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 魔物達を城門の内部に招き入れると、すぐに各々が担当する場所まで移動を開始する。


 今回襲撃する予定地は、大きく分けて3か所。1か所目は城門を守る兵士たちの詰所。2か所目がこの町を治めている代官所、及びその近くにある騎士団の詰所。そして3か所目は冒険者組合とその近くにあり、多くの冒険者達が宿泊している宿屋。


 ディックの記憶を探って分かったことだが、やはりこの町の兵士と騎士達の多くが徴兵されており、1か所目と2か所目の襲撃は比較的容易であると思われるが、やはり一番の難関になりそうなのは3か所目であった。


 冒険者は国家同士の戦争に参加しないためその数を減らしているという事はなく、むしろ王国の兵士が少なくなっているという事もあり、平時以上に魔物達に対して警戒しているといってもいいだろう。


 だが、まぁ、それはあくまでも日中城門の外で活動している時に限られる話だとは思うが。流石に夜間、安全だと思われる城門内部の宿屋の中でも常に警戒していることはないとは思うが、気を抜くことはできない。


 ディックの記憶を頼りにこの時間の都市内部での警戒ルートと人目に付きにくい路地裏などを探り、人目に付かないように移動するようにと各部隊に同行している眷属に念話を送る。


 しばらくすると、城門に近い位置から順々に所定の場所に到着したとの連絡が入る。騒ぎを起こすなら同時に起こした方が良いのではないかという考えから、すぐには行動に移すのは控えてもらっている。しかしジルの様な大きな体格の魔物が姿を隠すというのは困難であるので、早急に行動を起こさなければならなかった。


 ちなみに俺は逃走ルートを確保するという目的から城門の前で待機したままであり、今回は皆のサポートに徹する心づもりでいる。


 後、所定の位置に到着していないのは都市部の中央に位置し、最も遠い場所にある代官所を襲撃する部隊を残すのみ、となったところに俺に来客があった。


 「おい、ディック!別にデール部隊長から呼び出しなんて無かったじゃねぇか!つまらん恥かかせやがって、一体どういうつもりだ!」


 「そうなのか?すまねぇ、実は俺も他の奴からそう聞かされただけで、直接デール部隊長から命令を受けたわけじゃなかったんだ…」


 「んじゃ、一体誰がそんなつまらん嘘をついたっていうんだ?つか、そういやダインの奴の姿が見えないが、どこ行ったんだ、便所か?」


 「あぁ、ダインなら腹が痛くなったとかで、そこの物陰で休んでるよ。起こしてやんな、相棒だろ?」


 「いや、別に相棒とかは関係ないだろ…まぁいいか。おい起きろダイン!」


 と、いう言葉を最後に残したタレスの命を刈り取る。念のために、ダインの体をまだ、眷属に吸収させないでよかった。上手く注意を引くことが出来た。いや、ディックと俺の実力の差を考えれば、助けを呼ばれることなく倒すことも可能だったかもしれないが、わざわざ危険を犯す必要もない。


 何か新しい情報を持っていないか、念のためにタレスの体も『同化』する。……目新しい情報は無し。魔物達が侵入していることも気がついてはいない。まぁ、気が付いていたらのんびりとここまで来ていないか。


 そうこうしていると、最後の部隊から予定地点に到着したとの連絡が入った。すぐに各々の部隊に配属した眷属達に念話を送る。


 『たった今、最後の部隊が配置についたとの連絡が入った。これより作戦を開始する。ここから先、城門を抜けるまでの間一切の油断をするな。ここは敵地だ。今までの戦いとは違い、地の利は人間にある。どこから攻撃が来るか分からない、あらゆる事態を想定し迅速に対応できるだけの心づもりをしておけ!それでは…着火!』


 今回人間の都市を襲撃することに関して、いくつかの脳内シミュレーションをした結果、放火により混乱させたところに追撃を加えるという方法が一番効率がいいという考えに至った。


 これは冒険者や騎士団が、ゴブリンやオークの集落に仕掛ける基本的な戦術の一つでもある。まさか自分たちが、魔物から同じ方法で襲撃されるとは夢にも思わなかったことだろう。


 今まで自分たちが散々やってきたことなのだ、文句を言う筋合いはない。放火していいのは放火される覚悟のある奴だけなのだ。


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