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聖女として召喚された私は無愛想な第二王子を今日も溺愛しています 〜星屑のロンド〜【完結】  作者: 春風悠里


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49/52

49.二人の少女

 その世界には、誰でも知っている二人の少女の物語がある。七百年の時を隔てながら結ばれた絆の話。二人の少女の友情の話だ。


 一人の少女は異世界からの迷い子。恋を育み愛を実らせ異世界での文化を世界中へ広めた。子供たちはクリスマスの朝、枕元にプレゼントを見る。赤い服を着た少年と少女が、眠っている間に世界中を駆け巡り、子供たちだけに光の祝福と共にプレゼントを配ってくれるからだ。


 ――この世界を愛した少女、アリス・オルザベルによる私たちへの贈り物。そう誰もが思っていた。

 

 それだけではないことが、後に判明する。七百年後に現れた聖女の死後に出された出版物により明かされた。


 アリス・オルザベルは聖女セイカ・ツキシロの異世界での親友だった。彼女が無事に魔王を浄化することを願い、世界中へと死ぬまで光を届けていた。死後も永遠にそれが続き、蓄積する人の負の感情が減るように祈っていた。


 七百年後に召喚された聖女は親友の思いを胸に、魔王浄化へと大きな一歩を踏み出す。人々の痛みに寄り添い、涙し、この世界の住人の祈りを携えて浄化に成功した。


 聖女は親友の意思を継ぐように、クリスマスの夜には必ず祝福の光を世界中へと届けた。彼女の愛する夫のピアノの音色と共に。クリスマスの夜、その曲を聞かずに眠る者はいないだろう。『星屑のロンド』という名のその曲は、不思議な歌詞と共に聖夜の至るところで今も流れている。


 その音色が世界中へと響かなくなった時、彼女の夫が天に召されたのだろうと誰もが思った。それから幾年か過ぎ、クリスマスの祝福の光と共にありがとうと微かに声が聞こえた。理由は翌日に判明する。聖女はその夜、息を引き取っていた。同じ屋敷に住む彼女の娘に「おやすみなさい」と言ったのを最後に旅立ったという。


『聖女の日記』


 最後に、彼女の本から私たちへのメッセージを抜粋してここに記そう。


 ――――――――


 私は一人のなんてことのない普通の女の子だったわ。特別情に厚いわけでもない。世界の平和を祈るようなタイプでもない。どちらかと言えば、生まれなければよかったと後ろ向きなことばかり考える性格。異世界での友達もアリスしかいなかった。


 どうかまた、聖女がこの世界に現れるのなら、その女の子を支えてあげてほしい。重い使命に押し潰されそうになるかもしれない。プレッシャーに耐えられなくて泣いてしまうかもしれない。そんな重荷を抱えなくていい世界にしてほしい。聖女はただの媒介でいい。この世界の人々の祈りを解き放つだけの存在。それだけで魔王の浄化ができる世界にしてほしいわ。千年後には最弱の魔王しかいない。そんな未来にしてくれるわよね?


 私はこの世界に来て幸せでした。

 どうかこの世界の全ての人と、そして次の聖女にも幸せを。


 ――――――――


 聖女セイカ・ツキシロは独特な服を着て特徴的な言い回しも多かったという。存命中も闇系と呼ばれるその装いは大流行し、没後は多くの名言がまとめられている。『聖女の日記』を元に映像化もされ、今もなお根強い人気を誇り、その魅力にはまってしまう熱狂的なファンがあとを絶たない。


 聖女の役目を終えたあとの彼女の名はここには記さない。世界の平和のために中立を保ち、尽力したことだけを記しておこう。


 二人の少女の友情の物語は、この世界がある限り語り継がれるのだろう。

 


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