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 開戦からおよそ1カ月。想定よりもはるかに早くライアル公国の戦線が崩壊した。


 補給部隊の襲撃を繰り返していた俺達の働き?もあるだろうが、それにしても早すぎるこの結果。もしかしたらこの国の内情は元からギリギリの状態だったのかもしれない。


 襲撃した際、部隊を率いている騎士団の連中を先に始末するように動いた。そこには当然、指示を出すものを先に始末することによってその部隊が混乱し、その混乱に乗じて残りの民兵も始末するという計画であった。しかし騎士団が攻撃を受けるとすぐに逃げ出す民兵の数が思いのほか多かったのだ。


 普通そのような行動に出れば、敵前逃亡とみなされ戦後に罰を下されるということは想像に難くない。にもかかわらずそのような行動な行動をとったことは、戦後この国は残っていない、もしくは敵前逃亡した民兵を探し出して罰するほどの余裕は無いと判断してのことなのだろう。


 逃げた先は、隣国である帝国だろう。帝国は近年周辺国家を次々と自国に編入していき、この辺りの国家では間違いなく一番の国力を有している。その為帝国内にも多数の外国人が働いており、公国出身の人間でも違和感なく溶け込むことが出来る。


 閑話休題。その後、俺達に討伐部隊を派遣されもしたが、眷属を使っての情報収集に抜かりはなく、その部隊から難なく逃走し、万全の準備を整えて逆に経験値に変えてやった。襲撃地点と襲撃時刻をこちらが選ぶことが出来るなら、たとえマジックキャスターがいても俺達の脅威にはなりえなかった。


 何度も返り討ちにすることで、俺達に兵を向けることが無くなったのは、それほどまでに公国の余裕がなくなったことのあらわれだったのか。


 いや、もしかしたら単に貴族たちが、自分たちの身を守る兵士の数を減らしたくなかっただけなのかもしれない。戦争に負ければすべてを奪われるというのに、ずいぶんと優雅な選択だ。こういったときこそ、身を削ってでも行動しなければならないのに。


 そして備蓄してあった物資が底をつく前に、王国の兵士を追い返そうと無理な攻撃を仕掛け、あっけなく返り討ちにあってしまっていた。王国側よりも少ない兵数に、残り僅かな物資。眷属の目を通して見た公国側の士気は最悪であった。


 そのような状況でありながら、何を根拠に勝てると思って総攻撃を仕掛けたのか。どうやら、慣例として戦を始める前に送る開戦の使者を送ることなく攻撃を仕掛けたようだ。そのような奇襲攻撃も、最初の内は有利に戦いを進めることが出来ていたようだが、やはり地力の差を覆せるほどはなく、すぐに戦況は逆転してしまった。


 貴族たちが先頭に立ち兵士たちを鼓舞していれば、もう少しまともに戦うことができたかもしれないが、後方で偉そうにふんぞり返っているだけであった。こんな奴らに一体誰が命を賭しででも付き従うというのだろうか。まぁ、それが出来ないから、これほどまでの危機的な状況を招いてしまったのだろう。


 敗戦後は当然敗残兵をまとめることのできるほどの有能な貴族はなく、公国側の兵士は散り散りになって逃走を始め今に至るというわけだ。


 現在、王国側の兵士は敗残兵の追撃もそこそこに、公国の領地の接収に重きを置いて行動している。すでに公国側の兵士を脅威とは感じていないという事なのか、はたまた敵側の増援が来る前に少しでも王国の領地を増やしておくことが目的か。


 王国側の真意は分からないが、俺達からすればこの上ないチャンスだ。王国の兵士を気にすることなく公国の敗残兵を狩ることが出来るからだ。


 ここでもやはり眷属達による情報収集力が役に立っている。


 ある者は逃げ惑う兵士達が運転する馬車に乗り込むことで行動を共にし、ある者は街道の主要な箇所で兵士たちの動向を監視し、またある者は進化したことで手に入れた優れた索敵能力を使って…といった具合に、である。


 見た所、馬や馬車に乗っていない兵士たちの多くは人目のつきにくい、それこそ道なき道と言ってもいいような険しい経路を使って逃走している者が多いという印象だ。やはり追われる者の立場とすれば、多少逃走に時間がかかったとしても少しでも人目に付きにくい場所が良いということなのだろう。


 冒険者や地方の農村部に住むような人であれば、人の手の行き届いていない場所がどれほど危険か知っているはずだ。しかし今回徴兵された者の中には都市部出身で、一度もそんな危険な場所に近寄った経験が無く、その危険性を知らない者がそのような行動をとってしまったのだろう。


 そんな彼らを同情することはない。俺達がきっちり経験値に変えて、その遺体も俺が有効活用してやろう。それがせめてもの供養というやつだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 数話前では「ランジェルド王国は隣国であるクリオア公国」とありましたが滅んだのがライアル公国ってどこそれ?なんですが。
2022/11/27 22:48 退会済み
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