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部隊を率いているというリーダー特権により、比較的強い兵士の死体を譲ってもらいながら経験値稼ぎをしていると、ふと懐かしい感じがした。
進化する予兆だ。
すでにこの場での戦闘は終了しており、進化することに対する障害は無い。擬態を解除し、本来のスライムボディーに戻る。そしてすぐそばにいる16番の眷属に念話し、念のため俺の警護をするよう周囲の魔物達に伝えてもらう。
しばらくすると、体が組み変わるような不思議な感覚に襲われる。以前進化したときにも同じような感じがしたが、以前よりもその感覚が強く、そして長く感じた。
しばしの間その不思議な感覚に浸っていると、進化が無事に完了した。以前よりも強靭かつ柔軟な肉体に…変化したかどうかは残念ながら分からなかったが、一つ確実に言えることがあるとすれば、見た目はあまり変わってはいないという事だった。つまり、ぱっと見はただのスライムのままということだ。
『進化…されたのですよね？おめでとうございます。何か変わったことなどありますか？あと、種族名は何というのでしょうか。少なくとも『ホーネスト』だったころの私たちにはその知識はありませんでしたが…』
『分からない。そもそも『ミミック・スライム』自体がかなり珍しい個体だったからな。その進化先など余計に分からないだろう。冒険者ギルドでも一通り調べてみたが、それらしい情報はなかった。変わったところは…これから色々と検証することにするか。他の連中には悪いが、しばらくの間俺に付き合ってもらっても良いかと聞いてくれないか？』
『……構わないそうです。それと都度こちらの許可を得る必要はないといっています。魔物にとって強さがすべて。弱者が強者の命令に従うのは必然であるからだそうです。…人間社会も魔物の社会の様に単純明快だったら楽だったのですが…と、すみません』
『そういや、お前も『俺』だったな、全く同じこと思っていたところだから気にするな。暇つぶしで仕事の邪魔をしてくる上司に、ミスをして足を引っ張るクセにプライドが高くて決して謝罪しない後輩…うっ、頭が…。まぁ、それは置いといて。許可をもらったことだし、色々とやっておくとするか』
たっぷり時間をかけて検証した結果、肉体能力・魔力が共に向上したことに加えて、擬態・吸収するスピードも格段に速くなっていた。更に、今回の進化によって新しい能力を手に入れることも出来た。これまで見てきたどんな文献にも載っていなかった能力だったので、その特異な能力を『同化』と呼ぶことにした。
『同化』は生物の死体にのみ有効に働く力だ。
死体を『同化』すると、その死体が生前持っていた記憶・知識・能力はおろか、姿や形すらも『擬態』とは違い、ほぼ完璧にコピーできるというものだった。ただし、死体の欠損具合によってそのコピーできる上限も変動するということと、『能力』に関しては実際にその能力を俺が使用して、習熟度を上げておかなければ実戦には役に立たないという事も判明した。
多少不便であるとも思ったが、『同化』した死者が持っていた『記憶』を探れば、効率的な『能力』の伸ばし方も分かるので、時間を見つけて少しずつその獲得した『能力』を自分の力にしていこうと思う。
唯一の弱点といえば、『同化』は『吸収』とは違い死体から経験値を得ることはできなかったというぐらいか。しかしそれを無視しても構わないと思えるほどの能力だ。ただ、苦労して倒した強者を経験値に変えるか、『同化』してその能力を奪うか…かなり迷いそうだと思った。
ちなみにこの能力を使って、進化した眷属の自切した体の一部を『同化』したところ、その眷属の持つ能力を使うことが出来るようになった。
ただ性能的には体の一部しか『同化』しなかった為か、その能力を持つ眷属には及びはしなかったが、間違いなく物事への対応力は向上しており、戦闘力の強化にはつながっていると思う。
眷属の体のすべてを『同化』すればより早く強くなれるかもしれないが、俺個人の努力次第で能力が向上するのは分かっているし、まぁ、どのみち能力だけあっても習熟度が低ければ使い物にならない。それに自分の強化のためだけに、進化した貴重な眷属を能力の獲得の為だけに消耗するのはどう考えても割に合わないからな。だからそんなビクビクとした目で俺を見ないでくれ16番。まぁ、目はないんだけど。
