鈍感白魔道士の問題発言
「俺とダイチは辺りを見てくる、みんなは休憩してて?」
「「「わかりました!!」」」
ハルがそう言ってダイチと一緒に夜の森へと向かっていった。
今回の依頼は夜にしか現れない夜行性の魔物の討伐である。
最初はみんなで手分けして探していたがまったく見つからず一息をつくことになった。
だけど、休んでいる間に魔物に襲われてしまえば全滅なのであたりを警戒するためにリーダー自ら見回りにでかけていったのだ。
「はぁ、やっぱりハルかっこいいよね…」
「あんた、またそんなこと言って…でもわかる。」
すると突然女性ギルドメンバー達がハルが去っていった方向をみてうっとりとした声でいった。
「荒くれ者ばっかりのギルド界隈に現れた王子様だもんね。」
「美しい見た目もそうだけど、誰にでも優しくて丁寧だし…」
「それなのに強くて頼りになるし」
「完璧なギルドリーダーだよね!」
キャキャと嬉しそうに話しをし、
「リーダーがモテすぎて俺らの立場ないよな…」
「でも完璧すぎて嫉妬なんかできねぇしな…」
「それに男の俺らにも優しいんだよな」
「男でも惚れそうになるよな…」
「ちょっとわかるわ…」
男性ギルドメンバーはしみじみとそう言い合いはじめた。
そんな話をぼんやりと聞いていると
「サクちゃん!」
ムギュ!
…はなして
「いや♪」
またナツが抱きついてきた。
「そういえば…サクラってハルと幼馴染なんだよね?」
ナツが抱きついてきたため私の方にみんなの注意が向き1人のギルドメンバーがそう聞いてきた。
「…そう」
「ハルってさ、子供頃ってどんな感じだったの?」
「…子供の頃」
「今、みたいに誰にでも優しくて強かったの?」
「…ハルは…」
子供の頃の思い出しながらゆっくり話す
子供の頃のハルは華奢でよく近所の男の子たちにいじめられていた。
それをトウマが助けていてた。
ハルは助けてくれるトウマと仲良くなっていった。
「…ハルは華奢だった。」
「へぇー!意外!」
「でもあの綺麗な顔立ちで華奢だったなら相当美少年だよね?」
「ハルの子供時代、超みたい!」
その頃からトウマが好きだった私はトウマについていくことが多く、トウマとよくいるハルとも自然と話すようになった。
最初はトウマを取られたように感じて嫉妬していたがハルがとても穏やか性格だったのですぐに仲良くなっていったのだ。
「…穏やかな性格だった。」
「じゃあ、優しいのは昔からなんだ〜」
「子供頃から丁寧な話し方だったんだね。」
「いいね!いいねー!」
「てか、サクラが羨ましい!」
「本当そう!」
「あんな王子様1番近くにいたら…惚れるよ」
「たしかに!てかそこのところどうなの?どうなの?」
「サクラはハルのことどう思ってるの?」
「私も聞きたーい!」
急に詰め寄ってくる女性ギルドメンバー
後退りたいが後ろからナツが抱きついているので動けずその場で考える
ハルのことをどう思うか、長い間一緒にいる幼馴染、頼れるギルドリーダー…うーん………あっ…1番適した言葉が思い浮かんだ
「….ハルは」
「ハルは?」
息を呑んで次の言葉を待つギルドメンバーたち
そんなみんなに向かってゆっくりと話す
「…お母さん」
「えっ?」
「…朝起こしてくれる…」
「うん?」
「…好き嫌いすると怒る」
「うん…」
「…ぐうたらしてると外に連れ出される」
「…うっうん」
「…身だしなみが悪いと指摘される」
「…」
「…整理整頓できないと勝手に片付けられる」
「…母だ」
「…夜遅くまで外出してるとどこいってたのかとうるさい」
「…お母さんだ」
「…いらないものを捨てようとすると勿体無いっていう」
「うちの母もよくいってた…」
私の話に最初戸惑って聞いていたギルドメンバーだが途中で共感するようにうなづきはじめた。
「今、戻った!」
「みんな大丈夫だった?問題はなかった?」
少し経つとダイチとハルがみんなの元に戻ってきた。
「お母さんだ…」
「母さん…」
「?みんな?」
だがその頃にはサクラの発言によりいつものリーダーらしいそんな発言さえもギルドメンバー達にはお母さんの言葉に聞こえてしまうようになっていたのだった。
プイッ…
みんなの様子がおかしいことに気がついたらハルが私の方を見たので慌てて目を逸らす
「…サクラ?」
ハルはそんな私を呼びかける
「…何もしてない」
「…怒らないから、正直言ってくれる?」
「…」
何も答えない私を見て少し考え込むハル
「…よし!教えてくれたら今度城下町の高級お菓子屋さんにつれてってあげるよ?」
「…お菓子」
あの手を出すのはちょっと躊躇しちゃうだけど美味しいあのお菓子屋さんにはいれるなら…
「母さんだ…」
そんな2人の様子を見てさらにそう思うメンバー達であった。