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 「儂は正確に言うなら『エルフ』ではなく『ハイエルフ』という種族なんじゃが、聞いたことはあるか?」


 「噂程度でしたら。確かエルフの上位種で、位階を上げたエルフが極稀に進化を果たした存在がそれであると。しかしすでに失われた種であり、存在そのものが地上から消え失せた…と」


 「前半の部分は当たりじゃが、後半の部分は全くの嘘じゃな。儂が目の前におるのがその証拠じゃ。それで、じゃ。世界にはこの里の様に、エルフの隠れ里のような場所がいくつかある。そこに住むエルフ達は基本的には自由じゃが、いくつかの掟が定められておる。そのうちの一つが、ハイエルフに進化した者は十年に一度、エルフの国にある『世界樹』の警護の任につかなければならないという物じゃ」


 「『世界樹』、か。これまたとんでもない名称が出て来ましたね。私の様な元一般人からすると、キャパシティオーバーな内容です。それでローゼリア様ご本人は現在エルフ国いて、身動きが取れないと。では、私の目の前にいるローゼリア様は一体?」


 「『思念体』じゃな。お主に分かりやすく説明すると、お主の眷属のようなものじゃと考えてもらったほうが早いじゃろうて。それを『世界樹』と魔力を通して繋がっておる『精霊樹』を介して本体から飛ばしておるのじゃ。これが出来るから、ハイエルフが警護の任を任されておるのじゃな。そしてその『思念体』じゃが、消費する魔力量によってその大きさを変えるのじゃ」


 「つまり消費する魔力量を減らすために小さい体…幼女の姿をさせているという事ですか」


 「うむ。一応言っておくが、本体の儂はナイスバディなお姉さまじゃ。そこ、重要じゃぞ」


 「は、はぁ」


 「それで、この『思念体』なんじゃが弱点も当然ある。それが『精霊樹』と遠く離れて活動することが出来ないという物じゃ。つまり『精霊樹』に集ってくる魔物を討伐することはできるが、エルフを隷属する目的でやってくる人間どもには無力…とまではいかんが、かなり相性が悪いのじゃ」


 「まぁ、人間達もわざわざ魔法に長けたエルフがたくさん住んでいる里の中までは侵入してはこないでしょうからね。そもそも結界があるので侵入することすら出来ないですし。人間達の目的はあくまでも森の近くで単独行動しているエルフを捕まえることでしょう」


 「そこなんじゃ。今までは儂も結界があるので人間のことは眼中にもなかったが、まさかタイラント・センチピードの襲撃を受けた余波で、結界が緩んでしまうとは思わなんだ。その為に後手に回ってしまったのは不覚。何としてでも子供らを助けねば…」


 「ですがエルフのみでの活動となると、色々と制限もありますからね。かといって他種族の手を借りるというのも、時間がかかるでしょう。そこで現れたのが人間の世界の常識を持ち、人間に擬態することのできる魔物である私というわけですか」


 「そういうことじゃ。期待しておるぞ。儂の名を使えば、この里でも不自由なく行動できるはずじゃ。何か欲しいものはあるかの?」


 「そうですね…新たに眷属を何体か作りたいので、スライムを捕獲してきてはもらえませんか?」


 「了解じゃ。それと子供らの救出作戦にはエリーを同行してもらう」


 「監視役…ですか?」


 「そうお固いものではない。すでに人間の街に侵入して情報収集しているものもおる。そういった者達と連携するには、彼女の助力も必要じゃろう」


 「分かりました……エリーしばらくの間よろしく頼む」

 

 「えぇ、こちらこそ。それと、先程はごめんさない。貴方に助けられたというのに、疑うようなことを言って」


 「気にしてはいないさ。むしろその反応の方が正しいと言えるだろうからな。ローゼリア様、よろしければ契約の魔法をもう一度私に使ってはもらえませんか?」


 「よいのか?人間の国では同じ相手に契約の魔法を何度も使うという事は、相手を信用していないという事になるんじゃなかろうか?」


 「念には念を入れて、ですよ。現状はこちらからお願いしている立場ですからね。少しでもエルフの方々の信用を得られるのでしたら、安いもんです」


 「ま、お主がそういうのであれば問題は無かろうて。エリー、こ奴と儂とで契約の魔法を締結したことも含めて里の者に伝えるといい」


 「分かりました、では私も準備もありますのでお先に失礼します」


 何とかここまでこぎつけることが出来たか。ハイエルフの件も含めて色々と説明してくれたという事は、ある程度こちらを信用してくれたということであろう。あとは里の子供たちを救出して、この信用を確固たるものにする。そうすれば復讐にまた一歩近づくことが出来るのだ。


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