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 都市内での調査を終え宿に帰ると、エリーはすでに帰ってきていた。


 「お帰り。その様子からすると、どうやら上手くいっているようね」


 「それはお互い様じゃないのか?まぁいいか。とりあえず、情報をすり合わせることにするか。そういえば飯時だな…フロントで何か頼むか?」


 「いえ、ここに帰ってくる前にすでに済ませてきたわ。私の分はいいから、貴方の分だけ頼めば…いえ、必要ないんだったわね」


 「必要ないことは無いが、人間の食べ物は口に合わないうえに、魔力のあまり宿っていない食べ物を吸収しても意味がないからな。俺にはこれが一番だ」


 そう言ってエルフの里から持ってきた『精霊樹』の木の実を取り出して食べる。入手方法がかなり限定的であるので、人間の町では決して手に入れることが出来ないそれを一つ一つしっかり味わって食べる。


 たっぷり時間をかけて食べ終わったころ、やれやれといった感じで俺を眺めていた俺にエリーが話しかけてきた。


 「本当に美味しそうに食べるわね。今まで一体何を食べて来ていたのかしら?」


 「主には魔物の死体だな。経験値を獲得することも出来るし、魔力を回復することも出来る、一石二鳥の食材だ。人の町で活動している間は怪しまれないように時々屋台で買い食いしていたけど、魔力の宿っていない物を吸収しても人間の様な味覚を感じなかったから意味がない、偽装するためだけの行為だったな」


 「ずいぶんと苦労してきたようね」


 「その頃はそれが普通だったから、それが苦労とは思わなかったのが唯一の救いかな。だが俺はこの『精霊樹』の実に出会ってしまった。いまさらこれが無い生活には戻れない…かもしれない。まぁ、前金?としてこんなにたくさん持たせてくれたローゼリア様には感謝しているよ」


 「私たちエルフにとってその実はそこまで貴重というわけでもないからね。あまり恩に着る必要はないわ」


 「そうなのか?『精霊樹』には定期的に魔物が襲撃してきたりするらしいし、すごく貴重なものだとばかり思ってた」


 「貴重…というか重要なのは里を覆う結界の方だから。実の方はおまけみたいなものよ。実際私も子供のころはお腹がすけば『精霊樹』に勝手に登って、勝手に実を収穫して食べていたぐらいだし」


 「なんと…まぁ…羨ましい」


 「まぁそんなわけだから、この件に片がついたらローゼリア様に頼めばさらに多くの実を譲ってもらえると思うわ。それじゃぁ、そろそろ本題に入りましょうか。まずは、私が入手した情報を先に話すわ」


 話をまとめると、コルネリア商会、カリオストル商会、マリスト商会にエルフの子供たちがそれぞれ一人ずつ捕まっているというものだった。商会の規模であったり、警備員の数、普段から親しくしている貴族や豪商などの有力者の情報も事細かに調べられており、人の町では活動が制限されているエルフとは思えないほどの情報収集能力だ。


 「よくこれだけの情報を集めることが出来たな。人の町での活動を任されているだけあって、流石にいい腕をしているようだ」


 「ふふん、ま、当然ね。一応聞いておくけど、ゴルドスの持っていた情報と相違点は無いのよね?」


 「ああ。ただし、ゴルドスの持つ情報の中にはマリスト商会の名前は無かったな。一番最後に子供が捕まったのはここの商会の手のものという事なんだろう。ていうか、何でエリーがそんな自慢げなんだよ。すごいのは事前にこの町に侵入して活動していたエルフ達じゃないか」


 「くっ…それを言うなら貴方はどうなのよ?そこまで言うんだから、何かすごい情報でも持ち帰ったんでしょうね?」


 「たった1日でそこまで入手することが出来るわけがないだろ?一応コルネリア商会とカリオストル商会のことを調べて来たけど、子供たちが捕らわれているという情報の裏付けが出来た以外は大したものは無い。ゴルドスがあらかじめ持っていた情報と合わせても、残念ながらエリーの持ってきた情報の質も量も及ばないよ」


 「貴方も人のことは言えないじゃないかしら?」


 「これでも、そこそこ金をばら撒いて集めた情報なんだけどな。割と自信があったんだけど、ムダ金になった…とは言わないけど少しもったいなかったかな」


 「まぁ、情報の裏付けが出来たならそれだけでも十分な成果ね。それでいつ子供たちの救助に向かうの?」


 正直今すぐ救助に行くというのはあまりお勧めできないと思う。子供たちのことを思えば一分一秒でも早く救助した方が良いのは分かっているが、そう判断した理由を口にする。


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