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『おめでとうございます、ゼロ。まさかこんなに早く2度目の進化を果たすとは…これで私たちの目的にまた一歩近づきましたね』
「全クダ。コノ度ノ戦デ経験値ヲ大量ニ稼ゲテイルガ、俺ハ進化マデモウ少シカカリソウダカラナ」
「ありがとう、16番、そしてジル。だが、俺がこんなにも早く成長することが出来ているのはお前たちと眷属のおかげだ。本当に感謝しているよ」
『そう言って頂けると、眷属冥利に尽きます。しかしこのタイミングで招集をかけるとは…まさか自身の種族名を考えるためだけに呼び出したわけではありませんよね?』
「まぁな、ちなみに種族名は既に考えてある。『レプリカ・スライム』だ。それと、皆を招集したのは、今後の活動方針を決めるためだ」
「今後…ト言ウト、ヤハリ公国ノ敗残兵ノ数ガ少ナクナッテ来テイル事カ?」
「もちろんそれもある。流石に王国と公国の兵がぶつかって時間がたっているからな。多くの兵士がすでに都市部まで逃げているか、遠く離れた土地まで移動してしまっている。今までと同じ方法では、経験値を稼ぐことが難しくなってきているからな。それと、19番…他の眷属から入手した情報なんだが、王国軍の進軍のペースが想像よりもかなり早いようなんだ。少しもったいない気もするが、王国軍に目を付けられる前に、ここらへんで撤退した方が良いと思う」
「ゼロガ、ソウ判断シタノナラ俺ハソレニ従ウ。何故ナラ、魔物ノ世界ハ弱肉強食。強者デアル、ゼロノ言ウ事ハ絶対ダ」
「いや、進化したけど、純粋な戦闘力は多分ジルとあんまり変わらないと思うぞ。俺の強さはそういったところではなく、色々なことの出来る対応力の高さにあると思うんだが。まぁ、従ってくれるならそれに越したことはない。ちなみに16番は何かあるか?」
『ありません。ただ、各所に散って情報収集を行っている私の眷属が集まるまで、数日の猶予が欲しいです』
「問題ない。どのみち安全な逃走ルートを探し出すまで、俺も時間が欲しかったところだからな」
「逃走先ハ何処ニスルツモリ何ダ?」
「まずはランジェルド王国だ。流石に王国の人間も、追い払った魔物達が再び自国の領内に舞い戻ってくるするとは思わないだろ。そんで、公国との戦争の為に徴兵されて、警備が手薄になっている領地を順次襲撃していき、頃合いを見て大移動する。ただし帝国は大きく迂回して移動する。軍拡に力入れているだけあって、敵に回したらマジでヤバイって情報が眷属から入ってきているからな」
その後、俺たちは情報収集と鹵獲した物資の整頓など大移動に向けての準備を始めた。王国の兵士に見つかる可能性のある街道を使っての移動はできないため、馬車や荷車は使用できない。そのためありあわせの材料で作った背負子やマジックバックなどが中心の運搬であり、大量に持ち運ぶことはできず、あきらめなければならない物資もいくつかでてしまった。
もう少しマジックバックの数をそろえることが出来ればよかったんだが…流石にかなりの高額であるので難しかったが、もう少し頑張ればよかったと思う。今後があるか分からないが、覚えておくことにしよう。




