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 「ここに里のエルフ達が倒した魔物の死体をまとめて置いてある。好きな時に吸収するが良い。そして見たらわかると思うが、あれがタイラント・ビートルの死体じゃ」


 「流石に大きいですね。…あれ?思ったよりも腐敗が進んでいませんね、話から聞くとそれなりに時間が経っているはずですが…」


 「その身に魔力を大量に含んでおる魔物は腐りにくいそうじゃぞ。もしかしたら魔力に腐敗の進行を遅らせる何らかの作用があるのかもしれんな。まぁ、お主にとっては都合が良かろう。経験値大量獲得のチャンスじゃ!」


 「チャンスって…まぁ、それもそうですね。ありがたく頂くことにします」


 タイラント・センチピード…見た目は只のバカでかいムカデだ。幅はオーガの背丈を超え、その体長は図る事すら億劫になるほど長い。その大きさだけでも脅威であるのに、触れただけで並の人間ならたやすく殺すことのできる猛毒の牙に、わずかでも吸えば即座に四肢の自由がきかなくなるマヒの吐息。鋼の剣を弾き返す鉄壁の外殻に、数多ある節足は人間の作り出した鋼鉄の鎧をたやすく貫く。攻守ともに高い能力を持ちながら再生能力も高く、冒険者が必死の思いでつけた傷も即座に回復してしまうというおまけつき。


 エルフ達が大した人的被害もなく倒すことが出来たのは、恐らくは遠距離からの魔法攻撃を徹底したからだろう。死体の傷の具合から察することが出来る。しかしその退治方法は生まれつき高い魔力を持つエルフ達だからできたことだ。


 人の住む町であったなら主な遠距離攻撃の手段は弓矢ぐらいしかないため、それらをたやすくはじく外殻を持つタイラント・センチピードとは相性が悪い。マジックキャスターもいるにはいるだろうが、こんな巨体を持つ魔物を倒しきる前に魔力切れになるだろう。そうすれば残るは接近戦しかない。相当な被害が出ることは想像に難くない。


 「そういえばお主、このタイラント・センチピードを『同化』して『擬態』すれば、簡単にアダマンタイト級冒険者の強さを手に入れることが出来るのではないのか?」


 「いえ、そう簡単にはいかないんですよ。確かに『同化』すればタイラント・センチピードに『擬態』することもできますが、この巨体を支えるだけの能力…この場合は筋力と言った方がより正しいでしょうか、が足りないので恐らくはろくに動くことも出来なくなると思います。ハッタリには使えるかもしれませんがね」


 「なるほど、そう上手くはいかんのじゃな」


 「タイラント・センチピードの外殻の一部とか、麒麟の鱗の一部とかでも『同化』すれば『擬態』により体の一部を強固にすることは出来るでしょうが、これほど強力な魔物に、一部とはいえ『擬態』するにはかなりの量の魔力を消費してしまいます。ですので自分にとっての奥の手みたいな使い方になるでしょうね。現状ではアイアン・スライムに『同化』する程度の硬化で十分事足りています」


 「そう簡単に強くなれるのなら、お主もここまで苦労してはおらんか。…ん?誰か来たようじゃな。あれは……ユーリか。どうやらスライムを捕まえてきたようじゃな。仕事が早いな。せっかくじゃ、お主が眷属を作るところを見学させてもらうとしよう。問題ないかの?」


 「ええ、別に構いませんよ。ただ見ていて面白いものでもないと思いますが…」


 「この年まで生きておると大概のことは経験しておる。しかしスライムが眷属を作るところなぞ、今回見るのが初めてじゃ。初めての体験をするだけでもそれなりに楽しむことが出来る。安心して眷属を作るが良い」


 「はぁ、分かりました」




 「お疲れ様です、ローゼリア様。それと、初めましてゼロさん。エリーから話は聞いています。子供たちの救出に協力していただきありがとうございます。ご指示のあったスライムを捕獲してきました」


 「うむ、ユーリか。ご苦労じゃな。そうじゃ、ついでにお主も見ていくか?スライムが眷属を作るところなぞ、今を逃したら一生見ることが出来んかもしれんぞ」


 「いや、見世物の様にしなくても…っと、初めましてユーリさん。それと子供の救出に関しては私にも十分見返りが期待できるのでお気になさらないで下さい。それとスライムの件、ありがとうございます」


 「いえいえ。里の近くにはそれなりの数がいますので大した労力ではありませんので。あのよろしければ私も見せてもらってもいいですか?」


 ただ眷属を作るだけなのに、いつの間にか観客が増えてしまった。まぁ別に隠しておかなければならない技術というわけでもない。エルフにこの技術を知られたからと言って、エルフ達に同じことが出来るわけでもないからな。まぁサクッと作って、サクッと終わらせよう。



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― 新着の感想 ―
[一言] あ、ムカデなんだ。 ビートルというからカブトムシかと思った。
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