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鈍感白魔道士は朝が弱い[魔法使い編]

「トウマ明日の朝のことなんだけど…」


依頼が終わり事務所に戻ったハルがバタバタと荷物の移動や書類の確認に追われているトウマに遠慮がちに声をかけた。


今日はハルとともに討伐に出ていたので私はハルのあとについていった。

1番は何よりトウマに会いにいったのが理由だが…


「ごめん!今立て込んでるんだ」

「…手伝う」

「本当か?ならこの書類を…」

「…うん」

そんなトウマに駆け寄りすぐさますぐに仕事をもらう。

トウマは依頼に出ない日は裏方で書類や道具の確認などをしてギルドをささえている。


時々そんなトウマのお手伝いをしているため私は大体の仕事内容を把握していた。

なので急ぎの書類と期限がまだ先の書類を判別したり、故障している戦闘道具の修理依頼を発注するための手紙などの準備をやりはじめる。


「じゃあ…俺も手伝うよ。」

「いや、お前は下にいけ、さっき役人がお前と話がしたいとやって来てたぞ。」


「役人…それは俺じゃないとダメだね。いってくる」

「あぁ」

「…いってらっしゃい。」

ハルは仕方がなさそうに来賓室へ向かっていった。




「よし!こんなもんだなぁ、そろそろ準備しないと….サクラはハルと一緒に帰りな?」


「…トウマは?」

「あぁ、俺はこの後夜の討伐班のメンバーになってるから朝まで帰って来れないんだ」

「…頑張って」

「あぁ、頑張るよ」

一緒に帰れないのは残念だが仕方がないことなので応援するとトウマは優しく微笑んで軽く私の頭を撫でた。



「サクラ?」

「…コウ」

私は来賓室の近くでハルが出てくるのを待っているとコウがやって来た。


「まだ帰らないのですか?」

「…ハル待ってる。」

「そうでしたか、私も少しハルと話しがしたいので一緒に待っても?」

「…いいよ」

「ありがとうございます。」

2人で柱に背中を預けながらハルを待つ


「….この間のサクラのシャインアローは見事でした。」

「…頑張った」

「まさかあんな大物を一発で仕留めるとは!サクラは魔力多いですから魔法使いでもやっていけるのでは?」

「…白魔道士好き」

「そうなのですね。確かに白魔法は面白いですからね。そうそう、知ってます?白魔法は扱うその人の器用さによって精度が変わるらしいですよ。」

「…へぇ」

コウはよく喋る。

いつもはクールなのに魔法の話しになると目を輝かせて話し出すのだ。

そんなコウの話しは結構面白いので私はうんうんうなづいて話を聞いていた。


ガチャ…

来賓室から1人の男が出てきた。

しっかりとした服装で役人代表のような出立をしている。

ハルはそんな人の後から出てきた。


「…ではよろしくお願いしますね。」

「努力はいたします。」

そんな会話をして男を見送るハル


「お待たせ」

役人が見えなくなるまで見送るとすぐに私たちの元にハルはやって来た。

「…ハル?」

「…大丈夫だよ。少し強引な話し合いだったから疲れただけなんだ。」

疲れた様子のハルを見て声をかけるとハルは苦笑いを浮かべながらそういった。

「役人がギルドに何のようだったんですか?」

「依頼だよ依頼、他にも依頼入ってるのにそこまで重要ではない護衛の依頼さ、断ったんだけどしつこくてね。」

「…大変」

「本当にお疲れ様です。」


「まぁ、リーダーだからね。」

「なにかありましたら私もお手伝いしますからね?」

「ありがとう…それよりコウがこの時間まで残ってるの珍しいね。どうしたの?」

確かに珍しい、いつもならとっくに帰っている時間だ。


「あっ!そうでした!明日のことなのですが…単独の依頼が急遽中止になりまして、朝一の討伐メンバー人手不足でしたよね?私もそこに加わります。」

「あぁ!それはすごく助かるよ!コウがいれば早く終わらせられるよ!ありがとう!」

