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 『奴隷棟』と呼ばれただけあってこの建物の中には階段があり、上の階層に行くにつれて奴隷の待遇が良くなっているような気がした。上の階層の奴隷ほど高値で売ることのできる奴隷であるということなのだろうか。


 階段の前にも頑丈そうな扉が設置されており、そこにも警備兵が常駐していた。つまり上の階層の奴隷ほど当然通らなければならない扉の数が多くなることから、逃亡することが困難になっているという構造になっているのだろう。


 ちなみに今は4階であり、収容されている奴隷は若い女性であったり、獣人の子供などが多くを占めていた。そんな中で1人異彩を放つ体格のいい獣人の奴隷がいる。


 これまで見て来た奴隷は基本的には一つの牢屋に複数の人が入れられていたが、その獣人は他の牢屋を構成する鉄筋よりも更に太い鉄筋で作られた牢屋にたった一人で入れられており、更に手と足には鎖が巻かれ行動が阻害されているようだった。


 そこまでされなければならないほどの危険人物ということか。彼が何者であるのかは分からないが、味方に引き入れることが出来ればかなりの戦力になるに違いない。


 そんなことをぼんやりと考えながら眺めていると、彼が顔を上げ、こちらを見返してきた。


 まさか、俺の正体に気が付いたのか?いや、そんなはずはない…と思う。


 まぁ、彼に与えられた状況を鑑みれば、少なくともここの奴隷商に有利になるような情報を告げること、つまり俺の事をチクられるということはないと思う。


 とりあえず彼のことを覚えておこう。この奴隷棟の巡回が終わった後もう一度様子を見に来ることにする。




 結局、この奴隷棟にエルフの子供はいなかった。全部で5階層からなるこの奴隷棟の最上階には、1階層の奴隷とは比べ物にならないほどの環境が与えられており、牢屋…というよりは個室と呼べるほどの部屋が与えられていた。外から中の様子が簡単にうかがい知ることが出来ない程度のプラーバシーが守られており、比較的恵まれた環境であったのだ。


 収容されていた奴隷も、人や亜人が入り混じっていたが共通して美男美女で揃えられていた。エルフの子供がいるならこの階層に違いないと注意深く探したが、残念ながらいなかった。


 更には探すことに夢中になり過ぎたためかいつの間にか巡回兵とはぐれてしまい、索敵能力を使って位置を探してみるとどうやらすでに下の階層に移動してしまった後であった。


 厳重に警備された奴隷棟。抜け出すことが困難なことに違いは無いが、それはあくまで人に限られた話だろう。様々な大きさに形を変えることのできる俺にはここに出入りするのはそう難しいことではない。


 壁は石レンガで組まれており破壊するには少々骨が折れるだろうが、そもそも破壊する必要もない。そんな騒ぎになりそうなことをしなくても、俺なら空気の入れ替え用にある小さな高窓から逃げ出すことが出来る。


 レンガを組んだ時に出来てしまう小さな段差に足をかけ悠々とかけ上り、人では決して抜け出ることのできない鉄格子を嵌められた小さな高窓の隙間から、簡単に外に抜け出した。


 巡回兵たちをこのまま追いかけるのも今からでは面倒と思い、先ほど見かけた獣人のところに向かうことにした。


 エルフの子供の情報は持っていないだろうが、何か面白い話が聞けるかもしれない。俺の勘がそう囁いたのだ。


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