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 少しずつ計画を改善しながら都市を襲撃していき、そのノウハウによって成果を伸ばし、経験値と物資の強奪を繰り返してきた俺達にもついに年貢の納め時が来た。周囲の有力な貴族たちからなる連合軍が、俺達の討伐の為に派遣されることが決まった。


 当然多数の冒険者も雇われており、アダマンタイト級の冒険者こそいないものの多数のミスリル級の冒険者の姿も確認されている。彼らの本気度というものが嫌というほどに伝わってくる。


 何故、アダマンタイト級の冒険者を雇わなかったのか…多分貴族の面子の問題だろう。


 アダマンタイト級は高位の冒険者の中でも更に一目置かれるほどの強者であり、それほどの存在が連合軍と協力すれば、俺達程度の魔物の軍勢など取るに足らない些事である。


 しかし彼らを雇えば「貴族が主導した連合軍によって魔物の群れを討伐」ではなく、「アダマンタイト級冒険者が率いた貴族の連合軍が魔物の群れを討伐」したと言われかねないからだ。主導したのはあくまで貴族である、そういう名声が欲しいのだ。


 実利よりも名声をとる。実に貴族らしいあり方だ。だが、そのおかげで俺たちは余裕を持って逃げることが出来る。感謝しなければならない。


 実際規模が大きいため迅速に行動が出来ているとはいいがたく、各地の街道に配備しておいた眷属から連合軍の様子を手に取るように把握することが出来たからだ。彼らが烏合の衆で助かった。強いカリスマ性のある貴族が入れば、軍の展開も恐ろしく速かっただろう。


 俺達にとって最も恐ろしかったのは、ミスリル級とオリハルコン級の少数精鋭の冒険者のみに討伐を依頼されることだった。


 規模が小さい分素早く行動ができるし、当然動向を知るのが困難になる。そして、個々の能力が高ければ殺して経験値に変えるということが難しくなる。その分見返りも大きいが、多分割に合わないぐらいの被害が出ただろう。


 もしかしたら優秀な将兵が公国との戦争の為に徴兵されてしまったので、このような方法しかとれなかったのかもしれない。


 などと考え事をしていると、オーガ・ジェネラルに進化したジルと、ホブゴブリン・ウォーリアーに進化したホーブがこちらにやってくるのが見えた。


 「ゼロさん、準備が整いました。いつでも撤収することが出来ます」


 「ご苦労さん。やっぱり以前よりも早く終えることが出来るようになったな。訓練により魔物達が慣れてきたのもあるだろうが、ホーブが進化して指揮能力が向上したことも関係あるんだろうな」


 「私自身、あまり実感はありませんが、ゼロさんが言うならそうなのかもしれませんね。確か『ジェネラル』種に進化した個体は自己の戦闘能力が上昇し、『ウォーリアー』種に進化した個体は指揮能力が上昇するんですよね?」


 「そうだ。人型の魔物は進化する先が比較的少ないから、冒険者ギルドでもその辺りの情報は結構出回っているんだ。逆に俺の様なスライムは環境に応じてさまざまな種に進化するから、情報が少なくてな。まぁ、スライムは進化した個体でもあまり強くないから、魔物の情報を集めるにしても、どうしても後回しにされがちだからな。まぁ、そのおかげで俺が少しでも安全になっているのだとしたら、ありがたいことではあるんだが…」


 「ですがその反面自身のことを知るにしても、いちいちご自身で検証しなくてはならないというのは面倒ではありますよね」


 「まぁな。パラサイト・スライムが進化しない種であることも、最近になってようやく分かったぐらいだからな。まぁ、パラサイト・スライムの能力を考えると、進化しなくてもその能力を伸ばしていくだけで不都合はないから問題は無いと思うが」


 「ソノ通リダ。16番ノ戦闘時ニオケル戦況判断ト的確ナ指示、ソレニ肉体能力ヲ引キ上ゲテクレルダケデモ、十分ニ役ニ立ッテクレテイル。今ノ俺達ナラ以前敗北シタ、アダマンタイト級ノ冒険者ニモ、ソウ易々ト後レヲトル事ハ無イダロウ」


 「肉体能力だけなら今のジルと大差はないだろうけど、アダマンタイト級の冒険者ともなると、その莫大な報酬で買い集めた高性能な装備に身を固めているからな。16番を身にまとった状態のジルでも苦戦は免れないだろうな。それで、逃走先はすでに決めているんだよな」


 「ソウダ。俺ガカツテイタ、オーガノ部族ガ多クイル地域ニ行キ、カツテノ族長ヲ倒シ、俺ガ長トナル。ソシテ周囲ノ部族ヲマトメ上ゲ、力ヲ蓄エテ魔物ノ国家ヲ作リ上ゲル事ガ今ノ俺ノ目標ダ」


 「困難な道のりになるだろうが、頑張ってくれ。俺が言えたことではないだろうけど、あまり派手に動くと人間に察知されて今回みたいに討伐軍を派遣されるかもしれないから気をつけろよ。やるとしても、きちんと安全を確保したうえで、だ」


 『その辺りのことは、私にお任せください。ですがもし、私でも対応が難しいと思ったときは、貴方の知恵を貸していただければと思います』


 「了解だ。体はスライムだが、これでも一応銀級冒険者だ。冒険者としての経験と知識が必要になりそうだったらいつでも呼んでくれ」


 ジル達が拠点を離れ、目的地へと移動していく。依然、貴族連合軍は遠い位置におり、彼らにジル達の補足をするのは困難であると思われる。


 念には念をと、これからいくつかの偽装工作を施してから、俺も移動するつもりだ。面倒ではあるが、今回はジル達のおかげで大量に経験値を獲得し、進化することが出来たのだ。このくらいのアフターサービスぐらいあってもいいだろう。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 翻訳アプリで失礼します。 >『ジェネラル』種に進化した個体は自己の戦闘能力が上昇し、『ウォーリアー』種に進化した個体は指揮能力が上昇するんですよね 文字通りの意味からすると、ジェネラ…
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