「いえいえ、暇になっただけですから」

「それでも人手不足だったから困ってたんだよ…明日の朝だって…あっ…そうだ…!」

するとハルは嬉しそういったあと手を打った。

「もう一つお願い聞いてくれない?」

「お願いですか?」

「うん」

そういうとハルは私の方を見た。

「…?」



************



私は朝がとにかく弱い。

自分で朝起きれたことがないので村を出てからハルかトウマが私をおこしに来てくれていた。

今でもそう、だけどこの日はちょっと違った。


「サクラ、サクラ、起きてください。」

「…」

誰かがそう声をかけている。

しかし眠くて眠くて返事はできない。


「…全く起きる気配がしないですね…イタズラしますよ…」

今度は少し冷たい手が頭をなで、そして頬に触れた。

「….ん…」

少し熱った体にその手が気持ち良くてなんとなく擦り寄った。

「っ!逆効果ですか…」

すると手は慌てて引っ込めて今度は体を揺さぶられる

「起きてください。」

「…ん…」

仕方がなくうっすらと目を開けるとそこにいたのはコウだった。

「…コウ?」

「起きましたか?昨日話しましたがハルが忙しくて代わりに私が起こしにきたのですよ。」

「ん…」

そっか、昨日そんな話があったなぁ…

そう理解するとまた目を閉じた。

「ちょ!起きてくださいよ。」

今度は少し強めに体をゆすられる

「ん…いやっ…」

私は首を振った眠くて眠く仕方がないのだ。

「サクラ!」

少し怒ったような声でさらに揺さぶられる

「んー!」

「おわっ!」

だから揺さぶる手を引っ張ってやめさせた。


コウは私のすぐ横に倒れ込む、

瞑っていた目をゆっくりあけると目の前にコウの顔があった。


「さっさっサクラ…」

「…コウも一緒に寝よう?」

「うっ!?」.

私はそういうとコウの胸元に顔を寄せる

少しひんやりとしていてとても気持ちいい…


「可愛い可愛い可愛すぎる…まっ待って下さい朝礼が!」

コウが慌てた声をあげる。

「…いや?」

だから胸元から顔を上げてコウをぼんやりと見つめた。

「喜んで!!」

ぎゅっと体を抱きしめられる。

これで睡眠を確保できる。

嬉しくて頬を緩ませてコウを見ながら目を瞑った。

「っ!!これは…いいということですね!」

コウがなにやら興奮したようにそういったが私は眠たくて返事ができない。


「サクラ….私は……」

コウの声がどんどん近づいてくる気配がした


バン!!

「コウ!!」

「はっ!」

すると突然部屋のドアが大きな音を立てて開いた。

「コウ…お前…」

「…コウでもダメだったか…」

トウマとハルの声が聞こえた。


「こっこれは!その!」

コウが慌てて私から離れていく気配がした。

「言い訳は受けつない!」

「ですが!」

トウマとコウが言い合いをしはじめた。


「はいはい、サクラ起きてね。」

すると体が浮きベットから無理やり剥がされる。

「んー」

「嫌がらないの、顔洗いに行くよ?」

地面に降ろされ、目を開けると布団から引き剥がしたのはハルだったようだ。

「…ハル眠い…」

私の手を引き洗面所に向かおうとするハルにそう言った。

「朝礼始まるからね?」

ハルは苦笑いを浮かべて嫌がる私を引っ張っていった。


「今度は必ず、起こしますから!」

「あん?今度なんて一生来ないからな!」

「そんな!」

「てか、ハルもハルだ!なんでコウを!」

「ごめん、コウ理性的だし、そこまでサクラに執着してなさそうだったから大丈夫かと思って…」


「….おはよ?」

顔を洗い頭がスッキリしちゃんと目が覚めた私は部屋で半泣きになってるコウと怒っているトウマ、困っているハルをみて首を傾げながら挨拶をした。



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