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イイコト

 俺はベッドで横になっていた。茜が俺を覗き込んでいる。これは、あれか。イイコトってまさか……。


「ちょっと待っててね」


 そう言うと茜は部屋を出ていく。


 もし、もしも俺の勘違いでなければ、とんでもないことになる。家庭教師になった時、茜は妹のような存在だったが、舞さんの言葉を聞いてからは茜を意識しないのは無理だった。


◇ ◇ ◇


 再び現れた茜は手におしぼりを持っていた。つまり、イイコトって看病のことか。安心した一方で残念に思っている自分がいた。


 茜は必死に看病してくれた。いつもは小悪魔のようにからかってくるのに。茜の違う一面を見れて新鮮だった。これでは健全な男子はイチコロだろう。例に漏れず俺もその一人だった。


 そんなことをぼんやりと考えていると、ノックがした。


「どうぞ」


 扉が開くとそこには美里さんの姿があった。


「あら、茜は何をしているのかしら」


「見ればわかるでしょ? お兄ちゃんの看病!」


「そう。ほどほどにするのよ。そうそう、ゴールデンウィークも今日で最後だわ。あなた、水曜日は暇かしら。話があるのだけれど」それは俺に向けられた言葉だった。水曜日は授業がない。俺は頷いた。


 美里さんはクールな印象で、何事にも動じないはずだったが、この時は違った。かすかに苛立ちを感じとった。


 水曜日いえば、美里さんが上機嫌で外出する日だ。そんな日にわざわざ呼び出しということは……俺はクビにされるに違いない。


◇ ◇ ◇


 水曜日の朝。俺は覚悟を決めて朝食に臨んだ。舞さんと茜を見る。ああ、二人と朝食をとるのもこれが最後か。




 二人が出かけると美里さんがいつになく厳しい表情で見てくる。


「そこにかけなさいな」


 俺が椅子にこしかけると、美里さんは自室に消えた。そして、手にスケッチブックを持って現れた。スケッチブック?


「そのまま動いちゃダメよ」


 そう言うなり美里さんは黙々とスケッチを始めた。


「あの、これは一体?」


「被写体は動かないで。あなた、この間、舞と出かけたそうじゃない。舞から聞いたわけじゃないわ。あなたの行動を見ていれば分かるわ。顔に出やすいから」


 やはり、バレていたらしい。そりゃ、あの晩の俺は挙動不審だったに違いない。


「それにこの間は茜が熱心に看病していたわ。二人と仲がいいようで何よりだわ」


 本気でそう思っているのだろうか。やはり、今も美里さんからは苛立ちを感じる。


「さて、本題よ。私は危機感を抱いているわ。あなたが来てから、我が家は狂い出した。私が言いたいことは分かるわね?」


 やはりそうきたか。


「私はあなたに言わなければならないわ」


 一瞬の沈黙。次の瞬間、美里さんが口を開く。口からこぼれ出た言葉は意外なものだった。


「あなたは……」

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