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 『自己紹介が遅れました。自分は16番の眷属の一人であるパラサイト・スライムで、こちらのお二方は最初にジルさんから紹介があったと思いますが、オーク・リーダーのオーリさんと、ミノタウロスのミノさんです。先ほどの様に人間の言葉を発することが出来ないため、自分が翻訳させていただきます』


 2人と向かい合ってしばらくすると念話が入ってきた


 「そ、そうか、非常に助かる。ちなみにお前はどちらに寄生しているんだ?後、何でこいつらの言葉が分かる?勉強したら分かるのか?」


 『自分はオーリさんに寄生していますが、ミノさんにも寄生している個体がいますよ。現在16番の眷属は20体いまして、内3体がパラサイト・スライムに進化しています。その3体が幹部であるホブさん、オーリさん、そしてミノさんにそれぞれ寄生しています。残りは各地に散って情報収集している者もいますし、他の比較的強い魔物に張り付いて共闘関係にある者もいます』


「共闘関係…なるほど。進化する前のジルと16番のような形という訳か」


 『それと言語が分かる理由ですが、原因は分かりませんが寄生先の魔物が何を言っているのか、そして寄生先と同じ種族の魔物が何を言っているのかが感覚で分かるからです。そしてそれを眷属を通じて伝えることもできるので、こんな短時間で異種族たちからなる魔物の軍勢を作り上げることが出来たというわけなんです』


 「理解した。とりあえず、状況を整理させてもらうとしよう。ここにいる魔物は明日3つの部隊に分かれて行動を開始する。1つ目はジルとホブが率いる部隊、2つ目は俺とオーリ、そしてミノが率いる部隊、そして最後の3つ目は部隊…というには少々数が少ないが、男手が減って防衛力の低下した村や町などを襲撃する陽動部隊だ。ここまでで何か質問のあるやつはいないか?」


 『……無いようです』


 「結構。明日の朝それぞれの部隊に分かれて、目的地周辺に新しい拠点を構築する。その場所はジル達が率いる部隊には16番の眷属が多く配置われてある街道を、俺達が率いる部隊は俺の眷属を多く配置した街道だ。仮に討伐隊が向けられるようなことがあれば、その討伐隊の規模にかかわらず即時撤退。襲撃地点を変更する」


 『よろしいですか?なぜ、討伐隊の規模にかかわらず即時撤退をするのでしょうか。小規模であった場合は、そのまま迎撃してもいいのではないでしょうか?…という意見がありました』


 「仮に小規模であったとしても、無理は良くない。討伐隊を派遣するという事は、少なくとも相手側にはこちらを討伐できる自信があるという事なんだからな。それにその討伐隊にマジックキャスターがいないとも限らない。魔法は非常に危険な力だ、こちらの手の届かない遠く離れた場所から魔物の群れを殲滅することだってできる。そして何よりも恐ろしいのはマジックキャスターの強さというのがあまり外見に現れないという事にある。俺の眷属にはそういったことを感知することに特化した能力を持つ奴もいるが、今回同行させなかったのは俺のミスだな。まぁ無い物をねだってもしょうがない、あるものでやっていくしかないだろう」


 『そうであるならば、補給部隊にマジックキャスターを同行されていることもあるのではないでしょうか?』


 「その可能性もあるが、これほどの規模の戦争だ。戦争の行方を左右しかねないマジックキャスターという強力な戦力を、只の補給部隊に常時留めておくのは難しいだろう。一時的に討伐部隊に同行させるのとは状況が違うからな。仮にいたとしても、まぁ、物資を盾にすれば逃げることぐらいはできると思う」


 『分かりました…とのことです』


 「付け加えるなら、すでに俺と16番の眷属はすでに拠点となるいくつかの候補地の選定と、襲撃地点の下見に出向いている。明日の昼頃には終わると思うから、遅くとも明後日には行動を開始することが出来そうだ。それと…俺も姿を見られてもいいように『擬態』しておくか」


 久しぶりに『擬態』の能力を使う。長らく人間の姿でいたままだったので、戦闘方法もそれに沿ったものに慣れきってしまっていた。擬態先も当然人間の形に近いものから選ぶ。


 となると体格が違い過ぎて間合いの取り方が分かりにくいオーガや、オークは擬態先には向いていない。今の体格に比較的近く、戦闘方法が似ているにゴブリン・リーダーに擬態するのが無難か。


 ゴブリン・リーダーの姿を強くイメージする。すでに何体も倒してきていたためさほど難しくはなかった。ただ、先程までホブの姿を見ていたためか、彼の容姿そっくり擬態してしまった。


 俺の姿を見た周りの魔物達が驚いていることが手に取るようにわかる。それが擬態する能力に関してなのか、ホブそっくりになったことに対するモノかは分からないが、少なくとも俺がここにいる魔物達から舐められるという事はなくなったと思う。


 そこからさらに顔のパーツを少し変え、ホブと見分けがつくようにしておく。こういったとき自分の姿を見るために鏡が必要になりそうなものではあるが、俺はスライムなのでその気になれば掌で物を見ることもできる。


 …完璧だ。どこからどう見ても別人…いや、別ゴブリン・リーダーだ。


 一仕事終えたし、今日はもう就寝することにしよう。明日から忙しくなりそうだからな、寝られるうちに寝ておくのだ!……前世の社畜魂は生まれ変わっても、なかなか抜けないもんだと思った。


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