鈍感白魔道士のギルド生活
自分の5倍以上の大きさの獣、その牙は赤黒い血がしたっており、こいつが多くの人を殺してきた凶悪な魔物であることが理解できた。
「俺が切り込んでいく!」
そう言って走り出したのは我らギルドリーダーのハル
金色の髪に青色の瞳、老若男女誰もが振り返るほど美しい顔立ちをしていた。
魔物をみつけた時ギルドのメンバーのほとんどが恐れ慄いたというのにハルは勇敢に腰に据えてある剣を抜き魔物に向かっていく。
「っ!俺もいく!!」
そんなハルに続いて少し遅れて走り出したのは赤色の髪に赤色の瞳、大柄な体を持つダイチ。
ギルドの中でもハルに続いて強い戦士である。
自身の体と同じぐらいの大きさの斧を手に持ちハルに続いた。
「サポートします。」
恐怖する他のメンバーを尻目に冷静にそう言って木製の杖をかかげたのは青色の髪に青色の瞳、銀色のメガネをかけた魔法使いのコウ。
国立魔術学校主席で卒業した経歴を持つトップクラスの魔法使いだ。
「俺らも…」
「そうだ、3強に続け!」
「おぉ!!」
そんな3人の様子に勇気付けら、他のギルドメンバーも剣や杖をかかげて走り出した。
「ちょっ!無闇に突っ込むのは…!あぁ!もう!!」
そんな走り出すギルドメンバー達を呼び止めようとしているのは白魔道士のトウマ。
栗色の髪に少し垂れ目の緑の瞳、どこにでもいそうな地味な顔立ちをしている。
「魔物に能力低下魔法をかける!サクラ手伝って!」
「…わかった。」
トウマは手に持つ銀製の杖を魔物に向けると隣にたたずむサクラに声をかけた。
黒い腰まである髪に丸いパッチリとした水色瞳、小柄で守ってあげたくなるような姿をしている。
サクラも同じように魔物に向かって杖を向けた。
「怪我人はいないか?」
「トウマ…腕が」
「足が…」
「頭から…」
魔物をなんとか討伐し終えるとトウマはすぐにメンバーに声をかけた。
「重症者から見ていくからおとなしくしてろよ!あっ!サクラ、3人のこと見にいってくれるか?」
頭から血を流してるギルドメンバーに駆け寄るとトウマは私にそう言った。
「…わかった」
私はそういうとトウマの逆方向に向かって歩く
他のメンバーから離れ討伐した魔物のすぐ横で3強と呼ばれたハル、ダイチ、コウが何やら話し込んでいる。
「素材持ち帰れそうか?」
「牙ぐらいなら持ち帰れなくはないが…皮も素材として売れるかもしれないけど、損傷が激しいからどうかな…」
「…でも人数はいますし、全員で無理ない範囲で持ち帰ってもらって商人に判断してもらうべきでは?」
「そうだね…ちょっとトウマにも相談したいとこだけど…あっサクラ」
ハルがこちらを振り返り3人向かって歩いている私と目があった。
「…トウマ今忙しい」
「そうだよね。」
「…3人怪我ない?」
「大丈夫ですよ。こんな魔物に手こずる私達ではありませんから」
コウはズレたメガネを押し上げながらそう言った
「……」
そんなコウをじっと見つめる
若干いつもより顔色が悪い、これは…
「……魔力不足」
そう言って懐から薬を取り出す
「大丈夫ですよ。これぐらい…」
「…飲む」
「大丈夫ですよ?」
「…」「…」
「…はぁ、サクラには敵いませんね。」
コウは苦笑いを浮かべると魔力回復薬を受け取った。
今度はダイチの方を向きじっと見る
「さっサクラ…その…」
少し顔を赤らめはじめるダイチ
だがそんな様子を気にすることなく私は背伸びして大地の額に手を向けた
「…兜脱いで」
「あっ、はい…」
ダイチはおとなしく兜を脱ぐとそこが赤く腫れている
「…ヒール」
白い光が赤く腫れた場所を治していく
「…あっありがとう…」
ダイチはオドオドとそういった。
コクリ、
お礼に対して小さくうなづくと今度はハルの方を向いた。
「…ハル」
「はいはい」
ハルはそういうと腕を私の前に出した。
魔物の爪によるひっかき傷だ
「…ヒール」
ダイチと同じように白い光が傷を治す
「…サクラは俺らのことよくみてるね。ありがとう」
ハルはそういって微笑むと私の頭を撫ではじめた
…ペシっ
だがすぐにその手を振り払って軽くハルを睨む
「手厳しいなぁ…」
そんな私はをみてハルは苦笑いを浮かべた。
「…トウマのところに戻る」
「あっ、それなら特に急いでないけど、話があると伝えておいてくれる?」
「…わかった」
うなづくと私は足早に3人の元を去った。
「俺のブサイクな顔も治してくれ〜!」
「できるわけねぇーだろ!」
「…トウマ」
ギルドメンバーに絡まれているトウマに声をかける。
「あっサクラ、3人の様子は?」
「….魔力不足には薬、打撲と切り傷にはヒールした。」
「そっか。あいつらは体調不良を隠すからな、対応してくれてありがとうな」
「…うん」
そういってトウマは嬉しそうに私の頭を撫でた。
私はそんな時間に幸せ感じていた。
私はトウマが好きだ。
子供の頃からずっと…
ギルドメンバー同様荒々しい喋り方ではあるが低音の優しい声も
