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 狩りは大成功だった。


 スライムごときに警戒する動物はいないのか、はたまたスライムに体臭がなくこちらの気配を一切感じることができなかったのかはわからないが、待ち伏せて狩りをしていたこの2週間の成果は上々。獲物は大型の動物から小型の動物まで様々だ。


 ただ、ゴブリンなどの魔力を含む生物ほどの美味しさはなかった。つまり経験値的にもあまりおいしくはないといことだ。上の味を知ってしまったからしょうがない部分ではあるが。それでも自力で動物を狩ることが出来たのは嬉しかった。しかしこの狩りは、あくまで本番に向けてのデモンストレーションだ。


 俺の目的はこの方法で生きているゴブリンを狩ることにある。


 ゴブリンは基本的にはどこかの部族に所属していて、その部族のメンバーとともに狩りをしている。そのためゴブリンを見かけても基本的には3~5体で行動している。だが稀に単体で行動している、いわゆる『はぐれ』と呼ばれるやつを見かけることがある。


 これは若いオスによくみられる行動らしく、部族内で血が濃くなるのを防ぐためだとか、群れのボスが自身の地位を脅かしそうな忠誠心の低い奴を強くなる前に追い出したとか、冒険者から色々と聞いたことがあるが正解は定かではない。


 重要なのはこの『はぐれ』と呼ばれるやつをこの辺りでよく見かけるという事だ。恐らく、先日美味しくいただいた新人冒険者もこの『はぐれ』を狙っていたが、運悪く団体行動しているゴブリン達と鉢合わせしてしまい逆に殺されてしまったということなのだと思う。


 狙うならこの『はぐれ』と呼ばれる存在だ。そしてさらに運のよいことに、この『はぐれ』が俺の待ち伏せしている木の下でのんびりと腰を下ろして休息をとっているのだ。


 今まで何度かこの『はぐれ』を見かけたが、すべてこの木から少し離れた場所を移動していて歯がゆい思いもした。周囲に人や魔物の気配もない、まさに今が絶好のチャンスだ。


 じっくり観察をする。奴の呼吸のタイミングを見計らい…息を吐いた瞬間に…ジャンプしてとびかかる!


 奇襲を受けて混乱しているのが手に取るようにわかる。スライムが顔面にへばりついているなんて想像すらしていないだろう。いきなり呼吸ができなくなったことの焦りもあり、必死に俺を引きはがそうとしているが上手くいっていない。当然だ。俺の体表にはスライムの消化液を加工して作った、謎のヌルヌルした液体が覆っているのだ。


 この液体を作ることができるようになったのは、吸収のための消化速度を上げるために消化液に魔力を込めたりするなど色々といじくりまわしているときに、偶然完成したのだ。名前を『無限の滑走インフィニット・スリック』とでもつけようか。…いや、やっぱやめておこう。名前負けしている感じがする。まぁ、その件はさておき性能は折り紙付きだ。


 それにこの液体の真の目的は相手の攻撃をかわすことではない。相手の体内に侵入しやすくする、それが俺の本当の狙いだ。


 ゴブリンの口の隙間や鼻の穴から口内に侵入し、すぐさま気管へのルートを確保する。その後、俺の核を安全な場所…肺の方に移動させてゴブリンが窒息するのをじっと待つ。引きはがすことを難しいと判断したのか、今度は俺を嚙み砕こうとしている。が、あまり力を込めることができていないようだ。


 すでに酸素が足りていないのだろう。完全に勝ち確ルートに入ったな。意外にも早く決着がついたようだ、経験値を獲得したのが分かった。後は消化し、吸収していくだけだ。当然その過程でも経験値が入ってくる。経験値の二重取りか、ウハウハだな。


 やはり位階上昇による、肉体能力の向上は素晴らしいものだ。およそ5時間で吸収が終わってしまった。以前よりもはるかに速い。最初のころの半分以下だもんな。それにゴブリンに捕まれた時の感じだと、力をそれほど強いと感じなかった。もしかしたら、正面から襲っても案外楽に倒せるのかもしれない。


 とはいえ油断は禁物だ。もうしばらくは様子を見ることにする。先ほどの個体が特別に弱かったという可能性も一応はあるのだ。しばらくはさっきと同じ方法で慎重に1体1体確実にゴブリンを倒し、経験値を得ることとするか。


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