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 当初の予定した通り、3日かけて19番達のいる拠点にたどり着いた。


 見渡す限りのスライム。これがすべて俺の眷属、または眷属の眷属(孫眷属と呼称している)だという事に高揚感を覚える。ただし元となった人格はすべて俺だ。俺がたくさんいる…まぁ、決して裏切ることのない仲間だ。これほど心強いものは無いだろう。


 そんなことを考えていると、1体のスライムが近づいてきた。19番だ。


 『お疲れ様ですボス。道中、何か不都合はありませんでしたか?』


 『これといってないな、平和なもんだったさ。とても隣国と戦争をしていると思えないほどにな。それにしてもすごい数だな。今回の戦争で位階を上げた奴が、更に孫眷属を増やしたのか。19番の手腕が良かったのかな?』


 『ありがとうございます。ですがここにいるのがすべてではありません。何体かは情報収集や経験値稼ぎに行かせております。すべての眷属をボスのお出迎えに揃えるよりも、そちらの方が喜ばれるのではないかと思案いたしました』


 『そうだな。俺なんかを出迎えるのにそんな大層な出迎えなんて不要だ。いつも通りで構わないんだ。ついでに言うなら19番ももっとフランクに話してくれてもいいんだけど…まぁ、無理強いはしない。そういえば、以前頼んでおいた実験の方はどうなった?』


 『孫眷属は、親となった眷属と同種の進化形態にしか進化しないかのか実験をしてくれ…でしたね。答えは是です。私の眷属達に鉄の剣を吸収させたり、毒草を吸収させたり様々な経験を積ませてみましたが、私と同じサーチ・スライムにしか進化しませんでした』


 『となるとやはり、16番とジル達にサーチ・スライムを同行させたのは間違いではなかったという事か。それで、捕まえた貴族はどこにいるんだ?』


 『こちらです。一応生かしてはいますが、逃げられないように手足の骨を折り、助けを呼ばれないよう声帯は潰しています。2・3日程度なら飲食をせずとも死ぬことは無いとでしょうが、念のため彼の従者が所持していた保存食を砕いて水に溶かし、胃の中に直接流し込んでいました』


 『よくやってくれた。あと、手間かけさせたようで悪かったな』


 血やホコリでかなり汚れてはいるが、見ただけで仕立てのよさが伝わってくる豪華な衣服。それに負けないくらいお金がかかっていそうな貴金属でできた装飾品の数々。運動なんて碌にしたことが無さそうなでっぷりとした体つき。目を閉じ、ぐったりとしているが、それでもどこか人を見下しているような印象を与える冷たい顔つき。俺の想像する悪徳貴族像そのものの姿がそこにあった。


 もちろん、ノブレス・オブリージュを地で行くような素晴らしい貴族がいるという事も知っているが、そんな人物なら味方から見捨てられるようなことはなかっただろう。


 『それにしても…何でこいつはこんな高そうな服を着ているんだ?ここは戦場だろ。前線に出ることの少ない貴族であっても、普通鎧とか着てくるもんじゃないのか?』


 『私もそう思いますが、流石にこの貴族が何を考えているのかは分かりません。どのみち『同化』するのでしたら、その辺りのことも判明するのでは?』


 『それもそうだな。そんじゃ、さっさと止めを刺して『同化』することにするか。誰かこいつの止めを刺して、経験値が欲しい奴は…いないか。大した経験値を獲得できそうにないからな…』


 俺の足音に気が付いてか、その貴族が目を開いた。人間に擬態している俺の姿を見ると、声を発することは出来ないが口の動きで何かを伝えようとしていることは嫌でも伝わってくる。


 「さっさと助けろ」「ぐずぐずするな」「下民風情が私を見下ろすんじゃない」読唇術が使えるわけでもないが、普通に分かってしまう。


 助けを求めてお願いをするというならまだ分かるが、このような状況でもなお、偉そうな態度が出来るのは悪徳貴族のみがなせる業なのだろうか。


 などと考えていると、その貴族の発する言葉が段々俺を罵るものへと変わっていった。いや、正確に言うなら、発そうとしている言葉が、だ。どちらでもいいけど。


 段々不快になってきたし、これ以上生かしておく理由もない。とっとと止めを刺して『同化』する。必要なことではあるが、こんな奴を『同化』するのは少し生理的に嫌だな…と思った。


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