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 「協力してやろう」


 「何?」


 「協力してやろうと言ったんだ。お前も知っただろうが、俺には有用な能力がいくつかある。それを使えば、すでに捕まったエルフの子供たちを解放することが少しは楽になると思うぞ」


 「信用…できなくはないが、うーん。だが、里の者が何というか…」


 「とりあえず、お前の住む里まで案内してくれないか?俺は契約のスクロールによって、お前の許可が無ければエルフに害をなすような行動はとれないんだ。道中も、仮に冒険者に遭遇してみろ、幼い少女を守りながらまともに戦うことが出来ると思うのか?護衛を雇うつもりだと思えば、それほど抵抗はないんじゃないのか?」


 「しかし……人間であるお前が何故それほどエルフに味方をするのかが分からないんだが……」


 「詳しく言うつもりは今のところは無いが、それが俺の利益につながっているからとだけ言っておこう。そうだ、また契約のスクロールを使うか、確かもう一本あったはずだ。契約内容は、お前とその少女を無事に里まで送り届ける、だ。これなら問題は無いな」


 「あ、ああ。問題ない」




 道中、ゴルドスと同様にエルフを捕獲しに来たと思われる商人や冒険者と遭遇したが、同業者と見せかけてからの不意打ちを徹底して取り組んだことにより、かなりの数の奴隷商や冒険者を殺していった。それもあってか、それなりにこのエルフの信用を勝ち取ることが出来た。ちなみにそのご遺体は、後ろから付いてきている眷属達が美味しくいただいている。


 エルフの女剣士と行動を共にしてから3日が経ち、ようやく彼女たちの住むエルフの里の近くまでたどり着くことが出来た。思ったよりも時間がかかったのは、捕まっていた少女の容態を確認しながらの旅路であったからだ。


 「こっちだ、ついてこい。何度も言うようだが、私たちと離れすぎると里の中に入れなくなるぞ。別に私はそれでもかまわないが」


 「流石にここまで来てそんなポカはやらないさ。それにしても、すごい森だな。植物の生気をすごく感じるというか…確かにこんな緑が生い茂る環境に加えて、認識を阻害する結界まで張られては、並の人間にエルフの里までたどり着くことは不可能だろうな」


 「当然だ。実際我らの里で人攫いが起きたなんて、その里に住む私たちが一番信じられなかったぐらいだからな。そのために色々と後手に回ってしまったのは本当に悔やまれる。何としても、残りの子供たちも取り返さなくては…」


 「確か今現在行方不明になっているのは3人だったか。ゴルドスの持つ情報だとエルフの里から連れてこられたのは2人だったからな。新しくもう1人捕まってしまったという事か」


 「先に捕まった2人の情報をお前は持っているんだよな?それを先に教えてはくれないのか?」


 「当然だ。これは俺にとっての切り札だからな。この情報を持っている限り、里のエルフ達も無暗に俺を傷付けようとはしないはずだろ」


 「そこまで警戒せずとも…と、もうじき森を抜けるぞ。そうすればすぐに里だ…って何をしているんだ?」


 「その少女に嵌められていた首輪を自分に付けているんだ。見たら分かるだろ?まぁ、ロックはしないから魔力が吸われるという事は無いが、そんなことは見ただけでは分からないだろ」


 「いや、そこまでは聞いていないんだが。何故首輪を自分に嵌めているのか聞いただけだ」


 「簡単だ。エルフの里に人間が現れたら、皆警戒するだろ?1人1人に俺はエルフの味方をする変わった人間ですって説得してくのか?そんなの時間がいくらあっても足りないぞ。俺はすぐにでも里長とやらに会って、取引をしたいんだ。俺が首輪をした状態で君の後を追って里長のところに行けば、君が俺という捕虜を捕まえて、俺から情報を得るために里長のところに行くもんだと皆考えて素早く移動することが出来るだろ?」


 「そういうものなのか?まぁ、私もあまり時間を無駄にしたくはないからな」


 ほどなくして森を抜け、開けた場所に出る。そこには自然と調和した建築物が並んでおり、自然とともに生きるといわれるエルフという存在を体現したかのような美しい里であった。


 その奥には大きな樹がどっしりと居を構えており、これがうわさに聞く『精霊樹』であるという事は説明されずともすぐに分かった。何はともあれ、無事に里にたどり着いたことに対して安堵感が得られた。本当に大変なのはこれからだろうけど。


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