微笑むと柔らかな表情になって可愛い雰囲気を出すところも
白魔道士ではあるが剣術もやっていて男らしいゴツゴツとした手も
いつもなんだかんだみんなに気を遣う縁の下の力持ちな部分も
いつも私を甘やかしてくれるところも全部好きである。
そんなトウマに頭を撫でられるのは1番のご褒美であるがそんな時間もすぐ終わる。
「…そういえば3人なにか言ってたりした?」
トウマはすぐに頭から手を離してそう聞いてきた。
「…トウマ呼んでた。素材の相談」
「そっか、じゃあちょっと行ってくるよ。」
「…いってらっしゃい」
トウマは3人のいる方へと向かっていった。
私が所属するのは城下町で有名な大型ギルド。
主に魔物の討伐や商人の護衛などを生業にしていて、そこで基本的に白魔道士として仕事をさせてもらっている。
元々は北にある田舎の村で過ごしていたが幼馴染であるハルとトウマに誘われたこともあり村を飛び出して今ではギルドの一員としてそれなりの生活を送っている。
トウマと同じ白魔道士として常に行動もできるし嬉しいのだが最近ある不安を感じていた。
それは……
「サークちゃん!」
ムギュ
突然後ろから柔らかなものがら押し当てられて
甘い香りが私を包む
「…はなして」
「いや♪」
そう言って後ろから顔を覗かせたのは肩までの長さの桃色の髪に緑色の瞳、そして1番の特徴はボンキュッボンの体型である。
妖艶な雰囲気を醸し出すその女性は同じギルド所属の盗賊職のナツである。
ボンとでたお胸様を押しつけながら私に抱きつき頬をすりすりしてくるのが本当に鬱陶しい。
「睨んだ顔も可愛い!」
「…うるさい」
なんとか抜け出そうともがくが常に鍛えてる盗賊職の筋力と白魔道士職の筋力は雲泥の差…抜け出せない。
「目の保養…」
「見てるだけで幸せだわ」
「美人と美少女のいちゃつきあざっす!」
困っているのにギルドメンバーは朗らかな顔で私たちを見つめるだけで助けてはくれない。
こうなると満足するまでナツははなしてくれないので無になって耐えるしかない。
そう諦めかけた時
「痴女が、サクラをはなしやがれ」
べり
「…ちょっ!」
いつのまにか真後ろに現れたダイチが引っ付くナツを剥がしてくれた。
「…ありがとう」
「おっおう…」
お礼を言うと顔を赤くしてそっぽを向き私に触れていた手を慌てて引っ込めた。
「…ほかのみんなは?」
ダイチはさっきまで討伐した魔物のそばでハルたちと話していたはずだ。
「あっあぁ…素材のことはよくわかんねーし、それにトウマ来たから俺はこっちの様子見に…」
「…そっか」
「おっおう…」
「…なにするのよ!ヘタレゴリラ!」
ナツは無理やり剥がされ、いや突き飛ばされていたようで立ち上がるとダイチを睨みつけた。
「うっせい!ブス」
「ブスですって!あんたの目節穴なんじゃないの?」
「あぁ?ブスにブスっていってなにが悪い!」
「はぁ!?」
ナツとダイチはそういってお互い言い争いをし始めた。
「またかよ…」
「本当こいつらは」
「ほっとこほっとこ!」
「……」
この2人はよくケンカをする。
こうなった2人は誰も止められないのでギルドメンバーはみんな慣れたようにその場から離れていく。
元々は私が原因、だけど正直関わりたくないので他のメンバーと同じように離れようかどうか悩んでいると
「またナツとダイチ?その辺にしなよ。」
ハルたちが戻ってきた。
「うわーん!だってダイチがひどいことをいうのよ!慰めてートウマ!!」
「っ!!」
「…っ」
ハルの隣で呆れたようにしていたトウマだったがいきなりナツがトウマの腕に抱きついていった。
「サクちゃんも可愛いけどトウマも可愛いんだよねー!」
「バッバッバカはなれろ!!」
トウマは顔を真っ赤にしてナツの体を引き剥がそうとする。
「いや♪」
大きなお胸様がトウマの腕を飲み込んでいる。
「…」
見てていいものじゃない。
私には絶対顔を赤くなんてならない。
くっつかれて慌てたりなんてしない。
自分のぺったんこなお胸様を見下ろす。
「…お胸様最強か…」
「サクラ?」
「….」
ポツリと呟いたことをハルに聞かれたが気にしない。
そう、これが不安要素。
ナツは最近ギルドに入った人なのだがスキンシップがとても激しい。
抱きつきクセがあり、可愛いものに目がないとのこと。
よく抱きついてきて鬱陶しいとは思うが本人の気質にとやかくいうきはない。
だが…トウマが抱きつかれるのは見るのはとても嫌なのだ。
それだけじゃなくて、抱きつかれたトウマが顔を赤くしているのもとても嫌。
赤くなってるということは…女性としてナツを見てると言うこと。
私には絶対赤くならないのに…
「…ハル大きくなるにはどうしたらいい?」
「………どう言うことかな?」
ハルは一瞬固まったが何事もないようにいつもの笑顔でそう聞いてきた
「…お」「はいはい!2人ともそこまでね!!」
私が言う前にハルは2人の方に慌てて向かい引き離しにかかったのだった。