振ショーのおまけつきだった。

「それでは、試合に勝利しました、セックス学園の校歌が流れます」

 前奏が高らかに鳴り響き、校歌が始まった。

「まずは口づけを交わし―……」

 校歌を歌うセックス学園のスタンドだった。


                                          完

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