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 「いや、追撃部隊に乗じて攻撃を仕掛けるのは賛成だが、近隣の町や村を襲うのはあまりオススメできないな」


 「何か考えがあるのですか?ゼロさん」


 「ああ、実はこの場所に来るまでにいくつか近隣の村を通ってきたんだが、若い男性の姿を全然見なかったんだ。恐らくはこの戦争に兵士として参加させるために徴兵されたんだろう。そんな場所を襲っても、女子供ばかりだから経験値的にはあまりおいしくない。んで、物資も徴収されていたから食糧事情もかなりぎりぎりの状態らしい。そちらを目的にするのもかなり微妙だな」


 「なるほど…」


 「もちろん人間に友人や家族を殺されて、一人でも多くの人間を殺してやりたいというやつがいても俺は止はしない。ただ、そのために多くの部隊を組んで派遣するのは過剰勢力になるだろうから少しもったいな気がするな。そういうやつは少数の別動隊として派遣することにしよう。少人数でも、男がいない村なら楽に攻め落とすことが出来るだろうしな」


 「では、我々は追撃戦が始まるまでここで待機しておいた方が良いのでしょうか?」


 「それも時間がもったいない。狙うならクリオア公国の支援物資と補給部隊だ。俺が各地から得た情報だとこの戦争、十中八九ランジェルド王国が勝つ。どうやら最近クリオア公国内で流行り病が蔓延し、国力が大きく低下しているそうなんだ。ただでさえランジェルド王国の方が人も物資も豊富だ、これを覆せるだけの力はクオリア公国にはない。恐らくジルを追いかけた指揮官もそのことを知っていたから、強気な行動に移れたのかもしれないな。ジルは上手く開戦の為の口実にされたというわけだ。そんなわけで、仮に戦の前にクリオア公国の補給物資を奪っても、奪い返しに来るだけの余力は無いと俺は踏んでいる」


 「そうであるなら、ランジェルド王国の騎士団が公国の補給部隊を狙わないとも限らないのではないでしょうか?そうなってしまえば、クオリア公国の補給部隊を襲撃した際に、ランジェルド王国の襲撃部隊と鉢合わせしてしまう可能性もあります。下手をすれば両国の兵士を相手をすることになり、まずい状況になるのではありませんか?」


 「もちろんその可能性も考えたが…可能性はかなり低いと思っている。と、いうのも実はジルを追撃した部隊の指揮官…こいつが、あえてジルの追撃を途中でやめたというのが俺の考えなんだ」


 「そ、それは…。しかし何のためにそのようなことを?」


 「簡単さ。ジルをクリオア公国内に逃がし、公国内で暴れてもらったほうが楽に戦に勝てるからだ。そう考えると無理な隣国への侵入も、途中でジル達の追撃をやめたことにも納得がいく。被害覚悟でジルを討伐するよりも、そちらの方が都合がいいからな。つまりランジェルド王国側からすると、わざわざ危険を冒して兵士を派遣し補給部隊を襲撃せずとも、ジルが襲撃してくれるだろうと思っているはずだ」


 「我々を誘導していたという事ですか…少し癪、ですね」


 「仕方ないだろ。実際俺達には国の騎士団を相手に勝てるほどの力はないんだ。ここは敢えてその作戦に乗ってやろうじゃないか。ただ、やられっぱなしもいい気がしないからな、この借りはいつか返すことにしよう」


 「分かりました。…すみません、私たちだけで話を進めてきてしまいましたが、何か他に意見のある方はいませんか?……いないようですね。では我々は今後クリオア公国の補給部隊を中心に襲撃していこうと思います」


 その後、部隊編成や、襲撃地点、襲撃時刻などの委細をまとめ会議は無事終了した。


 ジルが広場に出て、この場所に集まった魔物達に作戦の概要を伝えると、特に異論などもなく、作戦の決行は明日にでも始めることが出来そうであった。


 スピーディーに物事が進み、強さこそ正義!という魔物の組織に在り方に長年ギルドで面倒な人間関係に悩まされてきた過去の自分と重ねてしまい、純粋にうらやましいと思ってしまった。




 「えっと、それじゃあ俺達が部隊を組むという事になったわけだが一応自己紹介しておくか。俺はゼロ。まぁ、偽名みたいなもんだが、ここではそう呼んでくれ」


 「フンゴー」


 「ブモー」


 ……前言撤回。やっぱり言葉がちゃんと通じる分、人間相手の方がましだったかもしれん…


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